ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーを称賛するANDPAD AWARDのユーザー部門。本記事では、「ベスト黒板ユーザー賞」1位を受賞した株式会社未来図建設の工事部主任の西村 健さんにお話を伺った。

福岡市を拠点に、創業120年超の歴史を誇る未来図建設。高層マンションや医療施設など、地域に根ざした建築を数多く手がけ、徹底した品質管理によって高いリピート率を実現してきた。その現場を支えるのが、段取り力とITリテラシーに長けたベテラン監督たちである。西村さんは、ANDPADの「黒板AI」を積極的に活用し、撮影や記録の手間を大幅に削減。さらに、そうした効率化のノウハウを若手に伝え、現場全体のレベルアップにもつなげている。
取材では、同社工事部 部長の古賀 泰司さんにも同席いただき、同社の強みである高品質な施工と組織体制についてもお話しいただいた。本記事では、業務改善と人材育成の両輪をどう回しているのか、ANDPADを活用した具体的な取り組みを現場のリアルな声とともにお届けする。

設計・施工・経営支援を一体で。「医療・福祉」分野への本格展開
──このたびは、55万人(※)のANDPADユーザーのなかから「ベスト黒板ユーザー賞」1位を受賞されました。改めて受賞の気持ちを教えてください。
西村さん: ありがとうございます。正直、「えっ、自分がなんで?」という驚きの気持ちが一番大きかったですね。ANDPAD AWARDという賞があること自体、今回初めて知ったので、なおさら驚きました。でも、素直にうれしいです。

株式会社未来図建設 工事部 西村 健さん(左)、工事部 部長 古賀 泰司さん(右)
──ありがとうございます。まずは貴社について教えてください。
古賀さん: 私ども未来図建設は、設計・施工・管理までを一貫して手がける総合建設会社です。1902年の創業から120年以上に渡って「ずっと、お客さまのために。もっと、お客さまのために。」をモットーに、チャレンジ精神と誠実さを礎に、総合建設業の高度な技術と豊富な知識を建物に関わるすべての事業に生かしてきました。
対応エリアは、本社のある福岡市内と支社をもつ東京での展開が中心です。稀に大分や佐賀の案件も請け負いますが、基本的には福岡県内を中心に地域密着型の事業展開に注力しています。人員規模については、2024年4月時点で未来図グループ全体では228名、未来図建設本体では93名の従業員がおり、そのうち約7割にあたる62名が現場監督職として活躍しています。
──どのような建物を手掛けることが多いのでしょうか。
古賀さん: 鉄筋コンクリート造のマンションの低層から高層まで幅広く対応しており、お客様のライフスタイルや事業計画に合わせた安心・安全の設計施工を行っています。企画からコンサルティング、設計・デザイン、施工からアフターメンテナンスまでワンストップシステムでサポートすることを強みに、入居後の満足度はもちろん、長期的な資産価値を考慮した建物づくりを心がけています。
他にも、医療・福祉施設や物流倉庫や商業施設、ホテル、オフィスビル、公共施設、戸建住宅、ガソリンスタンドなど、用途も規模も多種多様ですね。建物のリニューアルや外壁改修、部分的なリフォームといったニーズにも柔軟に対応しています。
また、ほとんどが自社での直接受注、いわゆる元請け案件です。新築のお客様からのご紹介で改修のお話をいただくことも多く、自社で建てた物件のメンテナンスまで責任をもって対応できることが私たちの強みです。


──なかでも「医療・福祉」施設に注力されているそうですね。
古賀さん: はい。私どもの最大の特長は、「建設」と「福祉」の両輪体制を通じて地域社会の未来を築くこと。未来図建設では、医療・福祉分野において「経営支援」と「設計・施工」を組み合わせた一貫体制を構築しています。社内には日本医業経営コンサルタント協会の認定者が在籍しており、医業経営に関する相談にも対応可能です。また、グループ全体として医療・福祉施設の運営実績も持ち合わせており、経営セミナーの開催や業界情報の継続的な収集・発信を通じて、設計・施工だけでなく運営面からも事業をしっかりと支援しています。

同社ホームページより。未来図グループ体制図
──グループ内での一貫体制について詳しく教えてください。
古賀さん: 未来図建設が医療・福祉施設に本格的に取り組み始めたのは、2010年頃です。高齢化にともない今後ますますニーズが高まるであろう高齢者施設については、自社で運営している施設を有しているからこその、設計や施工段階から「実際の現場目線」を取り入れた提案が可能です。具体的には、グループ会社である日本福祉会と連携し、現場で働くスタッフや運営者の声を直接反映させることで「何が必要か」「どのように設計すれば使いやすいか」といった現場のリアルな声を設計に落とし込んでいます。
私たちの強みは“作って終わり”ではなく、“作ったあと”を見据えた提案ができること。施設の立ち上げから運営まで、一貫して伴走できる体制を整えていることが、他社にはない未来図建設ならではの価値であると自負しています。

──本社のグリーンカーテンも素敵ですね。「屋上・壁面緑化」への取り組みについても教えてください。
古賀さん: ありがとうございます。都市の限られた空間を活かしながら、建物に緑を取り入れる「屋上緑化」「壁面緑化」にも積極的に取り組んでいます 。断熱効果やヒートアイランド対策といった環境への配慮はもちろんのこと、景観の美しさや癒やしの空間づくりにも貢献するこれらの技術は、これからの都市建築に欠かせない要素といえます。

本社のグリーンカーテン。お客様に提案する際「参考にしたい」と見に来る方も。クリスマス時期にはイルミネーションを飾り、地域の方々の目を楽しませている
「リピーター8割」の秘密。全社で貫く品質重視の姿勢
──では次に、お二人のご経歴について教えてください。
西村さん: 高校を卒業してからずっとこの業界で働いています。新卒で入った建設会社では設計や積算の仕事を担当していました。未来図建設に入ったきっかけは、やはり地元である福岡が好きだったことが大きいですね。福岡市内の建築を多く手がけていて、新築や自社設計の物件だけでなく改修やリノベーションにも力を入れている点に魅力を感じました。面接の際にも、アットホームな雰囲気を感じられて、「ここで働きたいな」と中途入社を決めました。

西村さん: 入社してからは現場監督として働き、現在8年7カ月になります。現在進行中の現場を含めて4件目になりますが、多様な現場を経験させてもらうことで、幅広い知識を習得できていると感じています。
古賀さん: 私はもともと福岡出身で、ずっと地元の建設会社で働いていました。未来図建設に入ったのは27歳のときです。入社して早々に「東京に進出するけん。お前、一緒に行け」と声をかけられて、そのまま東京支社へ配属に(笑)。2003年の東京支社立ち上げ当初は、共同住宅やガソリンスタンドの建設を主な事業としてスタートしました。そこでさまざまな現場を経験させてもらいながら現場の厳しさや面白さを学び、本当に鍛えられました。

──西村さん、古賀さんが感じる、貴社の魅力は何でしょうか?
西村さん: まず一つ目は、本社からの現場サポートがとても手厚いところですね。古賀部長や次長、工事長などの上司が現場に頻繁に来て、安全面や品質面のチェックをしてくれるのですが、悪いところははっきり指摘してくれて、逆に良いところは「このやり方でいい」と認めて採用してくれるので、安心して仕事に取り組むことができます。また、私どもの地域は自然災害が多いので、台風対策や現場の熱中症対策についても本社が先導してフォローしてくれるのはありがたいですね。
二つ目の魅力は、社内の事前検査が多いことです。現場所長に任せっぱなしにするのではなく、会社全体で状況を細かく確認して、設計者や施主様からの指摘が出ないように努めています。転職してきた立場としては、最初は「ここまでしっかり見るのか」と正直驚きました。でもこの徹底したチェック体制があるからこそ、お客様にとってのより良い建物につながります。その結果、施主様や設計からの指摘が少なく、それが未来図建設の大きな強みになっていると実感しています。
古賀さん: 西村も言う通り、未来図建設の魅力は、なんといっても「徹底した品質管理」であり、その結果として高いリピート率につながっています。実際、当社の仕事の多くはリピーターのお客様からの依頼です。施主様からは、「素敵な建物を作っていただいてありがとう」「未来図建設さんに頼んで本当によかった」「次回もまた、同じ現場所長にお願いしたい」といったうれしい言葉をいただくことも多いです。これは、誰か一人の力というよりも、チーム全体、会社全体で取り組んでいるからこそ。組織で品質を守り、全員で現場を支える体制がお客様の満足につながっていると感じています。

働く環境を守りながら、しっかりとした品質の建物を提供する姿勢を大切にしているという
──最近の受注状況についても教えてください。
古賀さん: ありがたいことに案件のご依頼は増えているのですが、正直なところ、来年まで人手が足りない状況が続いていて、「うちはこの時期しか着工できません」とお伝えしなければならないこともあります。それでも「それなら待ちます」とおっしゃってくださるお客様もいて、感謝しかないですね。土曜日や祝日をしっかり休む方針を基本とした上で、工期を逆算して工程を提示してご理解いただくようにしています。
──受注する物件の傾向にも変化は見られますか。
古賀さん: そうですね。近年はマンションを中心に、受注する案件が大型化してきています。以前は3億円規模の現場が主流だったのが、今では10億〜30億円規模の大型現場も増えてきていて、会社全体としても新たなフェーズに入ってきたなという実感があります。

ANDPADで写真管理業務の効率が格段にアップ
──貴社では2022年にANDPADを導入いただきました。実際に現場で使ってみた感想はいかがでしょうか。
西村さん: 正直、最初は「本当に使いやすいのかな?」と半信半疑でした。でも、1時間ほどの講習で基本的な使い方を教えてもらったら、予想以上に便利で驚きましたね。

──ANDPADの機能の中で、とくに業務効率化に役立ったものは何でしたか。
西村さん: 一番は、「黒板AI」機能ですね。現場での黒板作成や写真台帳の作成が格段にスピードアップしました。黒板作成に関しては、体感で言えば以前の倍以上の速さです。写真台帳も撮影の順番通りに写真が整理されるので、かなり便利になりました。
私はもともと他社の写真管理ツールを使っていたからこそ、この違いが身に染みてわかるんです。他社ツールは写真が多いと動作が重くなるし、端末にデータを保存するためPCへの移行も手間でしたが、その点ANDPADはクラウドベースなので扱いやすいです。
──ありがとうございます。現場の働き方にはどんな変化がありましたか?
古賀さん: 以前は、自社のデータベースを使って工事関係の書類を管理していましたが、セキュリティの関係で現場からはアクセスできなかったんですよ。現場で必要な図面や資料があると、会社に電話して「送ってください」と依頼するしかなくて、かなり不自由な部分が多かったと思います。
それが、ANDPADを導入後は、現場にいながらにして必要な情報にすぐアクセスできるようになり、情報共有の負担はかなり軽減されました。他の現場の状況もリアルタイムで見えるようになり、現場間の連携もしやすくなったと感じています。

古賀さん: 今、どこの建設会社でも人手不足と業務量の多さは大きな課題だと思います。当社でも、「4週8閉所」の取り組みを徐々に始めているところです。かつては土曜日も普通に出勤していましたが、今では第2・第4・第5土曜日は休みを取りなさいというルールを徹底しています。現場も時間を決めて動いていますし、当然ながら作業時間は限られてきますよね。昔は、3億円や5億円規模の現場でも現場監督は1人、というケースが珍しくありませんでしたが、今では、休んでいるあいだに現場を止めるわけにいかないので最低でも2人は必要です。
現場管理だけでも膨大な業務量がある中で、人の配置や業務の効率化がますます重要になっています。そうした中で、ANDPADを導入したことは業務の簡素化につながっていると思います。ただ、現場の負担をもっと軽くするためには、まだまだできることがあると思いますし、今後もさらに改善していきたいですね。


120年を超える歴史を持ちながら、高品質な施工と組織力で高いリピート率を誇る未来図建設。その強さの背景には、丁寧な品質管理体制と組織全体でノウハウを共有・蓄積する企業文化がある。そして近年、ANDPADの多様な機能や運用の柔軟さに着目し、現場全体の生産性向上に活用し始めている。こうしたITツールの導入がどのように未来図建設の現場に根付き、成果を生んでいるのか。後編では、ANDPADの「黒板AI」や「図面の[仕上検査]機能」を活用しながら、大規模現場の効率化と若手育成に挑む西村さんの取り組みに迫る。
| URL | https://www.miraizu.co.jp/ |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役 菅原 正道 |
| 設立 | 1902年 |
| 所在地 | 福岡市南区野間2-7-1 |
















