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ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーを称賛するANDPAD AWARDのユーザー部門。今回は、2024年の1年間を通して「おうちノート」で施主とのコミュニケーションを活発に行い、家づくりのプロセスにおいて施主に安心と喜びを届け続けたユーザーを表彰する「ベストおうちノートユーザー賞」で全国3位を受賞した、株式会社atelier SUBACO 設計部 主任 玉岡鳩子さんにお話を伺った。さらに、本インタビューには、同社の代表取締役社長 深澤侑也さんにも同席いただいた。
兵庫県神戸市に本社を構える株式会社atelier SUBACO。「小さな家で心地よく暮らす」をコンセプトに、限られた面積の中でも自然素材を活用し、豊かな空間を生み出す。その設計力・提案力を強みに、創業からわずか7年で年間30棟近いペースで新築受注実績をあげている工務店だ。さらに、高気密・高断熱にもこだわり、UA値(外皮平均熱貫流率)0.60W/㎡K以下、C値1.0を下回る値を基準に施工し、寒い冬でも室温15℃以上を確保できる住まいを提供している。
自由設計を基本とする同社では、施主の要望を細かくヒアリングすることに注力している。2023年12月にはおうちノートを導入し、打ち合わせ議事録の管理や施主とのコミュニケーションを強化。こうしたきめ細やかな対応力を強みに、高い顧客満足を実現しているという。
本稿では、インテリアコーディネーター(IC)として、着工までの前定義を固める玉岡さんの仕事にフォーカスし、おうちノートの活用などを詳しく伺っていく。営業、設計、工務とさまざまな職種が連携して施主コミュニケーションに携わる中で、ICとして着工前後が円滑に運ぶよう施主とやり取りを重ね橋渡しをする玉岡さんの取り組みは、工期順守や粗利毀損要因の排除に取り組む企業にとって大いに参考になるだろう。
「小さな家で心地良く暮らす」をコンセプトに成長を続ける
──ANDPAD AWARD 2025「ベストおうちノートユーザー賞」3位受賞、おめでとうございます! はじめに、貴社の事業内容についてお聞かせください。
深澤さん: 2018年に神戸市で創業した工務店です。「小さな家で心地良く暮らす」をコンセプトに、延べ床面積30坪未満のコンパクトな家づくりを主に手がけています。限られた土地面積の中でも自然素材を活用し、豊かな空間を生み出す設計力・提案力が当社の強みです。高気密・高断熱にもこだわっており、全棟気密測定を2回(断熱材の施工後と竣工後)実施するなどして住宅性能を担保しています。お客様の8割が子育て世代で、残り2割はご高齢世帯から住み替えのご要望もいただいています。

株式会社atelier SUBACO 代表取締役社長 深澤侑也さん
──「小さな家で心地良く暮らす」というコンセプトは、どのような経緯で生まれたのでしょうか?
深澤さん: 私は創業者ですが、最初から「小さな家」をテーマにして創業したわけではないんです。もともとは、前職で事業部を立ち上げるときに生まれたコンセプトでした。
前職の工務店では現場監督からキャリアをスタートし、設計や営業も担当していました。そこで新たに事業部を立ち上げることになり、改めて「どのような家を建てたいか」と企画を固める機会があったんです。私個人としては、自然素材で作られた心地良い空間があり、庭には緑がある、シンプルだけど長く愛されるような家がいいな、と思っていました。

同社の家づくりは、空間の広がりや素材の色、窓の位置や照明計画に趣向を凝らし、そして緑を取り入れることで気持ちよさを感じられる空間づくりに注力している。さらに、家を小さくすることで建築コストを抑え、その分天然素材をふんだんに採用している。出典:同社HPより SUBACOの家づくり https://www.subaco-jp.com/about/
深澤さん: ただ、神戸や西宮のような土地が高額なエリアで庭や軒を設けると、予算が見合わなくなる可能性が高い。最初は「家を小さくしないと庭や軒はつくれないですよね……」と話していたのですが、「小さな家なら実現できるのでは」と考え、そこから「小さな家で心地良く暮らす」というコンセプトが生まれました。
「SUBACO」というネーミングも、すぐに決まりましたね。緑がある三角屋根の小さな木の家……と考えたら、もうそれは「鳥の巣箱」しかないだろうと。
──理想とする住まいを実現する手段として、「小さな家」というコンセプトにたどりついたわけですね。そこから、どのように現在の貴社の立ち上げにつながるのでしょうか?
深澤さん: 「SUBACO」というブランドがある程度形になったころ、「独立したい」という思いが強くなってきたんです。最初はまったく別の仕事で独立するつもりだったのですが、「SUBACO」を引き継ぐ人がおらず、会社から「SUBACOを買い取る形で独立してはどうか」という話を受けて、今の形になりました。
──創業から現在に至るまで、ターニングポイントとなった出来事はありましたか?
深澤さん: 創業後は、前職で出会った2〜3組のお客様とご縁があったのですが、その後コロナ禍に入り、新規のご縁がなくなってしまいました。しかし、幸いにもコロナ禍直前に土地を購入されたお客様が何組かいらっしゃったので、緊急事態宣言中はその方々との打ち合わせをメインで進めていた状況でした。
ところが、緊急事態宣言が明けた途端、お客様の数が急激に増えたんです。当時、外出自粛により自ずと自宅で過ごす時間が長かったことで、住環境を見直される方が増えました。インターネットやSNSで情報収集をされる方も増えたなか、WebやSNSを入り口として、当社のブランドコンセプトに共感されるお客様とご縁をいただく機会が増えたタイミングがターニングポイントと言えるかもしれません。
──貴社では、SNSでの集客に力を入れていらっしゃるのですね。貴社のInstagramにも、素敵な写真が並んでいます。
玉岡さん: はい、おかげさまで集客の入口がほぼSNSなので、力を入れていますね。InstagramやYouTubeをはじめ、TikTokやLINEも活用しています。家づくりの過程では、地鎮祭など記念になる場面もありますので、当社では写真にはかなりこだわっています。撮影には必ず一眼レフカメラを持って行って、たくさん写真を撮るんですよ。そこから20枚〜30枚を厳選してお送りするようにしています。

家づくりの過程での記念写真(同社提供)
玉岡さん: SNSをご覧になって「atelier SUBACOで建てたい!」と見学会にいらっしゃる方や、打ち合わせ中に「これはYouTubeのルームツアーに載っていたお家ですね」などとお話をされる方もいて、当社のファンが増えていることを実感しています。

株式会社atelier SUBACO 設計部 主任 玉岡 鳩子さん
玉岡さん: さらなるブランド力の向上のため、オリジナル商品のネット販売も企画しているところです。現在、住宅事業以外に、小屋をつくる「小屋事業」など、いくつか新しい事業もスタートしています。私は「アクセサリー事業部」に携わっており、タオル掛けやトイレットペーパーホルダーといったオリジナル商品の制作・販売に取り組んでいます。
ネット販売により、今後は遠方の方にもatelier SUBACOを知ってもらうきっかけになればと。今はデザインを考えたり、試作品を作ったりしている段階なので、これを形にするのが今年の目標ですね。
──現在は創業から8年目を迎えていらっしゃいます。社風についてはいかがですか?
深澤さん: 真面目で誠実、そして一緒に働くスタッフや会社全体を気遣える人が多いです。採用でも、当初はフォロワーシップを大事にできるかどうかをポイントにしてきました。一方で、今後はリーダーシップを発揮して引っ張っていくような人材も、もっと必要になるだろうと感じています。
相手の好みを把握した高い提案力で顧客から高く支持される玉岡さん
──玉岡さんのご経歴について聞かせてください。建築関連の仕事を選ばれたきっかけは何だったのでしょうか?
玉岡さん: 学生時代は簿記や経営、会計などを学んでいました。建築関連の会社に就職先を決めたのも、説明会で感じたスタッフの印象がとても素敵だったから。建築を学んだわけでもないですし、建築を仕事にすることを考えていたわけでもなかったんです。ただ、もともと空間デザインが好きで、子どもの頃から自分の部屋にはすごくこだわっていました。そういう意味では、昔から興味があったのだと思います。
前職に入社してから2年ほどは、営業や設計、インテリアコーディネーター(IC)といった業務をすべて担当していました。その後、コーディネーター専任の部署ができ、そこで1年半ほどICとして働いたあと、フリーランスとして活動していました。当時は、他の方からの紹介でいろいろな会社の仕事を請け負っていて、atelier SUBACOもそのうちの一つでした。最初はアルバイトのような形で携わっていたのですが、気づいたら入社していましたね(笑)
深澤さん: 私から「ぜひ入社してほしい」と猛プッシュしたんです! 当時は設計も営業もほぼすべて私一人でやっていて手が回らなかったので、玉岡さんに入ってもらいました。玉岡さんと一緒にお客様と会話をしていると、「自分だったら次にこうお伝えするな」と思ったことを、玉岡さんがほぼ同じように言ってくれるんですね。
最初からすごく安心感があって、これなら大丈夫だろうと、早々に仕事を任せました。今はお客様から「玉岡さんで良かった」というお声をいただくことも多いので、本当に入社してもらって良かったですね。
玉岡さん: ありがとうございます。お施主様との会話から、相手の好みを把握するのは得意かもしれません。商品の写真を何枚かお見せして、反応を見ながら好みを探ることもあります。「この写真に反応するということは、これもお好みかも」と、関連する商品を頭の中で選びながらご提案しています。
後工程まで滞りなく水を流すICの仕事
──貴社の強みである高い設計力・提案力は、どのような体制で実現されているのでしょうか?
深澤さん: 社員14名のうち、半数にあたる7名がICを含む設計担当です。当社では、ご契約後にお施主様と打ち合わせを進めていくのは、営業ではなく設計の役割。お施主様が理想とされる家づくりを実現するため、早い段階から設計担当がお施主様と会話をスタートします。
玉岡さん: 当社ではお施主様へのヒアリングで伺ったご要望をしっかりと図面に反映すべく、着工前にはお施主様用の図面を作成しお渡しすることで、お施主様との認識のズレを防いでいます。そうすることで着工後の変更を抑えられますし、工事もスムーズに進むためです。このスタイルは、私が入社したときから一貫していますね。もちろん、着工後の変更はゼロではありませんし、コンセントの場所を変えるといった細かいものもあります。それでも、最小限の変更にできていると感じています。
図面作成には私を含め、5名が携わっています。私が担当するのは、仕様書とお施主様にお出しするための図面作成で、実施図面の作成は残りの4名のスタッフが担当しています。
──ICとして、設計担当者への橋渡しをされる立場でいらっしゃる玉岡さんがご自身の業務のなかで心がけていることはありますか?
玉岡さん: 実施図面の作成は、作業量が多いためスケジュールにもあまり余裕がありません。私の後に続く設計担当のスタッフが実施図面をスムーズに書けるように、お施主様との打ち合わせで必要事項を決めきることは重要です。打ち合わせで決め残したことがあれば、実施図面の作成にも影響が出てしまいます。後工程となる設計担当のスタッフに気持ちよく仕事をしてもらうためにも、しっかりと準備をして打ち合わせに臨み、打ち合わせ内でお施主様の決定を後押しできるように心がけています。
より効率的に業務を進めるべく、ANDPADを導入
──貴社では、2022年にANDPADをご導入いただいています。ご導入に至った背景についてお聞かせください。
深澤さん: 以前は別の施工管理アプリを使用していたのですが、実際には図面の共有機能くらいしか使っていませんでした。より効率良く業務を進めることを目指し、ANDPADの導入に踏み切りました。ANDPADを活用することで、現場への地図や工程表など、図面以外の情報も共有できるようになりました。各々のスマホからも手軽に情報にアクセスできるので、意思疎通もスムーズです。
深澤さん: さらなる業務の一元化を掲げ、「ANDPAD受発注」と「ANDPAD引合粗利管理」も導入しました。工事内容に追加や変更が入っても、ANDPADなら詳細なデータを迅速かつリアルタイムに共有できます。「ANDPAD引合粗利管理」上で、実行予算を確定させた状態で施工に入れるので、コストや粗利がクリアになった状態で着工へと進められるようになり、経営状況が見える化しました。導入早々に、ANDPADがないと業務ができないと皆が実感したようで、社内への浸透も早かったですね。
玉岡さん: 個人的には、ANDPADチャットをよく使っています。リアクションマークで反応を残せたり、引用返信機能があったり、すごく便利なんです。過去の資料や写真もすぐに確認できますしね。
玉岡さん: よく打ち合わせをする協力会社さんはANDPAD上でお気に入り登録をしています。協力会社さんのプロフィールに、電話番号やメールアドレスが載っているのもありがたいんです。これまでは、すぐに確認したい内容があるときなど、協力会社さんに電話をしたくても番号が分からず、社内の現場監督に連絡先を聞いたりしていましたから。
アンドパッド葉山: ANDPADのご導入後、貴社ではおうちノートもご導入いただきました。貴社でのおうちノートのご活用についてお話を伺うなかで、玉岡さんのお施主様へのご対応力には感服するばかりでした。例えば、お子様がいらっしゃるお施主様には、「保育士さんの予約(※1)を入れておきますので遠慮なくおっしゃってくださいね」とタイミングよく声をかけていらっしゃったり。気遣いが素晴らしいですよね。
(※1)同社のショールーム内のキッズスペースでは、提携の保育士による無料託児サービスを提供している。おもちゃで遊んだり、映画・アニメを見ることができる設備を完備し、親子連れでも安心して打ち合わせに臨めると好評だ。

同社ショールームのキッズスペースのイメージ。(写真左)出典:同社HPより 本社ショールームのご案内 https://www.subaco-jp.com/show-room/
「小さな家で心地よく暮らす」というコンセプトと高い設計力を強みに、施主の要望を細やかに拾い上げる同社。その過程では、施主とのやり取りの記録を詳細に残しながら、施主が納得して仕様を決め切れるためのサポートが求められるだろう。
後編では、同社でのおうちノートの導入背景や実際の活用法、さらには契約後から着工までをスムーズに進めるための玉岡さんの施主への働きかけにも迫る。
URL | https://www.subaco-jp.com/ |
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代表者 | 代表取締役 深澤 侑也 |
設立 | 2018年11月 |
本社 | 兵庫県神戸市垂水区本多聞2丁目34番18 |