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今さら聞けない 建設業の労務管理/人材確保のために今日からできること#10

外国人技能実習生の受け入れと環境整備

目次

  1. 日本で働くことのできる外国人
  2. 建設分野の外国人技能者の受入状況
  3. 技能実習制度と育成就労制度への見直し
    1. 監理団体の義務
    2. 監理費について
  4. 技能実習生を受け入れる際のポイント
  5. これからの体制づくり

建設業界、とりわけ地域密着型の小規模工務店や中小建設事業者では、深刻な人手不足が大きな経営課題となっています。少子高齢化の進行に加え、若年層の建設業離れも続いており、従来の採用手法だけでは必要な人材を確保することが難しくなっています。

また、現場を支えてきた熟練技能者の高齢化も進み、技術継承への対応も急務となっています。このような状況の中で、今後は「日本人の正社員採用」だけに依存するのではなく、多様な人材を受け入れ、活躍できる環境を整備していくことが重要です。

例えば、女性、高齢者、未経験者、短時間勤務を希望する人材など、それぞれの事情に応じた柔軟な働き方を整えることで、これまで採用対象になりにくかった層の活用受け入れが可能になります。さらに、今後は外国人材の受け入れも重要な選択肢となります。

技能実習制度や特定技能制度を活用し、意欲ある外国人材を受け入れる企業も増えています。外国人材は単なる労働力としてではなく、将来の現場を支える重要な戦力として育成していく視点が必要です。そのためには、適切な教育体制や安全指導、生活支援、コミュニケーション環境の整備が求められます。第10回の今回は、新たな人材活用として、外国人の受け入れについて解説します。

櫻井 好美 氏
社会保険労務士法人アスミル 代表
株式会社アスミル 代表取締役
一般社団法人建設業サポート室 代表理事
特定社会保険労務士 / ファイナンシャルプランナー / キャリアコンサルタント
大学卒業後、営業事務やコンサルティング会社での営業職に携わった後、社労士資格を取得し開業。国土交通省委託事業「建設業における労務管理セミナー」の他、大手ゼネコン協力店会や各企業安全大会、専門工事業団体において、「労務管理セミナー」「法定福利費セミナー」「建設業における働き方改革セミナー」等多数実施。同社の公式LINEでは、労務に関連する皆様の実務に関連する法律情報などを定期的に発信している。

日本で働くことのできる外国人

外国人が日本で働くためには、就労可能な在留資格を取得する必要があります。建設業では、「技能実習」「特定技能」などの在留資格により、一定の条件のもとで外国人材が現場で働くことが認められています。

【在留資格の概要】
①技能実習(現行制度)
目的:国際貢献(途上国の人材へ日本の技術を伝える「教育・研修」)
対象:未経験から日本の建築技術を学びに来る実習生(原則、転籍・転職は不可)

②特定技能(現行制度)
目的:国内の人手不足の解消(現場の即戦力となる労働力の確保)
対象:一定の専門技能と日本語能力の試験に合格した即戦力人材(技能実習から試験免除で移行も可能。同一業界内での転職・転籍が可能)

③育成就労(2027年4月1日施行予定の新制度)
目的:人材確保と育成(建前を排し、就労実態に合わせた抜本的見直し)
対象:3年間の就労・育成を経て「特定技能1号」を目指す人材(一定の要件を満たせば、本人の希望による転籍・転職も可能へ)

建設分野の外国人技能者の受入状況

現在、建設分野で活躍する外国人技能者の在留者数は約14.6万人に達しており、全建設技能者数の約4.9%を占めています。資料(※)が示す通り、過去10年以上にわたり右肩上がりで推移しており、建設現場において外国人材は既に欠かせない存在となっています。特定技能外国人の国籍をみると、ベトナムを筆頭に、フィリピン、インドネシアといった東南アジア諸国からの人材が中心です。

(※)出典:「建設分野における外国人材の受入れ」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001481316.pdf)


技能実習制度と育成就労制度への見直し

現場で働くことのできる外国人の在留資格には、技能実習、特定技能、育成就労(2027年4月1日施行予定)があります。技能実習制度は、国際貢献のため、開発途上国等の外国人材が日本で働きながら技能や技術を学び、母国の発展に役立てることを目的とした制度ですが、現実的には就労することが大きな目的となっているため、制度とのズレが生じてきています。そのため、今後は人材確保を目的とした育成就労制度へ変更していきます。

【育成就労制度の主なポイント】
①3年間で「特定技能1号」水準へ
建設などの特定の産業分野において、3年間の就労を通じて「特定技能1号」水準の技能を身につけた人材を計画的に育成・確保します。

②公正な「監理支援機関」への転換
受入れをサポートする監理支援機関は、従来の制度よりも厳格な「許可制」に移行します。これにより、これまで以上に適正で信頼できる受入れ体制を整備します。

③「育成就労計画」の認定制
外国人材一人ひとりに対して「育成就労計画(期間、業務目標、技能・日本語能力の目標など)」を作成し、外国人育成就労機構による認定を受ける仕組みとなります。これにより、育成のゴールが明確になります。

④安心のための保護・適正化
送出しの適正化:二国間の取決めや手数料の透明化を図り、より適正なプロセスで人材を受け入れます。
転籍の柔軟化:労働者としての権利保護を目的として、一定の要件を満たす場合に限り、本人の意向による転籍が認められるようになります。
環境整備:地域協議会などを通じて、働きやすい環境づくりを地域全体で促進します。
「育成就労制度概要」(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/index_00029.html )

監理団体の義務

監理団体は、技能実習生を受け入れる企業に対して、制度運用を支援・監督する役割を担います。具体的には、海外の送り出し機関との調整、実習生の受入れ手続き、技能実習計画の作成支援、入国後講習の実施、定期訪問による労務管理や生活面の確認などを行います。また、法令違反やトラブル防止のため、企業への指導や監査を実施し、適正な実習運営を支援します。

監理費について

監理団体には毎月、実習生1人ごとに監理費を支払います。金額は監理団体により違いますが、一般的には2万円~5万円くらいが相場です。費用には定期監査、生活支援、各種申請サポートなどが含まれています。監理団体によりサポートの内容が違いますので、どこの監理団体にお願いするかは重要なポイントです。言葉のわからない実習生にとっては監理団体の方との母国語のサポートは何よりも心強いものです。実習生に定着してもらうためには、監理団体と企業との連携も重要になっています。なので、単に費用の比較ではなくサポート内容についてもしっかりと確認をしていきましょう。

技能実習生を受け入れる際のポイント

技能実習生を受け入れる企業、特に小規模事業所では、「人手不足を補うために採る」という視点だけではなく、「共に働き、育てる」という意識を持つことが重要です。大企業のように専門部署があるわけではないため、社長や現場責任者が直接コミュニケーションを取るケースも多く、その対応次第で定着率や職場の雰囲気が大きく変わります。例えば、小規模の建設会社では、社長の判断で「頑張っている人にだけ特別手当を出す」ということがあります。

しかし、外国人材の中には「仲間内で給与や待遇の情報をオープンに共有し合う」という文化・コミュニティの繋がりが強い傾向もあり、「なぜ自分は少ないのか」という不満につながりやすくなります。日本人同士では暗黙の了解で済むことでも、外国人材にはルールとして明確に説明しなければ納得感を得られない場合があります。そのため、手当や昇給基準、評価方法については、できるだけ制度化し、誰が見ても分かる形にすることが大切です。

また、小規模事業所では生活支援の重要性も非常に高くなります。技能実習生は、来日直後は日本語が十分に話せず、生活ルールも分からないため、不安を抱えています。例えば、「病院へ行きたいが予約方法が分からない」「ゴミの分別が理解できない」「自転車事故を起こしてしまった」など、仕事以外の相談が多く発生します。小規模企業では担当者が限られているため、「そこまで対応できない」と感じることもありますが、こうした支援を放置すると孤立や早期離職につながります。実際に、毎週1回でも社長や先輩社員が食事をしながら話を聞く場をつくったことで、実習生が職場に安心感を持ち、長く定着したという事例もあります。

さらに、建設業では安全教育が特に重要です。日本人であれば経験的に理解している危険でも、海外では安全ルールや現場環境が異なるため、「なぜ危険なのか」を具体的に伝えなければ事故につながる可能性があります。例えば、「ヘルメットを必ず着用する」「脚立の最上段には乗らない」といった基本事項でも、写真や実演を交えながら丁寧に説明する必要があります。

加えて、小規模事業所では地域との関わりも定着に影響します。地域イベントに参加したり、日本人社員と交流する機会をつくったりすることで、「会社に守られている」という安心感が生まれます。技能実習生の受入れは、単なる採用活動ではなく、生活・教育・文化理解を含めた総合的なマネジメントであることを理解し、受入れ体制を整えることが重要です。

ANDPAD ONE編集部より
「察する文化」「暗黙の了解」は外国の方には通じにくい可能性もあります。指示や図面、写真報告を行うツール自体を母国語に対応させることが有効です。

  • ANDPAD多言語対応の活用
    • 建設現場で働く外国人材の約6割を占めるベトナム語や英語に加え、新たにインドネシア語、タイ語、繁体字、スペイン語の全6言語に対応しています。

詳細はこちらです:https://andpad.co.jp/news/12099/


これからの体制づくり

今後の建設業、とりわけ小規模工務店や中小建設事業者においては、深刻な人手不足の中で外国人材の活用は避けて通れない時代になります。しかし、外国人材を「労働力」として考えるのではなく、会社を支える大切な仲間として迎え入れる姿勢が何より重要です。言葉や文化、価値観が異なるからこそ、曖昧に済ませてきたルールや慣習が通用しない場面も多くあります。

例えば、「なんとなく頑張っている人を評価する」「社長の判断で手当を決める」「空気を読んで動く」といった運用は、外国人材には分かりづらく、不公平感や誤解につながることがあります。そのため、評価基準や給与ルール、業務手順、安全ルールなどを明確にし、誰にでも分かる形に整備していくことが必要です。

ルールを見える化し、説明できる会社になることで、全社員にとって働きやすい職場になります。また、教育体制やコミュニケーションの見直しを進めることで、定着率向上や職場環境の改善にもつながります。

外国人材の受入れは、人手不足対策であると同時に、会社の仕組みや組織体制を見直す大きなチャンスでもあります。これからの時代に選ばれる会社になるためにも、多様な人材が安心して働ける環境づくりを進め、共に成長していく姿勢が求められています。

ANDPAD ONE 編集部より
千葉県の広島建設株式会社様では、今回の記事で解説した「技能実習」などの制度とは異なり、すでに日本国内で豊富な施工管理キャリアを積んでこられたプロフェッショナルを中途採用で迎え入れ、ともに未来を築く仲間として歩みを進められています。

株式会社アスミル / 社会保険労務士法人アスミル
URLhttps://www.asmil.co.jp/
代表者櫻井 好美
本社〒270-0034 千葉県松戸市新松戸3-33 京屋ビル3F
  
寄稿: 櫻井好美(株式会社アスミル / 社会保険労務士法人アスミル)
企画・編集: 平賀豊麻、齋藤夏美
デザイン: 横井香南、岩佐謙太朗
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