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〜前編〜人生の重要な転機に寄り添い お客様の感動をイノベーションする

目次

  1. 百貨店の営業職から 家業である解体業へ転身
  2. 生き残りを懸けて 解体業から“解体サービス業”へ
  3. 積み重ねてきたことが 世の中のスタンダードに

1939年に宗守德太郎氏が創業し、長きにわたり解体業を主業としてきた株式会社宗重商店。2007年に代表取締役に就任した宗守重泰氏は、「感動イノベーション。」というビジョンを掲げ、解体業をサービス業化させるべく、解体業から派生した住環境のあらゆるシーンに寄り添ったサービスを展開してきた。その積み重ねによって、地元で愛される会社へと成長を遂げ、昨今は「環境」というキーワードによって中心産業になってきつつある。
今回は、解体業の枠組みを越えて感動をイノベーションする同社の取り組みについて迫る。前編では、宗守氏が事業継承した経緯や、事業多角化を推進してきた背景について伺った。

宗守重泰氏
株式会社宗重商店 代表取締役

百貨店の営業職から 家業である解体業へ転身

創業時は大型の資材を扱う古物商として、解体した木造建築物の柱や梁などの建設部材を取り扱っていたという宗重商店。戦後の高度経済成長期に入ると、安価な建設資材の普及に伴い中古資材に対するニーズが減少し、解体専門業として展開するようになった。二代目である父・德郎氏が事業を引き継いでからは、業績好調な時期もあったが、時代とともに次第に厳しい局面を迎え、事業は衰退していったという。

「私は一人っ子だったので、進学や就職のタイミングで家業に入るべきか両親に相談しましたが、父からは「好きなことをしなさい」と言われ続けたので、高校も文系を専攻し、大学は経済学部に進学しました。卒業後は大手百貨店に就職して、家業とは全く違う業界で営業職として働いていました。ところが、1999年に父が体調を崩したことをきっかけに家業を手伝うことに。5名の職人さんしか残っておらず、その時初めて廃業寸前まで追い込まれていることを知りました。職人さんには前年に解雇通告もしていたそうで、私は事業の精算要因として呼び戻されたのかもしれません」(宗守氏、以下同)

解体業未経験ながらも営業として奔走する日々のなかで、業界を知れば知るほど、職人のマナーやモラルが欠落していることに驚き、百貨店では当たり前だったサービス品質が、この業界では全く当たり前ではないということに危機感が募った。サービス業に従事していた宗守氏にとって、そのギャップはとてつもなく大きなものだった。

「当時の解体業者は100%下請けで、エンドユーザーに安心して仕事をご依頼いただける会社になるには程遠い状態でした。この業界に入ってから、今まで父が「好きなことをしなさい」と言ってくれていたのは、私に家業を継がせたくなかったからだと気づきました。同じ思いをさせたくないという親心だったのかもしれませんね」

生き残りを懸けて 解体業から“解体サービス業”へ

それから、まず職人の服装規定やマナーの向上を目指し、安全に作業ができる環境づくりを徹底。入社後4年間は営業だけでなく経理業務などの事務仕事全般を宗守氏が一人で担当し、がむしゃらに業界と向き合い続けた。

「この状態を打開するために、解体業を“サービス業化”させるという一筋の光がありました。百貨店時代に培ったスキルも活かせますし、他社と差別化を図るのはそれしかないと。正直、当時の解体現場で働く職人の服装やマナーはお世辞にも褒められたものではなく、仕事中に職人同士の喧嘩も日常茶飯事。100%下請けの状態から脱してエンドユーザーから信頼される会社になるために、一から当たり前レベルを見直して、“サービス業化”させる必要がありました。また、業界内で私が未経験者であることに対しての誹謗中傷もあったので、その悔しさをバネに早めに退路を断って、もがくだけもがいてみようと思いました」

さらに、2000年に、廃棄物の再資源化と再利用を義務付ける建設リサイクル法が制定され、取り巻く環境が変化。それが追い風となった。

「私自身はこういった関連法規などを学ぶことが苦ではないタイプなので、積極的に学び、変化する法規に対して事業を最適化していました。一方、業界全体としては戸惑いがあり、ルールを理解するのに時間がかかっていた。そこで、率先して取引先への説明会を開いてルールを説明して回ったことで、コンサル的な営業活動ができるように。それによって、取引先の信頼を獲得することができました」



積み重ねてきたことが 世の中のスタンダードに

解体工事という事業特性から、環境に対する取り組みにも一つひとつしっかりと向き合ってきた同社は、ISO9001、14001、OHSAS18001認証取得や、過去にはチャレンジ25にも積極的に取り組むなど、地元の環境保護活動にも力を入れている。

「環境についての取り組みはずっと継続してきたことなので、最近言われるようになってきたSDGsについても、新たに取り組むべき項目はいくつかありますが、実はすでにやっていることがほとんど。今まではポジショニングの低い業界だったかもしれませんが、いつの間にか「環境」というキーワードによって中心産業になってきつつあって、世の中がわれわれの業界に光を当ててくれているような感覚がありますね」

100%下請けで、エンドユーザーに安心して仕事を依頼していただくには程遠い状態からスタートした宗守氏の挑戦。サービス業での経験を活かしてがむしゃらに業界と向き合い続けていくなかで、時代が追い風となり、今まで実直に積み重ねてきたことが認められるようになった。宗守氏が信じた一筋の光は、大きな希望の光へと昇華し、地域に受け入れられる存在へと成長を遂げたのだ。

>>〜後編〜人生の重要な転機に寄り添い お客様の感動をイノベーションする

株式会社宗重商店
URLhttps://munejyu.com
代表者代表取締役 宗守重泰
創業1939年3月1日
所在地〒920-0342 石川県金沢市畝田西1丁目112番地
取材編集:平賀豊麻
ライター:金井さとこ
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