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シーリングのプロとして常に「顧客目線」でこだわりを貫く職人夫婦

〜前編〜ANDPAD AWARD2022「ベスト受発注請書請求賞」3位/受賞ユーザーインタビュー

目次

  1. レスポンスの早さとフットワークの軽さで取引先の信頼を得る
  2. シーリング工事に必要なのは、高い技術と強靭な体力
  3. 「お客様のために質の高い仕事をしたい」

ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーに対して贈呈する「ANDPAD AWARD ユーザー賞」。今回は、「ベスト受発注請書請求賞」で3位を受賞した不来方シール工業の原弘記さんと原博子さんの2人にお話を伺った。

不来方シール工業は夫婦2人で営むシーリング工事会社。岩手県盛岡市を拠点に、東北の住宅会社「株式会社北洲」の注文住宅の防水工事を主に請負っている。北洲の新築部門とリフォーム部門それぞれの仕事を請け、施工件数は1年間で新築が50~60棟、リフォームが70~100棟ほど。品質とスピードの両立にこだわり、自分たちが手がける工事にストイックに向き合っている。

今回のインタビュー内容は前後編に分けてお届け。前編は、ANDPADのトップユーザーであるお二人が、どのように仕事に向き合っているのか掘り下げて伺った。後編では、阿吽の呼吸でクオリティの高い仕事を進める原夫妻のANDPADの活用法について紹介している。

国も力を入れている「住宅ストック維持向上」に欠かすことができない防水工事、現場の職人のリアルな声をお届けする。

レスポンスの早さとフットワークの軽さで取引先の信頼を得る

──今の仕事を始められた経緯を教えてください。

原弘記さん(以下、弘記さん) 私は先代である父から不来方シール工業を継承しました。16歳からこの世界に飛び込み、30年以上シーリング工事に携わっていることになりますね。仕事は、父の背中を見ながら覚えていきました。現在は、父は引退し私と妻の2人で経営しています。

原博子さん(以下、博子さん): 私はもともと住宅関係の会社で事務などをしており、20年前の結婚を機にシーリング工事を携わるようになりました。私も夫と一緒に現場に出ています。

──ご夫婦で工事をされていて、いいことはどんなところですか?

弘記さん: どうでしょう…。お互い相手がどう動くか感覚的に分かっているので、会話せずとも阿吽の呼吸で連携が取れるのは、いいことかもしれません。当社は、妻と私の二人でシーリング工事を行っているのですが、他に職人を入れて今の施工のスピードを維持できるイメージは湧かないですね。

博子さん: 私は未経験でしたので、最初のうちは正直何もできませんでした。言葉も交わさずにパッと動けるようになったのは、10年くらい経ってからです。今振り返ると、東日本大震災が一つのターニングポイントだったと思います。

その当時、私たちは仮設住宅の工事にも携わっていました。震災後、住む家を失って困っている被災者に向けてとにかく早く家を作らないといけない状況だったので、夫に確認する暇もないくらい忙しかったです。毎朝4時に起きて、休みなく仕事をしていましたね。大変でしたが、そこで自然と技術が身に付いていった気がします。

──現在不来方シール工業様が専属に近い形でお取引されている北洲様ですが、今回同社のANDPAD推進者である中川さんにもご同席いただいています。阿吽の呼吸で仕事をされている不来方シール工業様は、施工がとても早いそうですね。

中川さん: おっしゃる通りで、当社の物件において1件当たり半日で、すべてのシーリングを高品質に仕上げていただけるので、施工が早くて大変助かっています。それだけではなくレスポンスも早く、請求書のやり取りやチャットで送った内容確認、日程の相談といったことにもすぐお返事をいただけます。

あと、原さん達はとにかくフットワークが軽いです。「工程がずれました」と伝えた際にも、不来方シール工業さんの場合はいつもすぐに調整していただける。難しい要望にも「北洲さんのためなら」と柔軟に対応していただけるので、本当に嬉しいことですが、当社の社員や北洲に対する愛も伝わってきます。

スピード、レスポンス、フットワークの軽さが本当に凄いなと感じており、大変お世話になっています。

DXカンパニー賞入賞企業である株式会社北洲(https://one.andpad.jp/magazine/7398/)ハウジング事業部仙台建設課課長の中川さんが、今回の取材に同席。中川さんは2015年4月新卒入社後、6年間宮城県仙台市と岩手県で現場監督として従事しており、その際に不来方シール工業とよく北洲の仕事をしていた。本社建設部に異動後、ANDPAD運用整備と活用の展開を行っている。

──不来方シール工業様が北洲様の施工をメインに取引されているのは、それはどういった理由からですか?

弘記さん: 先代からお付き合いがあり、そこからの流れを大切にしているというのが大きな理由です。他の会社さんからお話をいただくことはあるのですが、今の品質とスピードを落としたくないので、これ以上はなかなか仕事を増やせないんですよ。

博子さん: 北洲さんの家は別格だと個人的に思っています。何年経っても外観が色あせず立派で、施工レベルが高く、使っている材料もいい。現場監督が現場に来る頻度も、ハウスメーカーの中では多い方だと感じます。私たちもお客様のために質の高い仕事をしたいと常に思っていて、そこが北洲さんの家づくりと共感できる部分で長いお付き合いができたきっかけです。

──事業領域について教えてください。

弘記さん: 先代の時代は、主にゼネコン系のマンションや公共事業の防水工事を手掛けていました。その後、公共事業が頭打ちになってきた頃から住宅中心にシフトしています。現在、北洲さんの岩手県の物件は100%当社が施工しています。

新築の防水工事がメインですが、最近は事業の幅も広がっていてハウスクリーニングを行うこともあります。また北洲さんのリフォーム部門から依頼を受ける際は、外壁塗装を一括請負し、足場や塗装業者の手配を行うこともありますね。

 

シーリング工事に必要なのは、高い技術と強靭な体力

──ここからは、お二人のお仕事を深掘っていきたいと思います。防水工事をお二人で行われているとのことですが、役割分担はどうしていますか?

弘記さん: 私が主にコーキングガン打ちを行い、妻はコーキングの前工程と後工程をやってくれています。流れをお話しすると、まず2人で養生テープを貼り、その後に妻が「プライマー」という塗料を使い下塗り作業をどんどん行っていき、私がそこにコーキングガンを打ってシーリング材を充填させていきます。充填が終わった後、妻がシーリング材をヘラ仕上げして、養生テープをすぐ剥がしていきます。

(左)コーキング前に行う養生作業は、テープの貼り方ひとつで全体の仕上がりに影響するため、プロならではの技術が必要。(右)「コーキングガン打ち」の様子。コーキング材にはシリコン系、ウレタン系などいくつか種類があり、充てんには専門的な知識が求められる。最後はヘラ仕上げして養生テープを剥がしていく。コーキングの仕上がりが悪いと防水効果が落ちたり、外壁塗装で色ムラが出たりするため、コーキングガンを打つスピードを調整しながら、コーキング剤を一定量出し続けるといった技術が必要となる。原ご夫妻はそういった部分にまでこだわりを持ち、難しいことも当たり前にこなしている。

 

──お話ありがとうございます。この工事はどんなところが大変ですか?

弘記さん: 一般的によく言われるのが、腕の疲労ですね。ひたすらコーキングガンを打っていくので、同じ仕事をしている方で腱鞘炎になっている人も多いと聞きます

博子さん: 職人さんのなかには、歯を悪くする人もいますね。奥歯も前歯も。

──歯もですか。それはなぜでしょうか?

弘記さん: 岩手県は雪国で、特に冬場はコーキング材が固まりやすいので、コーキングガンを打つのに思いっきり歯を食いしばって手にぐっと力を入れるからです。私も医者に「マウスピースを付けるように」と言われましたが、付けると力が入りにくくて仕事がやりづらいんですよね。

博子さん: 夫は電動のコーキングガンを試したこともありましたが、足場の上での作業もありますから、電源のコードをいちいち気にして作業しないといけなく、効率が落ちるのでやめました。とてもじゃないけど、これだと仕事をやってられないなと。


──
非常にタフに働いているんですね。基本は1日1現場ですか? 1日の全体の流れはどんな感じでしょうか?

博子さん: 建物の形状や仕様にもよりますがシーリング工事はだいたい半日あれば終わるので、1日2件現場を回ることもあります。現場には朝8時に着いて作業しているため、自宅から遠い沿岸の家に行く場合は朝5時には起きて準備しています。

基本的に現場に行ったら日を跨がずにその日中に施工を終わらせるようにしているため、午後に行った現場は多少暗くなっても作業していますね。冬場は午後4時でもすでに暗いので、あと30分で作業が終わるといった場合は電気をつけて作業することもあります。

弘記さん: 私たちの工事の天敵は雨です。雨が振ったら養生テープがくっつかず仕事にならないので、作業はストップせざるを得ないですね。ただし、1時間でも雨が止めば、その間にドライヤーを使ったりしながら乾かして作業することもあります。結局、防水工事が遅れたら後工程にも影響があるので、なるべく遅延しないように心掛けています。

 

「お客様のために質の高い仕事をしたい」

──体力がいる仕事で、気候に左右される部分もあり大変だと思いますが、どこにやりがいを感じていますか?

弘記さん: 今まではずっと、自分が納得のいく仕事を行うこと、それ自体がやりがいだったと思います。

ただ、ここ数年、リフォーム物件の防水工事もするようになり、コロナ禍でお客様が在宅中に作業することも増えて、直接話す機会があり、少し変わりました。施工先のお客様から感謝の言葉を伝えられると、やっぱり嬉しいものです。その時は「あぁ、この仕事をやっていてよかったな」と感じますね。

──改めて仕事をする上でのモットーを教えていただけますか?

弘記さん: 「お客様のために質の高い仕事をする」ということですかね。工事を行うときは、家を建てる側の立場になり「自分の家だったら、この出来栄えをどう感じるか。それで自分は納得できて職人にお金が払えるのか」と自問自答しながらやっています。私たちはお金にはこだわっていません。いい仕事をして、いい評価をしてもらって、それによってお客様も北洲さんもいい思いをする。そういう想いでやっています。

中川さん: 不来方シール工業さんはお客様に対する思いが強いです。「こうしたらお客様が困るよね」といった話を本当によくされていますその想いの強さが、質の高い仕事に繋がっているのだろうなと思います。施工に関する知識だけでなく、そういった仕事の姿勢も含めて、不来方シール工業さんには「育てていただいている」という想いが強いですね。

弘記さん: そう言ってもらえると嬉しいですね。ただ、私たちは「自分たちのやれる範囲でなら、どんなことでも惜しみなくするよ!」って言っているだけなんですけどね。

博子さん: 最近は現場監督さんがみんな若いので、息子や娘のような感覚も少しあります。自分たちにも息子と娘がいるので、どうしても親心が湧いてきますね(笑)。

──お話を伺っていて、お2人に本当のプロフェッショナル意識を感じます。そのお気持ちは仕事を始めたころから持たれていたのですか?

弘記さん: 先代と一緒に仕事をする中で自然に身に付いたのかな? いつ頃かと聞かれると難しいですね…。私は先代に褒められたことがありません。決して妥協をしない厳しい人でした。先代は自分が納得しなければ、お客様からお金をいただかないこともあったほど職人気質な人だったのです。そんな父と仕事をして「お客様のために品質は何よりも優先する」というのは、私の中ではいつしか当たり前の感覚になったのかと思います。

そういった仕事の姿勢について、何か特別に教えてもらったことはないですが、「いい仕事をして、いい対応をしていれば、ああやってお客様もいい顔するだろう?」と先代に言われた記憶がありますね。

博子さん: あとやっぱり、お客様に感謝されると「次も頑張らなきゃ」「もっと喜んで欲しい」と思いますね。シーリング工事は「これで満足」「これでOK」というゴールがありません。時代によって材料も変わっていくので、日々勉強です。

弘記さん: シーリング工事に携わった以上、私はこの仕事を変えるつもりはありませんし、このまま生涯現役で続けていきたいと思っています。仕事を通して得るものはお客様が満足して、笑顔になっていただくこと。それだけで、十分です。「きれいごとで言っているんだろう?」と思われるかもしれませんが、仕事のモチベーションは本当にお金ではないんですよね。


左から、株式会社北洲の中川さん、不来方シール工業の原博子さん、原弘記さん、3人にお話を伺った弊社コミュニティマネージャーの平賀。

施主ファーストの姿勢を貫き、何よりも品質に重きを置いている原ご夫妻。「住み継がれる価値のある『本物』の家」をブランドコンセプトに掲げる北洲が、建物の「防水性」と「耐久性」の重要な役割を担うシーリング工事を同社に発注している理由がよく分かる取材だった。後編では、そんな腕利きの職人がANDPADを現場でどう使っているかをご紹介。原さん達が今回受賞に至った経緯と、元請け側である住宅会社がどのような努力をしているか、その秘訣に迫った。

不来方シール工業
代表者原弘記
所在地岩手県盛岡市乙部30地割98-61
取材・編集:平賀豊麻
編集:市川貴啓、原澤香織
執筆:大根田康介
デザイン:森山人美、安里和幸
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