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北都総建|プロ意識と信頼で挑む、外構工事会社の未来戦略〜前編〜

法人化を機に模索する新たな事業の柱

目次

  1. 今にも活きる、長年の公共工事の経験で培ったプロ意識
  2. 施主と元請け企業からの信頼を守り抜くために。現場も経営もこなす働き方
  3. 2025年に法人化。利幅の大きい仕事を見極め、新たな事業の可能性を探す

建設業界の慣習では、工事を終えてから元請け企業からの入金があるまでに数カ月かかるケースが多い。その間、工事を請け負った企業では材料費や人件費等、必要経費を立て替える必要があり、多くの経営者の頭を悩ませる構造的な課題となっている。こうした資金繰りの悩みを解決へと導くのが、請求書買取型の資金化サービス「ANDPAD早受取(※)」である。

(※)「ANDPAD早受取」の詳細はこちら:https://andpad.jp/news/20250430
また、「ANDPAD早受取」に関する松坂さんへのインタビューの様子は、動画でもご覧いただけます。

「ANDPAD早受取」は、ANDPAD受発注を利用して発行された請求書をもとに、請求金額を早期に受け取れるオンライン完結型のサービスだ。このサービスをテストユーザーとしていち早く活用し始めた、北海道札幌市の株式会社北都総建 代表の松坂也一さんにお話を聞いた。前編では北都総建の事業内容や松坂さんのこれまでの歩み、そして今後の事業展開予定について紹介する。

松坂 也一氏
株式会社北都総建 代表
高校卒業後、塗装業や外構の仕事などを経て、札幌市内のゼネコンに入社。公共事業の現場作業、監督業を経験し、管理職として16年間仕事をしたのち退職。独立を前提に2年ほど外構を専門とする企業で勤務後、2016年に北都総建を設立。2025年7月1日に株式会社化。

今にも活きる、長年の公共工事の経験で培ったプロ意識

北都総建は北海道札幌市で2016年に創業した、外構工事と除雪作業をメインとする企業である。代表の松坂也一さんの言葉からは、仕事に対する確固たるプロ意識を感じる。それは、松坂さんの経歴に理由があるのだろう。

松坂さんは高校を卒業した後、塗装業や外構関連の仕事など現場作業に従事したのち、20代後半で札幌市内のゼネコンに入社。札幌市内の公共工事や国交省管轄の高速道路の敷設などに携わった。重機に乗った現場作業、現場監督業などだけでなく、管理職として部下の管理や入札参加業務を担当していたという。公共事業の業務は緻密な管理や報告が必須である。松坂さんにとっての「当たり前」は、この高い水準で培われてきた。ところが仕事は順調だったものの、松坂さんは会社を辞める決意をする。

松坂さん: 多くの部下を抱える中で、事故など問題が起きた際の責任は管理職である私にありますが、部下の進退については、上司の指示が絶対です。何年もの間、中間管理職である自分の存在意義について悩みました。仕事をしている時間はプライベートより長いですし、最終的には小さな会社でも自分の責任と裁量で仕事ができたほうがいいと考え、退職しました。


とはいえ、ゼネコンを離職してすぐに北都総建を設立したわけではない。建材を商社から仕入れるには取引実績が必要なため、すぐに独立することは難しいと知っていたからだ。

松坂さん: 外構工事の会社に、「2年後に独立したい」とあらかじめ伝えた上で入社し、その間に商社などの取引先を紹介してもらいました。その企業とは今でも良好な関係を続けており、人手が足りない際はお互いに助け合っています。

株式会社北都総建 代表 松坂 也一さん

施主と元請け企業からの信頼を守り抜くために。現場も経営もこなす働き方

北都総建は設立して8年目を迎える。門扉、塀、ガーデンスペース、人工芝、駐車スペース、アプローチなど、外構工事全般が主力事業である。

松坂さん: 最近は、お施主様の要望で意匠を凝らした資材を使いたいというケースが増え、道外の業者さんから材料を取り寄せることもあります。昨今の円安や原材料費の高騰の影響も受け、仕入れる資材も高額なうえ、予備も含めて多めに仕入れると残った材料が在庫になることも。使用頻度の少ない資材も多くなるため、余剰材を保管しておく倉庫のスペースも必要になるのが悩みどころです。

また、北海道という土地柄、12月から4月は外構の仕事を行うのは難しく、札幌市内や近郊の除雪作業を手がけているが、その仕事においても悩みを抱えている状態だ。

松坂さん: 除雪作業は行政が行うものと、民間が行うものがあります。私たちは民間企業からの依頼に対応しており、商業施設や分譲住宅地内の私道の除雪を行っています。ワンシーズンの報酬があらかじめ決まっているのですが、利幅は大きいものではありません。機械のリース代も燃料費も高騰していて、地域においては重要なライフラインを確保する仕事として使命感を持つ一方、冬の仕事は利益確保が難しい状況です。

 

夏場は外構工事、冬場は除雪作業の2事業を軸に展開する同社ですが、現在の体制は、松坂さんに加えて社員1名、その他は一人親方との連携で業務を行っている。そのため松坂さんは一人で経営、現場作業、経理も担う。朝6時から18時までは現場作業をこなし、帰宅後は自宅で深夜2〜3時まで見積書作成や日々の費用計算、日報作成などの事務処理を行うのが一日の基本的な流れである。

松坂さん: 1つの現場の受注金額に対し、その日の資材費や人件費等を全て計算し、利益率を%で算出しています。また、月単位でも表を作り、各現場の受注金額と現状の利益予測、売上の入金日、支払い期日も把握しています。「この日に入金があるから、この支払いは間に合う」というサイクルを常に把握しておきたいのです。

朝6時から深夜2〜3時までのハードワークは、仕事の依頼が途切れない証である。現在は数社の元請け企業から継続的に仕事を受注し、合間で個人や職人仲間から依頼された仕事に対応。住宅やマンションの修繕の業務を中心に、単発でアフターメンテナンスの工事依頼を請けることもある。仕事において、特に住宅の外構工事を行う際は、施主の元請け企業に対するブランドイメージや信頼を絶対に傷つけることがないよう、松坂さんはプロ意識を持って取り組んでいる。

松坂さん: 家づくりは、お施主様がそこに暮らしている限り、最後の最後までコミュニケーションが続いていきます。私はお施主様から見れば、元請け企業の一員だと思われているはず。元請け企業様の名前に傷をつけるようなことだけは絶対にしてはいけないので、誠実に仕事をして評価していただけるように心がけています。


2025年に法人化。利幅の大きい仕事を見極め、新たな事業の可能性を探す

仕事に対するプロフェッショナリズムを持つ松坂さんだが、2025年7月1日にこれまで個人事業主として仕事をしてきた北都総建を株式会社化した。それを機に、新しい事業の柱を模索している。

松坂さん: 事務所の隣の土地に大きな倉庫を建て、さらに敷地内に事務所を設けようと考えています。そして、今は隣の作業場を間借りして仕事をしている個人事業主の方に入社いただく予定です。その方は車の整備や販売をされているため、北都総建の整備部門として受け入れるつもりです。車両整備や運搬業への展開ができれば、新しい事業が生み出せると考えています。

 

新しく社員に迎える予定だというその方も、車両の部品代が高騰している中で工賃は低く抑えざるを得ず、売上は増えても利益が伸びないことに頭を悩ませている。その対策として、今後はリースやレンタカーのサービスを展開することも視野に入れている。

さらに、リフトなどを購入し、その場所を個人事業主が集まる共同の作業場のような形にすれば、家賃収入も見込めると松坂さんは話す。日曜日しか仕事をしない人、深夜まで働く人など、様々な人を入れれば24時間稼働する作業場が作れ、事業回転率も上がると見込んでいる。

松坂さん: 法人化を機に、がむしゃらに仕事を請けることで利益を生み出してきた経営から、利幅の大きい仕事を見極めて行う経営へと舵を切りたいと考えています。そのためには融資を得たり、事業の採算性を厳しく見極めたりすることが必須です。事業を始めるのは簡単でも、潰すのも簡単です。計画的に進めていこうと思っています。

公共工事の現場で培われた緻密な管理能力とプロ意識を持つ松坂さん。現在はその能力を活かし、朝から深夜まで現場作業と経営・経理業務を一人で担うハードワークをこなしている。複数の元請け企業から継続的に仕事を受注し、元請け企業に対する施主からの信頼を損なうことがないよう、誠実な姿勢で仕事に向き合い、確固たる信頼を築き上げてきた。

しかし、松坂さんの真摯な仕事ぶりとは裏腹に、建設業界全体に根付く材工一式取引のキャッシュフローにおける構造的な問題が、経営の重しとなっている。この業界共通の悩みを解決する手段として松坂さんが活用したのが「ANDPAD早受取」。後編では、松坂さんがどのようにこのサービスを活用し、資金繰りの不安を解消、未来の経営に活かしているのか、その詳細を伺う。

株式会社北都総建
URLhttps://www.hokutosouken-sapporo.com/
代表者代表取締役 松坂 也一
設立2025年7月(2016年創業)
所在地北海道札幌市手稲区新発寒4条6-5-3
企画・編集:平賀豊麻
編集:原澤香織・金子結乃
執筆:フェリックス清香
デザイン:森山人美、岩佐謙太朗
お客様担当:櫻山雄大
 
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