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相羽建設|2代目経営者が語る。これまでと、これからの10年〜vol.3〜

次の50年をつくる相羽建設の10年ビジョン

目次

  1. 第2創業期を迎え、次の10年のためのビジョンを定義
  2. ヒエラルキーの頂点である職人の手仕事を残したい
  3. 100年続く会社となるための職人への長期的なキャリア支援
  4. デジタルを活用し、第二創業期の成長にドライブをかける
  5. 10年後の目指すべき企業像とは

大工工務店として創業し、東京・東村山市を拠点に、『地域工務店だからできる、人と人、人とまちが「つながる」暮らし』を実現するために、永く住み続けられる住まいを手掛ける相羽建設株式会社。家づくりだけでなく、ドミノ工法、家具、施設の3つのFCを展開して全国各地にノウハウを提供し、加盟店は延べ180社にものぼる。今回は、代表取締役・相羽健太郎氏にインタビューを実施。全3回でご紹介する。Vol.3は、第2創業期を迎えて取り組む、これからの10年を見据えた職人育成の仕組み、デジタルの活用と今後の展望について伺う。

相羽 健太郎氏
相羽建設株式会社 代表取締役
大学卒業後、大手ハウスメーカーに入社。2年間営業として従事し、1998年家業である同社に中途入社。12年間営業としての経験を積み、2010年より現職。

第2創業期を迎え、次の10年のためのビジョンを定義

相羽氏が代表取締役に就任後、地場工務店として地域に根ざした商圏の集中とポートフォリオの拡大、そしてオーナーへの対峙をする決断と、目まぐるしい変化を遂げてきた。現在、同社は創業50周年を迎え、さらに成長にドライブをかける第2創業期のフェーズとして、今後10年のビジョンを描いている。

相羽氏: 将来的にどのように下の年代に引き継ぎ、何を残したいかを考えた結果、事業が多角化してきたなかでも、原点である手仕事を大事にしていきたいと思い、「木」をキーワードに。われわれは木のプロフェッショナルとして堂々と胸を張っていたいですし、お客様からも「木のことならデザインや技術なども含めて安心だから、相羽建設だよね」と言っていただけるようなブランディングをしていきたいと考えました。

相羽健太郎氏 相羽建設株式会社 代表取締役

ヒエラルキーの頂点である職人の手仕事を残したい

ビジョンとして掲げた「人と地域をワクワクさせる木のプロフェッショナルチーム」として、新たな世代のチャレンジを育む一環として、社員大工の長井氏は、自らを「アイドル大工」と名乗り、SNSなどで発信を行っている。現在は、長井氏の活動に賛同するスポンサーもついているそうだ。

写真左から社員大工の加瀬彰一氏と長井駿氏。

相羽氏: 今は、「何を作るか」ではなく「誰が作るか」という時代。職人の人間力含めて選んでもらえるように磨いていくことが大事です。まだまだ賛否両論あるとは思いますが、職人の価値向上を目指してInstagramで他社の職人と繋がって交流するなど、若手にはわれわれには考えられないような発想がある。それを認めながら、自分たちの固定概念のなかで彼らのことを見ていないかを考えながら対峙しています。一方で、ガチガチに組織に守られたいというニーズもあるので、いろいろな働き方が内包できる組織であることが今後より大事になってくると思っています。表現の仕方はいろいろあるけど、芯はブレない会社でありたいですし、工務店ってそういう業種だよねと思われるようになりたいですね。

こうした相羽氏の考えの根底にあるのは、職人に対するリスペクトだ。先代が元々大工出身であることもあり、モノがつくれる人=職人がヒエラルキーの頂点という思想なのだ。

相羽氏: 自分は職人出身ではないので、モノづくりができないコンプレックスがありました。仕事をする上でデジタルも取り入れていますが、今後も職人による手仕事は残していきたい。目の前にいる人のために全力を尽くしたいので、当社は職人が腕を振るえる職場でありたいというのが第一にあります。それが仲間やスタッフ、さらにはお客様にも共感していただけたら嬉しいですね。

経営者なので結果が全てという話もしますが、人間的には途中にある「誰」や「プロセス」などを大切にする会社でありたいですし、それで結果が両立できたら。地域工務店はプロセスを大切にしているが、結果に苦しむケースが多い。当社は、先代から赤字なくやれてきているのは自負しているので、本来楽しいことをやっていれば儲かる会社にしていきたいというのが個人的には大きなメッセージだったりもします。


小泉誠氏を迎え自社施工で50年間一緒にやってきた職人とともにリノベーションをした社屋。毎日コミュニケーションを取りながらつくり上げてもらった愛着のある空間だ。



100年続く会社となるための職人への長期的なキャリア支援

先代の時代から一緒に仕事をしてくれている職人の高齢化に伴い、同社では7年前から社員大工制度も設けて、自社大工育成を行っている。将来的には、自社の生え抜きの大工で会社運営できるようにしたい考えだ。

この制度は、新卒から7年間は社員として雇用し、8年目からは社員大工、独立して請負大工、大工に向いていないと思ったら現場監督などキャリアチェンジするかの3つから選択することができる。

相羽氏: 入社時は高校生なので、キャリアプランは親御さんの影響が大きい。雇用が守られていることとキャリアプランを途中で変えられるということを示すことで親御さんにも安心していただけます。本人は将来についてまだ深く考えているわけではなかったりするので、25歳くらいになって将来どうありたいというのが出てきたときに、独立だけではない選択肢をもたせたい。できれば社員として残ってほしいですが、個人親方になることがモチベーションになる人もいますから、強制はできません。技術的には5年くらいで一人前になりますが、高卒だと一定のルールの上で自由・個性の主張が成り立っていることを理解して社会性が備わるまで時間がかかる。23歳だと年齢的にまだ未熟なので、人間的に一人前という意味で7年間と設定しています。

また、設計は大卒や大学院卒が多いですが、いきなり設計はやらせずに必ず現場監督をやらせます。現場を知らないと、1本の線がどう金額を左右するのかわからないですから。ちゃんと意味を理解して線を引いてもらえるように一度現場を体験してもらいます。本来デザインはそうあるべきで、両側を知っている必要がありますからね。

社屋エントランスの展示スペースには職人さんの写真パネルと合わせて職人の道具を展示している。

また、年配の職人は高所作業のリスクが高くなるため、リフォームや家具の仕事を担当してもらったり、手間受けではなく常用に雇用し直したりと、長期的に力を発揮してもらえる環境を整えている。将来的には工場での作業をやってもらえるようにと、加工場も新設した。雇用を保証するわけでないが、安定的に仕事ができるのは職人にとっては心強い。そうすることによって、ベテランの待遇を見て自分の行く末について考える若手にも、長期的なキャリアプランをイメージできるようにしているのだという。

相羽氏: レーザー加工機は若い社員がやっています。できれば育成期間のうちに経験値として手刻みをやらせたいとは思っています。やれるけどやらないのと、やれなくてやらないのは全然違いますからね。ドミノ住宅の場合は工期が2ヶ月と短いので、年間一組の大工に対して5〜6棟は用意しなければなりません。手刻みの場合は、手刻みに2ヶ月、その後現場に2ヶ月で合計4ヶ月かかるので、年間一組の大工に対して3棟受注できていればいいわけです。3組くらいの大工を抱える工務店であれば当社も手刻みを選択したかも知れませんが、事業規模として手刻みではなく新築に対してはプレカットを選択し、技術が必要なリフォームに関しては手刻みを残しています。大工育成の観点で、育成の7年の期間で1棟くらいは手刻みで建てさせてやりたいと考えています。

今後は、趣味で木工をやるお客様向けに加工場を開放し、またデジタルファブリケーションも取り入れながら、工場のエンターテイメント化を図れたら。製造業は工場見学をすることが多いですが、職人を見てもらう機会をつくって職人にも「見られる」感覚をもってもらいたい。そうすることで、「職人の作業している姿がかっこいい」という世界をつくりたいです。

デジタルを活用し、第二創業期の成長にドライブをかける

同社は、事業の多角化に伴い、1人あたりの生産性を高める仕組みの構築と情報一元管理の仕組みの構築のために、4年前からANDPAD導入。特にリフォームは常時20〜30現場が動いている状態で、トイレの交換など作業者のみが現場に行くケースも多かったため、案件の進捗状況を正確に把握するためにデジタルの活用が必至だった。

相羽氏: メンテナンスの予約は、往復ハガキでスケジューリングを行なっているので、手間がかかっているのが課題。今後はオンラインでできる仕組みづくりもしていきたいです。住宅履歴なども含めて個別に動いているので、コミュニケーションツール、クラウドの保管ツール、履歴ツールなどを一元管理できたら便利だと思っていますが、そのなかにメンテナンスの予約ツールなども入るといいですね。

今は、プラットフォームや場づくりと言われる時代。外と内をつなぐ縁側的な役割が暮らしのなかで求められていますよね。デジタルは手段であるものの中間領域として繋ぐ要素としては優秀だと思っています。こうした潤滑油的なツールをたくさんもっている会社は強いですよね。世の中としても当然DXの流れは止まるものではないですから、当社も現段階では使いこなすので精一杯ですが、10年後は全てが当たり前になっていると思うので、それを想定して自分たちの手足となるようにしていきたい。

ANDPADに関しては、率直に導入してよかったなと思っていて、ANDPADを使うのが当たり前の日常になりつつあります。そういう当たり前がたくさん増えていったらいいなと。当たり前にするのは大変なことですが、DXは意識的ではなくてもいつの間にか日常になっている要素があると思っています。ANDPADなど業界外の人が携わることで固定概念を変えてくれることを期待しています。ANDPADがいろんなことを当たり前にして、日常化してくれるといいなと思っています。



10年後の目指すべき企業像とは

最後に、相羽氏がこれから10年で目指している企業像について伺った。

相羽氏: 今後も「家守り会」のような管理ビジネスは大事にしていきたいですね。当社は遊具の管理や行政建物の管理メンテナンスなども含めて、公園管理もやっていますが、公園の近くを要望されるお客様も多いので、住宅管理を含めてやっていくことで成長していきたいと考えています。

社長になってから約10年は、業界に対する貢献と地元への影響力強化のために多角化に注力してきました。これからの10年は、これらをよりブラッシュアップしてやれることの質を上げていきたい。あくまで組織を大きくしたいわけではなく、会社全体を含めて人をつくっていかなければならないと感じています。

そして、10年後には自分も含めて今の幹部は60歳目前。いつ辞めても会社がちゃんと回るようにANDPADを含めたデジタルツールと仕組み化によって、次の50年を担う社員に向けて事業を継承していきたいと考えています。それが、掲げたテーマの2つ目である、『これからの10年で、100年続く会社となるための人と仕事をつくります。』ということ。50年間続けていても何の資源にも資産にもなっていない会社にはなりたくないので、第三者含めて「この会社を引き継ぎたい!」と思っていただけるように、会社として人やモノを資源化・資産化していきたいです。

* * *

「何を作るか」ではなく「誰が作るか」という時代となり、職人がいつまでも腕を震える世界を実現するために、社員大工の育成や年配の職人のネクストキャリア形成に取り組む相羽氏。モノづくりの本質を追求しているからこそ、職人へのリスペクトに繋がっているのではないだろうか。同社が、木のプロフェッショナルとしての職人のさまざまな働き方を実現して活躍の場を広げていくことで、職人としての資産価値が向上するだけでなく、その先にいるお客様へと波及し、繋がる人すべての暮らしを豊かにしていくだろう。これからも、常に前提を疑い、業界に新風を吹き込む同社の取り組みに注目していきたい。

相羽建設株式会社
URLhttps://aibaeco.co.jp
代表者代表取締役 相羽健太郎
創業1971年1月
所在地〒189-0014 東京都東村山市本町2-22-11
取材・編集:平賀豊麻
ライター:金井さとこ
デザイン:安里和幸、佐藤茜
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