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アイエスイナモト|“現場の最後”を担う責任。産廃運搬の仕事の価値を再定義 〜前編〜

現場主義とDXを掛け合わせ、社会インフラを支える実践型プロフェッショナル集団

目次

  1. 社会の“静脈”として機能する産廃業。アイエスイナモトが担う不可欠な役割
  2. 1日100km超を走る現場のリアル。収集・運搬に求められる技術と専門性
  3. 「廃棄物の先」に価値を届ける。ホスピタリティが生む信頼と継続受注

ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、優れた活用を見せたユーザーを称賛する「ANDPAD AWARD」。今回は、日々ANDPADの報告機能を活用し、現場の可視化と確実な情報共有を実現したユーザーに贈られる「ベスト報告ユーザー賞」で全国第2位を受賞した、株式会社アイエスイナモトの代表取締役・石井晶子さんに話を伺った。

同社は千葉県を拠点に、医療系・建築系を中心とした産業廃棄物の収集・運搬を担う企業である。建築系の業務において、元請企業から招待を受けてANDPADを利用し、報告機能を日々活用。廃棄物処理という「現場の最後の工程」を担う立場から、確実性と透明性を高めている。

産業廃棄物収集・運搬業は、建築や医療といった社会基盤を支える“静脈”の役割を担う。その中でも同社は、単なる回収・運搬にとどまらず、リサイクル提案やコスト最適化など、顧客への付加価値創出を追求してきた。現場を熟知した専務と、経営を担う石井さんの連携により、ホスピタリティを軸とした独自の仕事観が組織に根付いている。

前編では、あまり知られることのない産業廃棄物収集・運搬業の実態に迫るとともに、同社がいかにして「現場の最後」から価値を生み出しているのか、その思想と実践に迫る。

社会の“静脈”として機能する産廃業。アイエスイナモトが担う不可欠な役割

──「ANDPAD AWARD 2026ベスト報告ユーザー賞」2位受賞、おめでとうございます。まずは、株式会社アイエスイナモトの事業内容について教えてください。

石井さん: ありがとうございます。当社は千葉県を拠点に、産業廃棄物の収集・運搬を行っている会社です。主な対応エリアは千葉・茨城・埼玉・東京と、関東近郊を中心に事業を展開しています。

取り扱っている廃棄物は大きく分けて3つあり、医療系廃棄物と産業廃棄物、そして建築系廃棄物です。最も多いのが医療系廃棄物で全体の約6割を占めています。病院やクリニック、介護施設などから排出される感染性廃棄物が中心で、注射針やシリンジ、メスなどの鋭利物、血液や体液が付着したものなど、取り扱いには細心の注意が必要なものばかりです。

残りは産業廃棄物と建築系廃棄物で、工場や物流施設から出る廃プラスチックや木くず、食品残さなどに加え、新築現場で発生する石膏ボードやクロス、木材などの回収も行っています。また機密書類の処理や、腐食性のある廃酸・廃アルカリといった特別管理産業廃棄物にも対応しています。

株式会社アイエスイナモト 代表取締役 石井晶子さん

──非常に幅広い領域をカバーされているのですね。

石井さん: ただ、当社はあくまで「収集・運搬」に特化しており、処分自体は専門の処分場に委ねています。いわば、排出された廃棄物を安全かつ確実に処分場までつなぐ役割です。

この仕事はよく「社会の静脈」と表現されます。建設や医療といった“動脈”の仕事が表に出るのに対して、私たちはその裏側で不要になったものを回収し、適切に処理へとつなぐ役割を担っています。目立つ仕事ではありませんが、これが滞ると現場は止まり、社会全体にも影響が出てしまう。そういう意味で、非常に重要なインフラだと感じています。

──貴社は2013年創業とのことですが、立ち上げの背景を教えていただけますでしょうか。

石井さん: もともとは私がIT系の仕事をしており、個人事業主としてウェブサイト制作やデザインなどを手がけていました。一方で、夫は長年産業廃棄物の業界に携わっており、現場の経験が豊富でした。端からみていても、自分の仕事に誇りを持っている人だと感じていました。

そうこうしているうちに、スマートフォンが普及し、ウェブの仕事のあり方が大きく変わるタイミングでもありました。「ウェブサイト制作の仕事をこのまま一人で続けていくのは難しいかもしれない」と感じたこともあり、それなら、と夫の強みを活かして会社を立ち上げようと考えたのがきっかけです。

──現在は、ご主人とお二人でどのように役割を分担されているのでしょうか。

石井さん: 夫は専務として現場と営業、私は事務や総務、経営を担当するかたちです。今ではトラックも10台ほどになり、従業員とともに安定した運営ができる体制になっています。

──医療系廃棄物のお仕事が全体の約6割を占めるとのことですが、お取引先は病院が多いのでしょうか。

石井さん: 医療機関が中心で、総合病院やクリニック、介護施設、検査機関などが主なお客様です。そのほか、建設会社やハウスメーカー、物流センター、製造工場などともお取引があります。特に医療系は継続性が高く、一度契約すると長くお付き合いが続くケースが多いです。日々の回収業務を通じて信頼関係を築いていくことが重要になります。

──産業廃棄物業界に対する世間のイメージについては、どのように感じていますか。

石井さん: 正直なところ、やはり「きつい・汚い・危険」といった3Kのイメージを持たれがちな業界だと思います。ただ、実際には非常に専門性が高く、社会にとって不可欠な仕事です。私たちは単に廃棄物を運ぶだけではなく、現場の安全を守り、資源の循環にも関わっています。廃棄物が適切に処理されなければ、環境にも大きな影響が出てしまいます。

近年ではリサイクルやCO2削減といった観点からも、廃棄物の扱い方が問われるようになっています。その中で、どのように効率よく、環境負荷を抑えながら処理していくかという提案も求められるようになってきました。

──まさに“現場を支えるパートナー”という存在ですね。

石井さん: そのように思っています。私たちの仕事は、現場の一番最後に関わる工程です。だからこそ、「きちんと回収されているか」「安全に処理されているか」という信頼が非常に重要になります。その信頼を積み重ねていくことが、結果として次の仕事につながっていく。目立たない仕事ではありますが、現場を支えているという実感はとても大きいですね。

 

1日100km超を走る現場のリアル。収集・運搬に求められる技術と専門性

──実際の産業廃棄物の収集・運搬業務について、具体的に教えてください。

石井さん: 基本的には2トントラックで現場に伺い、廃棄物を回収して処分場まで運搬するのが一連の流れです。現場は医療機関や建設現場など多岐にわたり、1日あたり4〜5件ほどを回ります。移動距離は100〜130kmになることもあり、片道1時間以上かかる現場も珍しくありません。

当社は現在、トラックを10台保有しており、感染性廃棄物専用の保冷車や、脱着式のコンテナ専用車など、用途に応じた車両を使い分けています。現場に出るドライバーは8名体制で、それぞれが効率よくルートを回りながら業務をこなしています。

──積み込み作業もドライバーの方が担当されるのでしょうか。

石井さん: はい、すべて1人で行います。現場での積み込みから、処分場での搬出まで一貫して担当します。ただ、単純に積めばいいというものではありません。廃棄物の種類や形状によって積み方を工夫しないと、運搬中に荷崩れを起こしたり、事故につながる可能性もあります。

たとえば片荷になってしまうと走行が危険なので、奥に何を積むか、一番上に何を置くかまでバランスを考えて積む必要があります。効率よく、かつ安全に運ぶためには経験や判断力が問われるため、見た目以上に技術が求められる仕事です。

医療廃棄物をトラックに積み込む様子。廃棄物が感染性廃棄物であることを関係者が一目で識別できるよう「バイオハザードマーク」が印刷されている。

──取り扱う廃棄物について、「医療系」と「建築系」があるとのことですが、詳しく教えてください。

石井さん: 医療系では、感染性産業廃棄物を扱うことが多く、注射針や血液の付着したガーゼなど、危険性の高いものも含まれます。扱いを誤ると事故や感染リスクにつながるため、細心の注意が必要です。

一方で建築系は、新築現場から出る廃棄物が中心です。木材や石膏ボード、クロス、鉄くずなどが主で、特にサイディングボードと呼ばれる外壁材は非常に重く、運搬が大変です。骨組みは工場でプレカットされていることが多いのですが、外壁材などは現場で加工するため、どうしても端材が多く出ます。その分、回収量も増え、作業負担も大きくなります。

──現場の過酷さが伝わってきます。

石井さん: 建築系はとにかく荷物が大きくて重いため、特に夏場は本当に大変ですね。限られた時間と体力の中で、いかに安全に、無駄なく作業を行うか。そこがプロとしての腕の見せどころでもあります。

──医療系に関しては、コロナ禍では特に負荷が大きかったのではないでしょうか。

石井さん: コロナ禍は本当に大変でした。医療廃棄物が一気に増え、通常の3〜4倍の量を運ぶ日が相次ぎました。1日1回だった回収が2回になることもあり、それが2年ほど続いたのです。

世の中の動きが止まる中で、私たちの仕事はむしろ増えていきました。総合病院では廃棄物があふれてしまうため、仮置き場を設けてもらい、そこに一時的にためてからまとめて回収することもありました。

──精神的な負担もおありだったのではないかと思います。

石井さん: 従業員の中には小さなお子さんがいる方もいますし、「コロナの廃棄物」と書かれたものを運搬してから帰宅することに、不安を感じるのは当然だと思います。どんなウイルスかも分からない中での作業でしたし、人を募集してもなかなか集まりませんでした。それでも従業員は「大丈夫だよ」と言ってくれて。私自身も現場に出て、一緒に回収を続けました。医療現場を支える一端を担っている、という自覚を強く持ちましたね。

──そのご経験が現在の事業にも影響しているのでしょうか。

石井さん: コロナ禍をきっかけに、事業の幅を広げる必要性を強く感じました。医療系だけに依存していると、同じような感染症が起きた際にリスクが大きい。そこで、専務がこれまで築いてきた関係性を活かして、建設業界の廃棄物収集にも本格的に参入しました。結果として、現在は医療系を中心としながらも、建築系や産業廃棄物へとバランスよく事業を展開できる体制になっています。

 

「廃棄物の先」に価値を届ける。ホスピタリティが生む信頼と継続受注

──貴社がお客様に選ばれるために、大切にされていることはありますか?

石井さん: 私たちは単に廃棄物を回収・運搬するだけではなく、その先にある「お客様の課題」にどう応えられるかを大切にしています。例えば、最近は廃棄物排出者から「廃棄物を減らせないか」「処理コストを見直したい」といった相談をいただくことが増えています。その際に、「この処分場の方が近いのでコストを抑えられます」といった提案を行うようにしています。

──単なる業務対応ではなく、コンサルティングに近い役割ですね。

石井さん: 廃棄物というと「出たものを処理する」というイメージが強いと思うのですが、実際にはその前後の段階で、私たちがお手伝いできることがたくさんあります。まず現場調査の際には、どのような廃棄物が出ているのかをしっかり確認させていただき、その内容に合わせた分別方法をご提案することがあります。

例えば、混合している産業廃棄物も、ただ言われたものをそのまま処分するのではなく、事前に大まかに分別していただくだけで、これまで費用をかけて処分していたものの中から、処理費用を大幅に抑えられるものが見つかる場合があります。実際にコスト削減につながり、お客様に喜んでいただけることも多くあります。

また、廃棄物は処分場によって専門性があります。最初に契約締結をしっかり整えておくことで、それぞれの廃棄物に適した処分場を選定し、より効率的でコストを抑えた処理ルートを提案することができています。お客様との打ち合わせの中でも、廃棄物にできるだけ余計な費用をかけたくないという気持ちは強く伝わってきます。

だからこそ当社では、単に回収・運搬するだけではなく、分別方法の見直し、処理先の選定、また私たちで対応できない廃棄物については信頼できる協力会社と連携するなど、さまざまな方法でお客様の負担を少しでも軽減できるよう提案しています。

──そういった発想はどこから生まれているのでしょうか。

石井さん: やはり現場をよく知っていることが大きいと思います。特に専務は長年この業界に携わっていて、どの廃棄物がどこで処理できるのか、どうすれば効率よく運べるのかを熟知しています。お客様の現場を見て、「これは今のやり方よりもこうした方がいい」と自然に提案が出てくるんです。単に利益を取るだけではなく、「お客様にとって最適かどうか」を基準に判断しているのが強みだと思います。

──現場起点の提案をされていらっしゃるのですね。

石井さん: 私自身はどちらかというと事務や経営側なので、現場の細かい部分までは分からないこともあります。その分、専務が現場とお客様の間に立って、細やかに対応してくれています。専務はとにかくまめで、定期的にお客様のところへ足を運んで「何か困っていることはありませんか」と声をかけています

──営業スタイルとしても特徴的ですね。

石井さん: いわゆる“売り込み”というよりも、“関係性を築く”ことを大切にしています。実際に、「他の拠点もお願いしたい」「知り合いの会社を紹介したい」と、お客様から新たなご縁をいただくことも多いです。一度契約をいただいたお客様とは、基本的に長くお付き合いが続きます。だからこそ、日々の対応の積み重ねが信頼につながると感じています。

──貴社の企業文化についても教えてください。

石井さん: 一言で言うと、「現場を大切にする会社」だと思います。専務は本当に丁寧な人で、どの現場でも最後に必ず掃き掃除をして帰るようなタイプなんです。廃棄物の仕事が本当に好きな人。そういう姿勢が自然と従業員にも伝わっているのではないかと思います。

お客様にとっては、廃棄物の処理はあくまで業務の一部です。ただ、その一部をどれだけ丁寧に対応できるかで、全体の印象が大きく変わります。だからこそ、私たちは「頼まれたことをやる」だけでなく、「その先まで考える」ことを大切にしています。

──石井さんは、日々、どんなときにお仕事のやりがいを感じられますか? 

石井さん: やはり、お客様から「助かったよ」「他のところもお願いしたい」と言っていただけたときですね。私たちの仕事は目立つものではありませんが、確実に現場を支えています。その価値を認めてもらえたときに、大きなやりがいを感じます。日々の小さな積み重ねが信頼につながり、その信頼がまた次の仕事につながっていく。その循環を実感できるのが、この仕事の魅力だと思います。

株式会社アイエスイナモトの強みは、産業廃棄物収集・運搬という「現場の最後」を担う立場から、単なる作業にとどまらない付加価値を追求している点にあるだろう。医療や建設の現場を支えるインフラとしての責任を果たしながら、リサイクル提案やコスト最適化など、顧客の利益に踏み込む姿勢。その背景には、仕事への愛と誇りを持ち、だからこそ現場を誰よりも熟知した専務、またそれを支える石井さんの経営の両輪があった。

目立たない領域だからこそ、丁寧な仕事と信頼の積み重ねが価値になる——。その実践が、顧客からの評価と事業の広がりにつながっていると感じた。

後編では、アイエスイナモトでの具体的なANDPAD活用の実態に迫る。「やった・やっていない」を防ぐ仕組みや、現場の判断力を高める情報共有のあり方など、産廃業者にとってのDXの本質をひも解いていく。

株式会社アイエスイナモト
URLhttps://www.is-inamoto.com/
代表者代表取締役 石井晶子
創業2013年
本社千葉県柏市鷲野谷890-10 2F
企画: 平賀豊麻
取材: 平賀豊麻、正木皓二郎
編集: 金子結乃、正木皓二郎
執筆: 田中祥子、箱田高樹(カデナクリエイト)
デザイン: 森山人美、岩佐謙太朗
 


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