九州エリアでエクステリア関連商材の卸売り販売から施工までを行う企業として、エリアトップクラスの業績を誇る株式会社共立。人間性を重視した住まいの環境づくりにとどまらず、地域文化を尊重し自然を大切にした街づくり、都市づくりに尽力し、広く「生活環境」の創造に向けた仕事を通して「Landscape(造園)からLifescape(生活環境創造)へ」と挑戦を続けている。
同社は、職方の稼働管理の見える化のために2021年にANDPADボードを導入した。今回は、ANDPADボードの導入及び運用面に関わる4名にインタビューを実施。前編では、同社設立の経緯から現在までの歩みと会社としての強み、ホワイトボードでの職方の稼働管理における課題に対してANDPAD導入を決めた理由について伺った。
堀切 壮作氏
彌永 江美氏
INDEX
「問屋業=裏方業」として黒子に徹し、エクステリア業界を支える存在に
1978年に創業し、エクステリア専門の流通商社としてエクステリア関連商材の卸売り販売から施工までを行う同社。現在は、本社がある福岡県大野城市のほか、北九州市、長崎、熊本、鹿児島の5営業所を構え九州一円をカバーし、業績はエリアトップクラスだ。
阿部さん: 当社には創業時から「みんなで目いっぱいやってみんなで豊かになろう」という理念があります。「目いっぱい」という言葉には、最善、最良、全力でベストを尽くし、お得意先様、仕入先様、取引先様、そして家族も含めた「自分以外はお客様」の精神で関わる方すべての役に立とうという意志が込められています。われわれは1人では何もできません。だからこそ、完璧でないながらも組織という集合体としてみんなで力を合わせてお客様の役に立ち続けることで豊かになれると考えています。そうすれば、それぞれが人生設計を描けるようになり、好循環が生まれるはずなので、それを目指して地道に泥臭く取り組んでいます。この考え方を「共感立志」という造語にして経営理念としました。この理念は自社だけが良ければいいというわけではなく、業界、地域、社会全体でそういう風になっていきたいと考えています。
株式会社共立 専務取締役 阿部 孝志氏
こうした同社の「お客様の役に立ち続けたい」という想いと、創業者である安仲さんの人柄からさまざまな事業領域からの相談に応える形で、一時期は多くの子会社を展開していたという。しかし、バブル崩壊後に事業領域を絞ることになり、エクステリア専門の流通商社という現在の事業形態となった。その後、業界全体として次第に原価の値上がりが積み上がってきたことを受けて、同社は基幹システムを導入した。
阿部さん: 企業文化というものには、良い面もあれば悪い面もありますよね。当社の場合、近年は悪い部分も目立つようになっていました。経営陣も含めて高齢化が進むなかで、早めに次世代に繋いでいく必要があると考えるようになったのが4〜5年前のこと。そのためには今までのことを全て捨てなければ変われないと思いました。しかし、数十年積み上げてきた従来のやり方を捨てるということに対して、会長や社長をはじめ社員からの抵抗は強かった。それでも会社の未来のためには変えていくべきだと提言し続け、3年ほど前に基幹システムを導入しました。
流通商社である以上、商品力だけでは他社との差別化はなかなか難しい。そんな同社の強みは経営理念を基に、最後まで諦めない人をつくることだという。
阿部さん: 業種として「問屋業 = 裏方業」なんですね。だから、われわれの仕事の本分として、黒子に徹するということを大事にしています。得意先様やメーカー様がエンドユーザーを獲得するためのパーツの一部としてわれわれがいて、商材を納品し、職方さんを手配するという裏方業だからこそ、お客様より目立つことがあってはならない。「やりたいことがあるので当社からメーカー様に働きかける」という順序ではなく、「エンドユーザーのためにお得意先様、メーカー様がやりたいことがあり、それを当社がサポートする」という順序で考えています。問屋業として裏方でしっかり支えていくのがわれわれの役割であり、当社は最後に儲かればいいというのが創業者である安仲会長の考え方でもあります。外構という高額商品を扱っている以上、エンドユーザーをがっかりさせて車や旅行など非日常を家の外に求めるようになることは避けたい。九州は風土に合わせたエクステリアを追求しているお客様が多く、業界の価値向上のために日々努力をされています。こうした付加価値を提供していくことでこれだけの業界規模にまでなっているのです。お客様がエンドユーザーの暮らしを豊かにするために取り組んでいることがしっかりと世に知られて、エンドユーザーが家の居心地の良さに憧れてくれれば、さらに業界としての裾野が広がっていくはず。
住宅メーカー様も家だけを販売するのではなく、外構まわりもきちんと整えて販売する傾向になってきているのは、われわれの業種としては非常にありがたい。今後も黒子として裏方業に徹して、業界を支えていきたいです。
(写真左から)阿部氏、福岡営業所 営業部長 堀切 壮作氏、福岡営業所 営業課長 坂元 慎二氏、営業本部 彌永 江美氏
エクステリア専門の流通商社として45年を迎えるにあたり、2021年に北九州市から大野城市に新社屋を移転した同社。新社屋建設には、2つの理由があったのだという。
阿部さん: 周囲の会社は高齢化や景気悪化などさまざまな影響もあり、創業者の引退にあたって廃業したり、売却して経営母体が変わったりするケースも増えてきました。そういったなかで、お取引先様・仕入れ先様に対してわれわれの事業継続意欲を示すために、本社を大野城市に移転しました。また、建物の老朽化もあり、社員が働きやすい環境を整えるために本社を建て替える必要がありました。結果的に、エクステリア専門商社として広域で事業展開する創業企業で、残っているのは当社だけですね。
ホワイトボードでの職方の稼働管理が人の定着と売上拡大のネックに
外構工事は引き渡し直前に行われることから工期のしわ寄せがくることも多く、緊急対応が求められることも多い。そのため、職方の稼働管理は非常に重要になるが、同社はこの職方の稼働管理において課題を抱えていた。
同社では職方の稼働管理をホワイトボードで行っていたが、ベテラン社員が同じ職方の予定を抑え続けてしまうという慣習が、営業所によっては根強くあった。ベテラン社員が長期間職方を確保してしまうことで急な案件で稼働できる職方が見つからず、どうしても必要な場合は若手社員がベテラン社員に頼んで職方の稼働を確保してもらうということが常態化していた。そのことにストレスを感じて退職してしまう若手社員もいたという。
阿部さん: ホワイトボードに予定を入れるタイミングが解禁されると、ベテラン社員が職方さんの稼働を一気に抑えてしまい、若手社員がなかなか予定を入れられないという状態でした。職方さんの稼働管理はもっとフェアで開かれたものにしたかった。ホワイトボードは1ヶ月分しか予定が入れられないため先々の見通しを立てにくい上に、予定を抑えていても実際は職方さんの稼働がないということもあったので、経営観点でもムダとムラを感じていました。職方稼働がきちんと見える化していれば、受注枠も増やせて、職方さんに安定的に仕事も振れて、売上も上げられるはずなのに、ブラックボックス化していることでそれができていないという課題感がありました。
坂元さん: 一人の職方さんと長く仕事をすることで「この現場はお願いした工事内容の割に安かったから、あの現場では多めにお支払いしよう」というように、トータルで金額的な埋め合わせができるというメリットもあります。
また、お客様から「この職方でお願いしたい」というご要望をいただくこともあります。お客様との関係性を構築している職方もいますし、スキルだけではなくお客様との相性なども考慮しなければならない。このようなメリットや避けがたい理由もあって、同じ社員が同じ職方をキープする悪習が常態化してしまっていました。
株式会社共立 福岡営業所 営業課長 坂元 慎二氏
職方の稼働管理の課題を解決するために、ANDPADボードを導入
こうしたホワイトボードによる職方の稼働管理の課題を解決するために、同社は2021年にANDPADボードを導入した。同社は下請けとしてANDPADの施工管理も利用したことはあったが、そのなかでもANDPADボードを選んだ理由とは何だったのか。
阿部さん: ホワイトボードによって職方さんの稼働管理がブラックボックス化していることは明らかだったので、ボード機能のみを探していました。いろいろなツールを比較検討していくなかでアンドパッドに問い合わせしたところ、すぐ営業の方に来ていただき、説明していただきました。九州に事業所もあって、補助金などにも素早く対応していただくなど真摯で丁寧な対応で感動しました。ANDPADボード導入について社内からは従来のやり方を変えることに対してかなり抵抗はありましたが、対応してくださったアンドパッドの担当者さんが不安を払拭してくれたお陰で、導入に踏み切ることができました。
機能開発やアップデートのスピードも早く、運用提案についても「これは基本機能でできますよ」と、こちらの要望をどんどん実現していってくれました。何か問題があれば「こういう代案はいかがですか?」と提案をしてくれたのは心強かったですね。実際に導入してはじめのペダルを漕ぎ始める苦しいときにも、背中を押してくれました。
「お客様の役に立ち続けたい」という想いから、エクステリア専門の流通商社として事業継続を目指す同社にとって、ホワイトボードによる稼働管理のブラックボックス化が、人材の定着と売上最大化を妨げる要因となっていた。この課題を解決するために、同社はANDPADボードを導入した。後編では、ANDPADボード運用浸透までの取り組みや、運用後に生まれた変化について深掘りしていく。