害虫駆除用機材及び薬剤、異物混入対策商品を扱う防虫専門コンサルティング商社として業務用防虫資材販売売上で日本No.1シェアを誇る環境機器株式会社。専門性を活かしたさまざまなビジネスモデルを構築することで成長を続け、業界を牽引する存在だ。商社でありながらも業務用防虫資材の研究開発を行い、全国各地で専門防虫業者向けの研修会も精力的に開催。また、シロアリ駆除のノウハウを活かし、住宅メンテナンスに関わる全国ネットワークを組織化し、中古住宅の品質向上にも取り組んでいる。今回は、同社の代表取締役・片山 淳一郎氏へのインタビューを前後編で紹介する。前編では、片山氏が家業に入るまでの経緯、殺虫剤用の噴霧器メーカーから防虫コンサルティング商社への業態転換の背景、同社の成長を支える組織体制づくりについて伺った。後編では、シロアリ駆除のビジネスモデルを活かした長期優良住宅への取り組み「おうちケア定期便」や、ANDPADと連携したLTV最大化をかなえる挑戦について迫る。
シロアリ駆除のビジネスモデルを活かし、工務店とwin-winの関係性に
2009年に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行され、質の高い住宅ストック活用に向けた取り組みが本格化していくなかで、同社は中古住宅の品質を高めるためのアフターメンテナンス面で課題を抱える工務店をサポートするために、2011年「日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合」を設立。定期点検を行い、建築後のメンテナンス記録を取って保管しておくことで品質面を担保する「おうちケア定期便」をスタートさせた。
片山氏: 住宅の点検やメンテナンス履歴がきちんと残っておらず、必要なメンテナンスがされていないことで価値が低くなってしまい、将来的にお施主様が家を売ろうとしても資産になっていないというのは良くないと思いました。優良な住宅を建てて長期修繕計画を立て実行するのは本来工務店の役割ではありますが、なかなかアフターメンテナンスまでやり切れていない工務店さんが多いのが現状です。マンションなら管理組合がありますが、一戸建ては自分がやらなければならないわけです。大手ハウスメーカーさんには「スムストック(※1)」がありますが、中小工務店さんにはそういった仕組みがありませんでした。
※1:大手ハウスメーカー10社グループが「優良ストック住宅推進協議会」を設立し、参加メーカーの住宅で共通の基準を満たすものを認定
環境機器株式会社 代表取締役 片山 淳一郎氏
そうした工務店が抱える課題に対して、シロアリ防除・駆除で培ったビジネスモデルを応用して「おうちケア定期便」をつくり上げた。シロアリは定期点検や防除作業が必要になるため、住宅業界でもコンスタントにリピート営業ができるビジネスモデルが成り立っている。それに伴い顧客データベースで管理する必要があるため、同組合はリピート営業用のクラウド基幹システムを開発し、導入会社へのサポートを行っている。
片山氏: シロアリ防除・駆除のための顧客管理システムには130万棟分のデータが蓄積されており、シロアリ防除・駆除のためのリピート営業に使われていますが、このデータは住宅履歴でもあるわけです。シロアリ業者さんに建物の劣化に関する知識を持ってもらえば、従来の床下のビジネスと一緒に上物の建物も定点観測的に見ることができ、長期修繕計画における点検に置き換えられると考えました。外壁、屋根、防水、床下は経年劣化し、保証期間も決まっています。期日管理をして点検を行うのはシロアリと全く同じスキームなのです。そこで、建物の劣化診断も提供しようと、元々あったビジネスモデルに上乗せしました。シロアリだけではなく家全体を点検するデータベースを活用し、工務店さんのアフター部門としてアウトソースしてもらうイメージです。現在100社ほどのシロアリ防除業者さんにご加盟いただいています。建物の点検もできる有資格者は250名ほどいて、メンテナンス工事もできるように体制を整えているので、修繕が必要な場合には工務店さんに内容を共有し、外壁リフォームなどは工務店さんが対応するかどうか判断を仰ぎ、当組合が工事を請け負うことも可能な仕組みになっています。
家を建てた工務店が定期点検を実施してメンテナンスを行うのがベストではあるものの、多くの中小工務店にとってアフターメンテナンス、特に定期点検は大きな課題となっている。工務店からのアクションがなければ施主が別のリフォーム会社などに依頼してしまう可能性もあるが、必ずしも満足のいく会社を見つけられるとは限らない。その結果、施主が不利益を被ることにもなり得る。だからこそ、同組合が工務店の代わりに施主と接点を取り続けるこのビジネスモデルは、工務店の強力な味方となるものであり、施主を守るものでもあるのだ。
片山氏: 住宅履歴やメンテナンスは重要である、という業界内での共通認識はあるものの、継続的に定期点検やメンテナンス提案を行う「農耕型」のプレーヤーは少ない。リフォーム需要が顕在化した時に初めてアクションを起こす「狩猟型」になってしまいがちです。システムでデータ管理をして定点観測しながら、お施主様と10〜20年接点を持ち続け、必要なメンテナンスを適正価格で提案することで、いかにストック収益を確保するかという工務店さんの課題を解決したいと思いました。弊社にはシロアリのベースがあるので、新たなシステム開発の追加費用がほぼかかりません。防蟻工事・防蟻保証、建物点検が築2年目、5年目、10年目の計3回、さらに10年間の住宅履歴管理が、1棟あたり14万円でできます。床下だけでなく外壁のことも分かるので、データを見れば次に必要なメンテナンス工事も計画しやすく、ストックビジネスにも繋げていただくことができます。
片山氏: 床下や建物の定期点検時に不具合を見つけることもありますし、そんな場合は工務店さんに報告して直してもらうよう促すことも。お施主様が何かの拍子に気づいてしまう可能性もありますから、こちらが気づいた時点できちんと対応してもらうようにしています。われわれが工務店さんとお施主様の間に入ることでコミュニケーションがうまくいくことも多いですね。定期的に点検をしていれば早期発見もできますし、お施主様としても手厚くやってもらっていると感じていただけるはずなので、アフターは相談があった時だけの受け身ではなくて、こちらから積極的に仕掛けていくべきだと思います。
ANDPADと連携し、工務店がお客様にお引き渡しした後のLTVを最大化
シロアリ防除・駆除のスキームを活かし、家を建てた後のアフター部門として、工務店の代わりに10年間の定期点検やメンテナンスを行いながら、ストック収益を確保するビジネスモデルを構築した同組合。今後工務店の更なるLTV最大化を後押しするために、ANDPADアプリマーケット(※2)を通じて「おうちケア定期便」とANDPADとでデータ連携し、施工時からその後の顧客データの一元管理をサポートしていく。この連携によって、長期修繕計画の策定、OB顧客管理、定期点検の代行、新築シロアリ保証、メンテナンス提案が可能になる。
※2:ANDPAD APIの提供を通じ、業務のデジタル化を進め効率化を図りたい建設会社と、DXに貢献するITサービスを提供する企業や開発者をつなげる、建設DXプラットフォーム
片山氏: ANDPADと「おうちケア定期便」を連携すれば、物件データを二重管理せず、シームレスにできるので相当利便性が上がります。工務店さんの事務的な負担も減りますし、建てた後もANDPAD上のデータをそのまま使えるというのは工務店さんにとって利便性が高い。「おうちケア定期便」からしても、どういった工事をしていたのかが分かれば、修繕が必要になったタイミングで工務店さんに連絡できますし、こちらで修繕対応することも可能です。データ連携は工務店さんにとってもお施主様にとっても便利になる仕組みだと思います。今後も、アンドパッドさんと協力しながら資産価値の高い中古住宅を増やし、ストックビジネスに貢献できればと考えています。
今回ご紹介した、ANDPADと「おうちケア定期便」のデータ連携については、ANDPADアプリマーケットのWEBサイト内からお申し込みいただけます。こちらのページより、ぜひ詳細をご覧ください。
URL | https://www.semco.net |
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代表者 | 代表取締役:片山 淳一郎 |
設立 | 1973年11月 |
所在地 | 〒569-1133 大阪府高槻市川西町1-26-5 |