1984年の創業時からいち早く床暖房システムに着目し、銅板パネルを活用した低温水式床暖房や蓄熱式床暖房など高品質な床暖房システムを提供している株式会社タフ。快適で環境にもやさしい暮らしのために、住空間のエネルギーシステムインテグレート床暖房・太陽光発電・ふく射冷暖房など、豊富な実績で住空間の快適性をトータルサポートしている。
床暖房は隠蔽部施工だからこそ、圧力検査や施工時の写真保存・管理を徹底していたという。そんな文化が根付いている同社は、2022年にANDPADを導入。デジタル管理によってさらに品質向上に取り組んでいる。そこで、今回は同社専務取締役の小池誠さん、取締役 営業部長の藤田雅人さんにインタビューを実施。前編では同社の長年にわたる床暖房の取り組みや、ANDPAD導入に至るまでの課題について紹介する。
INDEX
早期から床暖房システムに着目し、時代に合わせて快適な環境を提供
今や住宅における導入も多い床暖房システムだが、同社は早期から着目し、1984年以来40年近く床暖房システムを提供し続けてきた、いわば床暖房システム普及におけるパイオニア的存在だ。時代の流れに即した提案を行い、現在は住宅のみならず病院施設や幼稚園などにも、幅広く快適な環境を提供している。
小池さん: 私が親会社である高橋物商に入社した時に、ちょうど床暖房システムを扱う住設部が立ち上がりました。社長の自宅に床暖房システムを導入し、その快適性を広めようというのがきっかけでした。当初は3名からスタートし、のちに私も携わるようになりました。
当時は工務店に床暖房システムを説明しても、「床の中にパイプを埋めてお湯を流すなんて、そんな恐ろしいことはできない」という反応が多かったです。
そこで、まずは富裕層の顧客をターゲットに、展示会に出店して床暖房を訴求していきました。その数年後からは設計事務所へのアプローチに切り替えていきました。床暖房システムを取り入れた住宅の竣工後の実例見学会をさせていただいて、実際の暖かさなどを伝え床暖房の良さを訴求していきました。
株式会社タフ 専務取締役 小池 誠氏
小池さん: 住宅の依頼があってはじめてわれわれの床暖房システムにも仕事が来ますから、設計事務所が受注できるためのサポートをわれわれとしてもしていきたい、と考えるようになりました。当時、たまたま知り合いで本をつくれる方がいて、そこからの繋がりで「床暖房システムを取り入れた住宅の実例集」を雑誌のかたちでつくったのです。設計事務所としても、自分たちの事例をアピールできるよい機会になり、実際に注文が入れば床暖房システムの依頼はわれわれに入ります。床暖房システムを取り入れた住宅という市場自体がまだ未発達の段階でしたから、市場をつくっていくために協力し合ったというような感覚ですね。雑誌が書店に並ぶようになり、次第に「床暖房システムならタフに頼む」という信頼をいただくことに繋がっていきました。
インターネットの普及に伴い雑誌の発行はなくなりましたが、過去の雑誌は図書館に寄贈しているので、今でも閲覧できるかもしれません。
こうして、地道に床暖房システムの普及を進めていくなかで、1995年を過ぎたあたりからガス会社が床暖房システム販売に本腰を入れ始めたことによって追い風となり、販売量全体が伸び始めた。当時は灯油価格がガスに比べて安価であったこともあり、同社は灯油式の床暖房システムで差別化を図り、件数を伸ばしていったという。
藤田さん: 私は設計事務所への営業を担当していますが、入社当時の2000年はちょうど設計事務所の先生と組んで仕事が広がっていった時期でした。次第に認知が広がり、2005年頃からは「設計事務所が言うならやってみよう」という工務店さんも増えてきて、徐々に設計事務所さんよりも工務店さんからお声がかかるように。そして、床暖房システム導入が当たり前になってくると、今度はゼネコンさんや設備会社さん、電気会社さんなどからお声がかかるようになっていきました。
株式会社タフ 取締役 営業部長 藤田雅人氏
こうして床暖房システムが普及したものの、2050年に向けたカーボンニュートラルの実現が掲げられたことを受けて、太陽光発電による電力創出・省エネルギー設備の導入・外皮の高断熱利用など、地球に優しい住まいであるZEH住宅が推奨されるようになった。住まい手やハウスメーカー、工務店の意識が電力の方に向きつつある潮流のなかで、いま、床暖房システムを採用することで得られるものとは何だろうか。
小池さん: エネルギー消費効率の面で床暖房システムが劣るのは事実かもしれません。しかし、床暖房システムには他には代えがたい「暖かさ」があります。特に脱衣所などヒートショックが起こりやすい場所とは非常に親和性が高く、実際、病院施設や老人福祉施設の床暖房施工実績は非常に多いですね。
自社と職人を守る意識から、圧力検査を徹底
早くから床暖房システムに着目して普及に努めてきた同社。隠蔽部分の施工であることから検査にも重きを置き、早期から徹底しているという。
藤田さん: 床暖房システムは、床下に温水パイプの配管を行うというもの。隠蔽部分の仕事をするからこそ、何か問題が生じてしまったときにもきちんと証明ができるよう、お互いにリスクヘッジが大事になります。トラブル発生時にもし写真を撮っていなかったら「あなたが悪いんじゃないか」と言われてしまうかもしれないですからね。
小池さん: 現場に入るのは当然われわれだけではなく、家づくりに関わるさまざまな職人さんが出入りします。温水パイプの施工後に上から床材が被せられますが、その過程で大工さんが誤ってパイプに釘を刺してしまうといった事故も発生します。そんなとき、隠蔽部だからという理由で、われわれの施工にミスがあったと原因にされてしまいがち。もちろん、なかには実際に原因になっていた場合もありますが、われわれ起因のものは実は少ないんです。しかし、その証拠を示すことができなければ「床暖房工事が原因だ」と決めつけられてしまう。そういう誤解を避けて無駄な時間を使わないために検査を徹底しています。温水パイプの施工後、上から床材が張られた後のできるだけ早い段階で圧力検査をしています。それで大丈夫であれば、大抵の場合は問題ありません。ただ、念には念をということで、最後のタイミングで床暖房の機械を設置する前に再度圧力検査を行っています。工事写真を撮影して証跡としてストックしておき、提出を求められたら検査結果を提出するようにしています。
「情報共有の効率化」と「顧客情報の管理」の課題から、ANDPADを導入
同社の組織体制は社員8名のうち営業管理が4名で、営工一貫体制をとっている。少数精鋭の組織体制であることから、床暖房システムの販売数が伸びていくにつれて管理が追いつかない状況に陥った。
藤田さん: 入社当時は会社全体で年間約180件の物件を取り扱っていましたが、今は約400件ほどに増えています。担当者同士が情報共有していく中で、見積りなどをフォーマット化していって効率化を図っていきました。
その一方で、一番大変だったのは職人さんへの打ち合わせ内容の共有や申し送り事項の伝達でした。
以前は一対一のコミュニケーションで伝えていましたが、件数が増えてくるとそれをするのもひと苦労。職人さんも忙しいので、毎回電話や、直接現場に足を運んで伝えるのもお互いにとって非効率になっていました。職人さんは経験を積んでいてノウハウそのものは分かっているので、一言二言の伝達事項と、決まったフォーマットがあれば物事はどんどん進むはずだと考えていました。
ちょうどその時にANDPADを知り、活用できるのではと思いました。
また、先述したように、カーボンニュートラルに向けた時代の流れも踏まえて、会社として床暖房以外の新しい分野での戦略も見据えていかなければならないと考えていた。
小池さん: これからは太陽光発電システムやその先にある蓄電池、V2Hなどの流れがくるだろうという見立てに対して、床暖房にとどまらずどのように動いていくか思考する時間を確保したかった。そのためには、今まで培ってきたものは素早く共有できるようにして、誰でも同じように認識できるような状態にすることが必要でした。
藤田さん: そして、ANDPADを活用しようと思った最大の理由は履歴管理。ANDPADで案件情報を管理していくことによって、顧客情報として蓄積されるということでした。給湯器は早いと5〜6年くらいからエラーなどの修理対応、8〜15年で交換が必要になります。保証期間内であればメーカーのサービス担当者に修理依頼をしますが、10年以上経つと部品や給湯器の交換などはわれわれが対応します。お客様からお問い合わせがあると、従来は営業担当や職人の頭の中でストックしていた情報をもとに当時の図面を引っ張ってきて確認するという属人的なやり方でした。そのため、その情報が合っているかどうかの確証がないことから、保険をかけて費用を上乗せした状態でお客様に提案をしなければならず、見積り金額が高くなるので結果的に選ばれないということも。
ANDPADがあればお客様から問い合わせを受けた時にすぐに過去の施工履歴に関する情報を検索できて、いつでも・誰でも図面や取り付けた品番などの工事の情報が把握できます。履歴情報をデジタルで蓄積していくことができれば正確な見積りが出せて競合優位性にもつながり、施工履歴の情報そのものが当社にとっての財産になると思い、ANDPADを採用しました。
それによって、「この会社(タフ)を選んだ住宅会社を選んで良かった」と、エンドユーザーの対応への安心感を育むことで、元請として当社を選んでくださったお取引先さんへの貢献にもつながるはずです。
早期から床暖房システムに着目し、設計事務所と協力しながら「暖かさ」の魅力を伝えて販売数を伸ばしてきた同社。少数精鋭の組織体制であることから、販売数の増加に伴い履歴管理をはじめとしたさまざまな課題が浮き彫りになり、それらを解決するためにデジタル化に踏み切った。後編では、スムーズなANDPAD運用浸透が実現した理由、どのような業務改善が起こったのかについて深掘りしていく。
URL | https://www.tafu.co.jp |
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代表者 | 代表取締役 高橋 伸斉 |
創業 | 1984年4月 |
本社 | 〒452-0962 愛知県清須市春日江先18 |