不動産仲介・流通事業からはじまり、「人に感動を、時代と世代を超える価値を。」というメッセージのもと、国内外に幅広く事業領域を拡大してきたリストグループ。不動産取引全般に精通し、さまざまな不動産の需要にワンストップで対応する「スペシャリスト」として、あらゆるニーズに応え続けている。2016年にホールディングス経営に移行し、営業・設計部門はリストホームズ株式会社、建設部門はリストコンストラクション株式会社と分社化。これにより収益構造が明確化し、建設部門の人件費、販管費の膨張した状態が浮き彫りになり、生産性改善を会社として取り組むことに。そして、同社はANDPADを活用した運用ルールの徹底により生産性を向上させ、販管費削減を実現した。今回は取組みの中核を担う3名にインタビューを実施。前編では、事業採算の課題を受けて、どのようにANDPADを活用して「現場に行かない」運用を徹底したのかについて迫る。
※令和4年1月1日をもってリストコンストラクション株式会社はグループ会社であるリストホームズ株式会社と合併し、リストホームズ株式会社となりました。
小林剛氏
リストコンストラクション株式会社 建設事業部 課長
店舗の現場監督を1年間経験した後、2001年、リスト株式会社に中途入社。戸建ての現場監督に従事する。2008年、当時購買部がなく監督によって収益性にばらつきがあったことを問題提起したことで積算課が立ち上げられ、そのメンバーに抜擢。2017年より現職。
砂川郁夫氏
リストホームズ株式会社 営業部 部長
不動産賃貸の仲介業を12年間、デベロッパーを3年間経験した後、地元である神奈川県大和市で事業用不動産売買のコンサルティング会社を経営。49歳の時に転職を決意し、代表取締役・菅野氏との出会いをきっかけに2018年2月に同社へ中途入社。現在に至る。
INDEX
- 分社化により、事業採算の課題が浮き彫りに
- ANDPADを活用し、「現場に行かない」運用を徹底
- 「現場に行かない」運用徹底により、大幅な赤字削減に
- 現場に行かないことで、職人にもチャットによるコミュニケーションが浸透
分社化により、事業採算の課題が浮き彫りに
バブル崩壊直後の1991年に、神奈川県横浜市にて仲介・流通事業をスタートさせたリスト株式会社。オリジナルブランドの高品質な戸建住宅の分譲やマンション、タウン開発事業など事業領域を拡張し続け、数多くの実績と独自のノウハウを蓄積してきた。創業以来、地域密着の姿勢は変わらず、市場変化に対応しながらアジアパシフィックへと事業を拡大し、よりグローバルな展開を行っている。
2016年にホールディングス経営に移行し、建設部門はリストコンストラクション株式会社に分社化。翌年、設計部門としてリストホームズ株式会社が設立し、製販分離体制となった。元々は各部門の収益構造が明確に分かれていなかったが、分社化によって独立採算となったことで建設事業だけでは収益が上がらない構造であることが浮き彫りに。赤字を埋めるために、不動産やリノベーションといった派生事業を手掛けるようになると、さらに赤字を積み増すような状態に陥った。
1953年に大手銀行が建設したビルを取得し、リノベーションしたリスト関内ビルの1階スペース。
小林氏: 従来から積算課で進めていた一括購買の取組みによって、原価については改善を図ることができていたので、販管費の改善が課題であることは明白でした。当時の現場監督はやることが決まっていなくても「とにかく現場」、週5日現場に行くのが当たり前で、車での移動時間も長く、非効率的な状態でした。そこで、デジタル化によって生産性を向上させようと、2017年ANDPADを導入したのですが、現場監督や職人からの反発が非常に強かったですね。生産性どうこうではなく、現場に足を運んで職人との関係性を築くという昔ながらのやり方をしている人ばかりだったので、「現場に行かずに何がわかるんだ!」と言われてしまい、運用が浸透しませんでした。
リストコンストラクション株式会社 建設事業部 課長 小林剛氏
ANDPADを活用し、「現場に行かない」運用を徹底
現場主義が抜けずに、デジタルによる現場管理が足踏み状態だった2019年7月、それまでリスト株式会社本社管理部門に在籍していた石井氏が同社を兼務し、経営改善に取り組むことになった。
石井氏: 事業部採算を明らかにするために分社化したのですが、結果的にリストホームズばかりが注目され、建設部門である当社には注目が集まらないという状況でしたし、このままでは赤字体質の会社になってしまうという危機感がありました。収益を改善させるためには、一旦他事業は手放して建設業だけに絞り込もうと決めました。そして、生産性向上のためにはデジタル化が必須であると考え、ANDPADを活用した「現場に行かない」現場管理を徹底することにしました。
リストコンストラクション株式会社 常務取締役 石井唯光氏
現場管理を従来のやり方から「現場に行かない」運用へと舵を切ることとなり、小林氏は長年の現場監督での経験を活かし、監督業務のタスクの棚卸しを行なった。そして、「現場でやらなければいけないこと」と「会社でできること」に細分化し、マニュアルを作成した。
小林氏: もちろん現場の職人からは反発の声はありましたが、一度、現場監督と職人の従来のやり方でのコミュニケーションを断ち切りました。現場に行かないことで何か問題が起こっても仕方がないと腹を括り、一旦全ての問題を顕在化させようと思いました。以前からANDPADを導入していたにも関わらず運用が浸透していなかったので、このくらいやらないと変われないと、会社として強い意志をもって断行しました。
従来の現場主義に馴染む人材を採用していたこともあり、退職者が出ることは覚悟の上で実行に踏み切ったものの、厳しい運用ルールに対して社内外からの反発は予想以上に強く、去っていく社員も多くいたという。「現場に行かない」運用の徹底は、大きな痛みを伴うものだった。
デジタルを活用したコミュニケーションを図るようになると、現場の職人とスムーズなやりとりをするために図面の精度を上げる必要性が生じた。そこで、設計を担当するリストホームズと議論を重ね、現場からの声を吸い上げながら図面の記載項目をまとめたマニュアルも作成。
砂川氏: 従来の図面はそこまで精度が高いものではありませんでした。極端な話、設計図さえちゃんとしていれば、その通りにプラモデルを建てるようなものですから、設計図の精度については十分注意するように徹底しています。現状は分社化していて設計と施工、各業務における責任の所在は明確になっています。
リストホームズ株式会社 営業部 部長 砂川郁夫氏
「現場に行かない」運用徹底により、大幅な赤字削減に
会社としてリスクを負いながらも、ANDPADによる「現場に行かない」運用に踏み切ってから1年ほど経過すると、ANDPADがないと現場が回らないという状態まで浸透した。そして、生産性の向上を実現し、人員が大幅に減った体制でも棟数をキープしながら大幅な赤字の削減に成功。また、ANDPADを活用した工程管理になったことで、一つひとつの工程を突き詰めて監督業務の平準化ができ、工期短縮にも繋がっている。
現在、同社の監督業務は、工程管理全般を行うディレクターと、現場監督業務を行うフォアマンに分かれており、ディレクター業務については業界未経験でも業務を遂行できる属人性を排したオペレーションを構築することができた。
現場に行かないことで、職人にもチャットによるコミュニケーションが浸透
リスクを承知の上で、現場監督が「現場に行かない」ことで示し、ANDPADを介したコミュニケーションをとる土壌づくりを行ったことで、当初反発していた職人も、今ではデジタルによるコミュニケーションが定着し、なくてはならないツールになっているという。
小林氏: ANDPAD導入当初は、デジタルで図面が共有されるツールとしてしか考えていませんでした。現場に行かずにチャットでのコミュニケーションになることについては、「何でこんなことをやらなきゃいけないんだ」と現場から反発もありましたが、社員が「現場に行かない」運用を徹底し、現場ではチャットをやらなければならない状態をつくったことで、ここまで運用を浸透させることができました。
監督だけでなく職人向けにもマニュアルを作成して、3ヶ月毎に大工向けの勉強会を実施しています。他の講習は業種ごとに適宜開催して、ANDPADなどの運用変更の告知などのフォローを行うようにしています。
赤字経営の脱却を目指し、生産性向上のためにはデジタル化が必須であると考え、ANDPADを活用した「現場に行かない」運用を徹底した同社。監督業務や図面記載事項などのマニュアル作成を行い、デジタルによる運用をスムーズに行うための環境を整えた。会社としての強い意志をもって臨んだ施策は功を奏し、監督業務を行うディレクターやフォアマン、現場の職人にもANDPADによる運用が浸透したことで販管費の削減につながり、経営改善を実現させた。
後編では、「現場に行かない」運用にしたことで発生した課題とそれに対する打ち手と、次のフェーズで描く展望について伺う。
URL | https://list-c.co.jp |
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代表者 | 代表取締役 北見尚之、菅野浩 |
設立 | 1995年4月18日 |
所在地 | 〒231-0015 神奈川県横浜市中区尾上町4-47 リスト関内ビル |
URL | https://listhomes.jp/ |
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代表者 | 代表取締役 菅野 浩 |
設立 | 2017年4月12日 |
所在地 | 〒231-0015 神奈川県横浜市中区尾上町4-47 リスト関内ビ |