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東京都八王子市に根ざし、地域のまちづくりを支えてきた塗装専門店をルーツに持つ株式会社光企画。マンション・アパート、介護施設、公共施設などの大規模修繕工事から個人宅の外壁塗装工事まで、幅広い工事を手がけながら着実に事業を拡大しています。また、同社は「地域で暮らす方々の笑顔を守りたい」との思いから、高齢者サポート事業・シニア向け空き家リノベーション事業なども展開。社会課題の解決に向けたアクションを起こしています。
そんな同社は、2019年よりANDPADの各製品を段階的に導入し、業務効率化を進めています。また、2025年からは「ANDPAD歩掛管理」の運用を開始し、原価集計の効率化・経営数値の可視化に取り組まれています。
今回は、同社の代表取締役 峯尾光成さん、取締役 峯尾敬子さん、総務部 白井 沙也加さんにインタビューを実施。前編では、アンドパッド コミュニティマネジャーの平賀が、多角化する同社の事業戦略や地域への想い、今後の展望などを詳しく伺いました。
東京都八王子市に根ざし、塗装事業から高齢者向け事業まで幅広く展開
大手ゼネコンの協力会社として、長年にわたり公共施設や民間物件の塗装工事に携わっている株式会社光企画。長年培ってきた経験と実績を活かし、現在では個人のお客様を対象にした外装塗装専門店「ぬりかえ専門館」を八王子市にオープンし、施工実績を伸ばしています。

同社は、本社に塗料や屋根材を実際に見て、触れることができるショールームを併設し、地域のお客様の多様な相談に応えている。
──貴社は2005年に設立されて、今年で20周年を迎えていらっしゃいますが、実際はお父様の会社が前身にあったと伺っています。お父様の代から考えると、貴社の歴史はどのぐらいなのでしょうか?

株式会社光企画 代表取締役 峯尾 光成さん
峯尾光成さん(以下、光成さん):私の父が1970年に立ち上げた塗装専門店が当社のルーツですので、前身の会社を含めると業歴は50年以上になります。以前は、私も父の会社で働いていて、その後当社を立ち上げたのですが、父の会社の経営状況が悪くなってしまい、最終的に私が父の会社の事業や従業員を引き継ぎました。ですから、光企画としては設立20周年を迎えたわけですが、塗装工事の実績や地域にかける想いは、50年以上にわたって受け継いでいると自負しています。
──貴社は現在、多角的に事業を展開されていらっしゃいますが、これはお父様の時代から取り組まれてきたことなのでしょうか?
光成さん: いえ、父の時代は、大手ゼネコンや地場の建設会社の下請けとして塗装工事を手がける事業のみでした。ほかの事業へのチャレンジをはじめたのは、私が経営をするようになってからです。
新規事業を立ち上げたのは、父の会社の立て直しに関わっていたとき、「負債を減らすためにも、さらに売上を上げなければ」と考えたことが背景にあります。ただ、既存事業だけでは売上向上を目指すのが難しかったため、新規事業を立ち上げて売上拡大を目指そうと考えました。当時、私はまだ20代前半。若さゆえの無謀なチャレンジだったかもしれませんが、何とか軌道に乗せ、現在の柱となる事業へと育てることができました。
──そうだったんですね。では、貴社が展開している事業の詳細をあらためて教えていただいてもよろしいでしょうか?
光成さん: はい、まずひとつ目は、創業以来の事業である大手ゼネコンから塗装工事・大規模修繕工事を請け負う事業です。マンション・アパート、商業施設、倉庫、公共施設など、携わる建物はさまざまで、継続的に発注をいただいています。現在は塗装工事に限らず、改修工事全般に対応していますので、徐々に総合建築業にシフトしていっているイメージです。
また、最近は当社が元請けとなって施設改修工事、塗装工事を請け負う事業にも力を入れています。この事業では、介護施設や病院、工場、倉庫を運営するお客様から直接発注をいただくことが多いです。省エネやCO2削減、就業環境の改善につながる「遮熱塗装」の提案も強化しています。
個人のお客様向けには、外壁塗装専門店「ぬりかえ専門館」を八王子市に出店し、外壁や屋根の塗装工事のご相談を受けています。お客様に納得していただける技術力と提案力を強みに、施工実績を増やしています。
──BtoBからBtoCまで、塗装工事や改修工事に幅広く携わっていらっしゃいますが、一年の中で季節変動はありますか?
光成さん: 公共施設の工事は、夏季休暇や年末年始期間中に入ることが多いです。アパートやマンションの工事は、2月・3月の年度末にかけて受注のピークを迎えます。4月になると少し余裕が出てきますが、一般の戸建住宅は「気候が良くなったから」と外壁の塗り替えを検討されるお客様が増えてきます。1年間のうち半年ほどは繁忙期といった状態です。
──それに加えて、貴社は建築事業以外に「高齢者向け事業」も展開されていますよね。
光成さん: はい、長年にわたって地域のまちづくりに携わるなかで、八王子市に住む高齢者の方々から住まいや不動産に関する不安をお聞きしたり、相談に受けたりすることが増えていきました。そこで、高齢者の方々が住み慣れたまちで長く暮らせるように、「高齢者向けサポート付き賃貸住宅」の運営を行う不動産事業や生活支援サービス、介護施設紹介サービスなども2018年からスタートしています。

(左から)株式会社光企画 事務担当 白井 沙也加さん、光成さん、敬子さん
夫婦二人三脚の塗装店としてスタート、現在は60名の職人を抱える工事会社へ
──貴社の組織構成についても教えていただけますか?
光成さん: 私が代表取締役、妻が取締役を務めており、従業員は33名です。施工を担う職人は60名体制で確保しており、そのうち、自社職人が15〜20名、当社専属の一人親方が7〜8名、そのほかが外注の専属職人となっています。
峯尾 敬子さん(以下、敬子さん): 私も2005年に当社を立ち上げたときから経営のサポートに回っています。当時は私たちもまだ20代で、一緒に働いている職人さんたちは10代がほとんどの若い会社でした。小さいマンションの1室で仕事をしていたころが懐かしいです。

株式会社光企画 取締役 峯尾 敬子さん
光成さん: 今は、私たちの息子と息子の妻も当社の従業員として事業に関わっています。息子はもともと調理師専門学校に行き、銀座の老舗レストランで働いていたのですが、コロナ禍に見舞われて休業せざるを得なくなり、当社に転職をしてきました。当時ちょうど結婚をしたばかりで、飲食業特有の勤務時間の不規則さに不安を感じていて、働き方を見直したいと考えていたようです。当社も事業拡大のために増員をしたかったタイミングだったので、お互いの想いが合致して入社に至りました。
──最近は事業承継に悩む事業者も多いですが、ご子息さまが入社してくれたのであれば安心ですね。
光成さん: いえ、私の息子だからといって当然社長になれるわけではありません。むしろ私は、「息子であることをアドバンテージだと思うな、逆にハンディキャップだと思え」と常々伝えています。一緒に働く従業員や職人さんは、どうしても社長の息子として見てきます。ですから、「まわりの2倍の努力をしてはじめて認められる」くらいに考えて、仕事に取り組んでほしいと言っています。
──峯尾さんも、前身の会社に入社したときに同じような経験をされたのですか?
光成さん: そうですね。会社に入った途端、子どものころから兄のように慕っていた職人さんたちが上司になるわけです。今までと違って敬語で話をしなければなりませんし、当然ながら注意も受けますので、これまでとのギャップに社会の厳しさを痛感した覚えがあります。ただ、本当に良い勉強になりましたし、自分自身の成長につながったとも感じています。
社員の「羅針盤」となる戦略を示し続け、3年後には売上20億円を目指したい
──設立以来、着実に事業の柱を増やし、従業員の方々や職人さんも増員していらっしゃると思います。ここから3年後、どのように成長曲線を描いていくか、ビジョンをお伺いしてもいいでしょうか。
光成さん: ゼネコンさんの下請けで入る塗装工事・大規模修繕工事を同じペースで受注しながら、今後は自社が元請けとなる改修工事の売上を拡大していきたいと考えています。不動産事業についても、今後は現在の2倍程度まで伸ばしていく考えです。会社全体としては3年後、売上20億円を目指したいですね。昨年と今期は目標をクリアできたので、3年後も実現できると見込んでいます。
──今後もさらに拡大していく方針なのですね。具体的にはどんな戦略で進めていくか、峯尾さんの考えをお聞かせいただけますか。
光成さん: 自社が元請けとなる改修工事については、まだまだ伸びしろがある分野だと感じています。ですから、まずは公共工事の入札金額を拡大できるように、現在のCランクをBランクにアップできるような取り組みを進めていきます。
民間工事の受注に関しては、ホテルの改修工事の受注に力を入れていきたいと考えています。現在インバウンドの増加を受け、ホテル利用客も急増していますが、20年ほど前に建てられたホテルにはタイル張りの外壁が多く、経年劣化によって剥落する危険性があります。建築基準法第12条(※)にもとづいた点検においても、外壁の保守・点検は建物の管理者側に義務付けられていますので、今後ますます改修ニーズが高まることが予想されます。これから3年間で、ホテル向けの赤外線外壁調査を実施し、そこから修繕工事への受注へつなげていく取り組みにもチャレンジしたいと考えています。
(※)国土交通省ホームページ(定期報告制度における外壁のタイルなどの調査について)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000161.html
また、当社はミャンマー出身者をはじめ、外国人技能実習生を多く受け入れています。当社で技術を学んだ実習生たちが、自国に戻ったときに日本のゼネコンの仕事を請け負えるように、海外で支店を立ち上げる構想も描いています。日本語が話せて、日本レベルの品質で施工管理ができるリーダーへ育てることができれば、大きなアドバンテージになると思います。
光成さん: 八王子市に密着した事業にも力を入れていきたいですね。私は、八王子商工会議所のメンバーでもありますし、ロータリークラブや法人会が実施している地域活動にも積極的に参加しています。地域のための活動で信用や実績を積み重ねると、「人」としても認めてもらえる感覚がありますし、めぐりめぐって新しい仕事にもつながっていくと感じています。
──高齢者向け事業も地域貢献の一環としてはじめられたのですか?
光成さん: 施設系の介護サービスは充実してきていますが、自立した生活を送っている高齢者の方々を支えるサービスはまだ少ないと私は考えています。特に八王子市は、バブル時代に建てられた住宅街でひとり暮らしをしている高齢者の方々が多くいらっしゃいます。
そこで、当社では、買い物代行や通院の付き添い、配食サービス、見守りサービスがついた「低価格高齢者向け住宅」の運営や老人ホーム・賃貸住宅への入居・入院の際の「身元保証」を行うサービスを実施しています。実際のところ、売上や利益を見込める事業ではありませんが、この活動から介護施設や病院とのつながりができ、本業の建築業にも良い影響を与えてくれていると感じています。
──建築業と地域貢献につながる事業を両立されているのは素晴らしいです。ANDPADは、やはり建築事業で利用されているのですよね。
敬子さん: はい。当社では事務担当の白井がANDPADの管理者として頑張ってくれています。工事の案件作成、請求関連、歩掛管理など、ほぼ白井が担当しています。
──そうなんですね! では、後編ではANDPADの運用状況について詳しくお伺いできればと思います。
八王子市に根ざし、塗装工事の専門会社として着実に事業を拡大してきた同社。先代の時代から築いてきた信用と実績を大切にしながら、現在では元請けとして大型改修工事も手がける総合建設会社へと進化しつつあります。
また、「地域のために」と、高齢者の不安や悩みに寄り添う事業を展開している点も、「新しいことにチャレンジしたい」と考えている地域密着企業の参考になるでしょう。
後編では、同社がなぜANDPADを導入したのか、導入後にどんな変化が生まれたのかを詳しく掘り下げていきます。また、新たに運用を開始した「ANDPAD歩掛管理」の詳細とその効果についても伺います。
URL | https://hikarikikaku.co.jp/ |
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代表者 | 代表取締役 峯尾 光成 |
創業 | 2005年 |
本社 | 東京都八王子市千人町2-16-3 |