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末宗組|老舗ゼネコンが挑むICTと技術継承の融合 ~前編~

「壁のない人生は何が楽しいのか」。 25億円の巨大プロジェクトを支える、不変の情熱と挑戦の精神

目次

  1. 創業114年の老舗が挑む「新3K」とICTの内製化
  2. 請負金額25億円を単独受注。巨大現場で直面した管理の限界
  3. 人生を懸けて「壁」を愉しむ。技術継承の壁を突破する情熱とデジタルの融合

ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーを称賛する「ANDPAD AWARD」のユーザー部門。今回は、「ベスト図面ユーザー賞」で全国第2位を受賞した、株式会社末宗組の江口裕紀さんにお話を伺った。1912年(大正元年)創業、2026年で115年目を迎える老舗総合建設業者、株式会社末宗組。同社は今、現社長の強力なリーダーシップのもと、建設業の「新3K(給与・休暇・希望)」実現に向け、DXへの投資や働き方改革という大きな変革の渦中にある。

その最前線である「津久見市新庁舎建設工事」という、同社にとって過去最大規模の現場を預かるのが、建築部課長の江口さんだ。20代の若手監督たちが半数を占めるチーム構成のなか、江口さんはいかにして「いい建物」への情熱を次世代へと繋いでいるのか。前編では、末宗組の挑戦と、江口さんが抱く技術者としての信念に迫る。

 

創業114年の老舗が挑む「新3K」とICTの内製化

──「ANDPAD AWARD 2026 ベスト図面ユーザー賞」全国第2位の受賞、誠におめでとうございます! まずは受賞の知らせを聞いた際の率直な思いをお聞かせください。

江口さん: 正直に申し上げますと、最初は戸惑いの方が大きかったですね。本格的にANDPADを導入してからまだ1年も経っていないタイミングでしたので、「本当に私でよいのだろうか」と受諾すべきか迷ったほどです。一方で、私個人として「いい建物」を作るために日々、仕事に一生懸命向き合ってきた自負もありました。そのためのツールとしての活用が評価されたのであれば、大変光栄なことですし、お受けすべきだという結論に至りました。

株式会社末宗組 建築部 課長 江口裕紀さん

──あらためて、創業114年の歴史を持つ株式会社末宗組について教えてください。

江口さん: 大分県内でも歴史のある総合建設業者として、長年実績を積み上げてきました。組織は建築部・土木部を中心に事業を展開し、売上比率は建築と土木で概ね半々です。全体売上の約7割を公共工事が占めており、地域から長年の実績を高くご評価いただいている点が強みです。

──老舗でありながら、ICT活用や働き方改革にも非常に積極的だと伺っています。

江口さん: 現社長は「建設業界をより魅力ある産業にしたい」という想いを持ち、DXや働き方改革への投資を積極的に進めています。従来の建設業のイメージ刷新を目指し「新3K(給与・休暇・希望)」実現に向けた取り組みを推進しています。

土木分野では「i-Construction(建設現場の調査・測量から設計、施工、検査、維持管理までの全工程にICTを活用する取り組み)」にいち早く対応し、MCブルドーザー等のICT建設機械やドローン、レーザースキャナによる測量の内製化を実現しました。建築部でもANDPADのようなツールを積極的に取り入れ、今後はBIMの導入も推進していきたいと考えています。

──江口さんが末宗組に入社を決めた理由を教えてください。

江口さん: 私が入社した2013年は、ちょうど現社長への代替わりの時期でした。社長は「建設業界を変えたい」「いい会社を作りたい」という思いを常に前面に出されている方で、次々と新しい取り組みに挑戦されていました。そうした前向きでチャレンジングな姿勢を拝見し、「一緒に働けたらきっと楽しいだろうな」と考えたのが入社のきっかけです。

入社後もそのイメージはまったく変わらないどころか、前向きさに磨きがかかっているようです。社長自ら一生懸命に業務に邁進されている姿を見続けている中で、私の中にある「この人の想いに応えたい」という気持ちも年々大きくなっているのを感じますね。

請負金額25億円を単独受注。巨大現場で直面した管理の限界

──現在、江口さんが現場代理人を務められている現場について教えてください。

江口さん: 現在は「津久見市新庁舎建設工事」に携わっています。延べ床面積7,078平米、RC造地上5階建てという大規模案件で、請負金額は約25億円です。2024年7月に契約し、同年8月1日より着工しました。2026年7月の竣工を予定しています。

──取材前に、少し見学させていただきましたが、とても大規模な案件で、まさに地域のランドマークになりそうな物件ですね。

江口さん: そうですね。当社が請け負う施工のボリュームゾーンは3,000平米程度ですので、単独受注としては過去に例がない規模です。また、今回採用している免震構造の施工も初体験と、異例づくしの案件です。そのため、通常であれば全員で全工種をフォローし合いますが、今回は担当制を敷きました。これも初体験のため、担当制の難しさや現場代理人として全体を把握する大変さを今まさに勉強させていただいています。

──現場の体制を教えてください。

江口さん: 現場には現在7〜8名が従事しており、当社に所属する建築部の監督12名のうち半分以上が投入されています。年齢層は70代の所長、現場代理人である40代の私、50代が2名、そして20代が4名です。

また、現場専任の事務スタッフを配置せず、監督自らが施工管理から原価管理まで一貫して担当する体制となっています。実際に現場がはじまってからバックオフィスのサポートやツールの必要性を感じ、ANDPADの導入に至ったという経緯もあります。

 

人生を懸けて「壁」を愉しむ。技術継承の壁を突破する情熱とデジタルの融合

──今回の現場でツールの必要性を感じられた背景について、詳しく教えてください。

江口さん: これまで経験してきた現場では、「自分の目で見て、現場を進めていくこと」を何より大切にしてきました。技術者として現場を掌握し、細部まで確認することで品質を担保する。それが私の矜持でもありました。

しかし、今回の庁舎建築ほどの規模になると、物理的に私一人では隅々まで目が行き届きません。これまでの成功体験が通用しないほどの巨大な現場を前にしたとき、デジタルツールの必要性を強く感じました。

ちょうどその頃、いろいろなツールを検討するなかで、会社のほうからも「ANDPADを使ってはどうか」という提案がありました。そこで、1階にある免震層の躯体工事の時期である2025年5月のタイミングで、ANDPADを本格導入したんです。デジタルを「自分の目」の延長線として機能させることで、一人の限界を超えて品質を追い求める体制を作ることができました。

──江口さんは具体的にはどのような部分で、「自分の目で現場を見る」ことの意義を実感されていますか?

江口さん: 内装の経験も含めると、私は建設業に従事して23年になります。父の家業を手伝っていた技能者時代から、ずっと大切にしてきたのは「出来上がったものにどれだけ愛着を持てるか」ということです。

自分の目で見て納得できるものを作ってこそ、プロの技術者です。いい加減な仕事をすれば、その建物に愛着など持てるはずがありません。かつて、工期が逼迫して納得がいかないまま現場を終えざるを得ず、悔し涙を流したこともありました。あの時味わった「しょうがない」という諦めを二度と繰り返さないよう、自分の目で細部まで確認し、納得できるものをお客さんに提供することにこだわっています。

──現場をご案内いただいた際に、非常に現場愛に溢れると感じました。その深い愛情はどこから来ているのでしょうか。

江口さん: 20代前半の頃、ゼロから巨大な建物ができあがる様子を目の当たりにして、「人間って素晴らしい、こんなものができるんだ!」と心を動かされたことが原点です。ただ傍観するだけではなく、同じ業界の当事者として「自分ももっといいものづくりを目指さなければ!!」と決意、現場監督の道を歩み始めました。

その決意があるからこそ、私は現場に対して「是正ゼロはありえない」というスタンスで考えています。人間が作っている以上、ミスや間違いを100%避けることはできません。そのため、誤りを隠すのではなく正直に、嘘偽りのない報告をしてこそ、建物に真摯に向き合っていることが伝わると信じています。

──そのうえで、職人さんとの接し方や若手の育成で心がけていることはありますか?

江口さん: 何よりも、実際に現場を動かす職人さんへの敬意を忘れないことを心がけています。彼らがいなければ現場は成り立ちません。気持ちよく仕事をしてもらえるように日常的にコミュニケーションを取り、「江口の頼みなら仕方ないな」と思ってもらえる関係を目指しています。

若手に対しては、「自分はプロである」という自覚を持てるように、責任の重さを教えています。責任感から一人で抱え込みがちな子もいますので、「小さなことでも周囲にサポートを求めなさい」「助けを借りるのは決して恥ずかしいことではない」と言い続けています。

20代の若手はデジタルに強いですが、責任の取り方や品質の基準はまだ勉強中です。ANDPADを活用し、彼らの強みを活かせる環境を作ることは、彼らがプロとして「いい建物とは何か」を考える余裕を作ってあげることに繋がると考えています。

──大規模な現場管理や若手育成に向き合うのは決して簡単ではないと感じます。そういった困難に対峙しつづけられる原動力は何でしょうか。

江口さん: 私は常々「壁がない人生は何が楽しいのか」と考えているんです。平坦な道だけを歩んでいても成長はありませんし、面白くもないでしょう。大きな壁にぶつかり、苦労して、それをどうにか乗り越えようともがくことこそが、自分自身の、そして共に戦う若手たちの大きな成長に繋がると確信しています。

今の現場も、前例のない挑戦の連続です。苦しいこともありますが、この壁に向き合う時間があるからこそ、竣工した時に心の底から「いい建物ができた」と愛着を感じられるはずです。今回も困難を楽しむ気概を持って、最後まで突き詰めたいと思っています。

大正元年から続く老舗としての誇りと、変化を恐れず新しい手法を取り入れる柔軟さ。その両方が息づく末宗組の中心で、江口さんもまた23年の経験を糧に「いい建物づくり」に情熱を注ぎ続けている。

同社にとって過去最大規模となる工事。この高い壁を乗り越えるために導入されたANDPADは、現場にどのような変化をもたらしたのか。

続く後編では、具体的な図面活用の手法や、若手へ技術者としての視点を伝える江口さんの教育術について詳しく伺う。

株式会社末宗組
URLhttp://suemune-gumi.co.jp/
代表者代表取締役社長 末宗 信市
創業1912年8月1日
本社大分県宇佐市大字和気1023番地
企画・取材: 平賀豊麻
編集: 金子結乃
執筆: 手塚裕之、箱田高樹(カデナクリエイト)
デザイン: 横井香南、岩佐謙太朗
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