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ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーを称賛するANDPAD AWARDのユーザー部門。今回は、「ベスト受発注ユーザー賞-発注-」で全国第3位を受賞された、株式会社 Lib Work 建築部 工程コスト管理課 係長の永野五月さんにお話を伺った。
熊本県山鹿市に本社を構える株式会社Lib Workは、九州や関東を中心に戸建て住宅の設計・施工・販売を手がけるハウスメーカーである。年間受注棟数は600棟に上り、Webマーケティングを主軸とした集客戦略、YouTubeなどのメディア展開、さらには有名ブランドとの共同開発による戸建て商品のIPライセンス販売など、革新的なビジネスモデルを次々と確立。最新技術を駆使し、成長を続けている。「ANDPAD AWARD 2023」DXカンパニー部門ではカテゴリ大賞、ONE賞を受賞するなど、建設DXの推進にも注力している。
同社の特徴のひとつとして、施工管理業務を3つの課に分業していることが挙げられる。「ANDPAD推進プロジェクト」といった独自の取り組みを通じてシステムを定着させ、効率的な分業体制を実現している。
今回、「ベスト受発注ユーザー賞 -発注-」で全国第3位を受賞したのは、建築部 工程コスト管理課 係長の永野五月さん。同社へ新卒入社しコーディネーターを経験した後、4年間の産休育休を経て復職。復職を機にANDPADに触れ、使いこなすことで、家庭と仕事を両立させる働き方を実現している。
本記事では、永野さんのANDPAD活用術、そして働きやすさと働きがいを両立させる同社の企業風土に迫る。建設業においてライフステージに合わせた柔軟な働き方を模索する方、そしてデジタルツールの導入で働き方改革を目指す企業のDX推進者にとって、大きなヒントとなるだろう。
革新的な取り組みを続けるLib Workがテクノロジーで拓く住まいづくり
──ANDPAD AWARD 2025「ベスト受発注ユーザー賞 – 発注 -」3位の受賞、おめでとうございます! 昨年の「DXカンパニー部門」での受賞に続き、ANDPADを日々ご活用くださっていることを嬉しく思います。まずは貴社の事業内容について、改めてお聞かせください。
永野さん: 当社は1997年に設立したハウスメーカーです。「サステナブル&テクノロジーで住まいにイノベーションを起こす」をミッションとしており、熊本を拠点に、インターネットやVRを活用した戸建てや住宅、不動産販売を手がけています。現在は、熊本県、千葉県、神奈川県、福岡県、佐賀県、大分県を対象に事業を展開しています。
──永野さんが勤務されている「Lib Work Lab(リブワークラボ)」についても、どういったオフィスなのか教えていただけますでしょうか。
永野さん: 廃校になった山鹿市立山内小学校の跡地を活用して、3階建ての校舎をフルリノベーションしたオフィスなんです。2023年7月に開所し、第二の本社オフィスとして使用しています。ラボでは3Dプリンターハウスの研究開発にも取り組んでいて、敷地内には3Dプリンター住宅のモデルハウスも展示しています。
──貴社は営業・設計・コーディネーター課・工程コスト管理課・工事管理課・アフター管理・経理と、建築の流れに沿った部門を設置し、分業体制を整えられていることも特徴かと思います。
永野さん: 社員の負担軽減と、各課の業務の質を高めることを目的に、分業制を採用しています。もともとは、一人のコーディネーターがお客様との仕様決めから現場管理まで、すべてをトータルで担当していたんです。そのため、土日はお客様対応、平日は現場訪問に追われていました。
私が現在所属している「工程コスト管理課」は、分業化を機に設置された課です。コーディネーターの業務が、お客様対応や仕様決めを行う「コーディネーター課」と現場管理や品質管理を行う「工事管理課」に分かれた後、さらに原価管理や工程管理を担う課を設けようと「工程コスト管理課」が作られました。ANDPADで情報共有をしながら、各課と連携しながら業務を進めています。分業化によって、それぞれの仕事に専念できるようになったと感じますね。
産休・育休を経てキャリアチェンジ。女性が多く活躍する工程コスト管理課
──改めて、永野さんのご経歴についても教えていただけますでしょうか。
永野さん: 大学を卒業後、2016年に新卒で入社しました。大学は商学部だったので建築について学んだわけではないのですが、就職活動で当社の説明会に行った際、社員の方々の人柄と楽しそうな雰囲気が印象的で。「いい雰囲気の会社だな」と思って、入社を決めました。
入社後5年目までは、コーディネーター課でお客様対応から現場管理までを行っていました。その後は4年間の産前産後休業・育児休業を経て、平日出勤・土日休みの工程コスト管理課に異動しました。

株式会社 Lib Work 建築部 工程コスト管理課 係長 永野 五月さん
──工程コスト管理課では、原価管理や工程管理といった業務を担っているとおっしゃっていましたが、永野さんはどういった業務を担当されているのでしょうか。
永野さん: 工程コスト管理課では、積算・見積もり、実行予算の作成、協力会社さんへの発注といったコストに関わる業務と、協力会社さんの手配や工程表の変更といった工程管理業務を担っています。私は2024年の1年間は着工前の発注を担当していましたが、今年からは棟上げ以降の工程組みを担当しています。
──同課には何名の方が所属されているのでしょうか。
永野さん: 現在は24名が所属していて、そのうち23名が女性で1名が男性です。勤務地でいうと熊本のオフィスに勤務している社員がほとんどなのですが、他県に住みながらフルリモートで勤務している社員も3名います。
工程コスト管理課は土日休みということもあり、産休・育休を経て同課へ異動した社員が私を含め2名います。学校や保育園が休みである土日に合わせて休むことができるので、子育てをしている世代にとっては働きやすい環境だと感じますね。

工程コスト管理課の執務スペース。リモート勤務の社員は常時Webミーティングをつなぎ、モニターで互いの顔が見られるような環境を作っている。
ペーパーレスと情報共有で、煩雑な事務作業と会議の日程調整が効率化
──永野さんは分業化前にコーディネーターとして働かれていた経験もお持ちかと思います。当時のコーディネーターのお仕事にはどのような課題があったのか、お聞かせいただけますでしょうか。
永野さん: コーディネーターは一人で現場を見ながらお客様と打ち合わせを行い、発注業務も行わなければいけませんでした。当初は熊本県内のみを商圏としていましたが、事業が拡大するにつれて商圏が県外へ広がり、徐々に忙しくなって。現場訪問回数も多いため、事務作業が負担になっていました。
実は、ANDPADを導入する以前にも現場管理システムを使っていました。ただそのシステムに受発注機能がなかったことや、協力会社さんの中でもシステムを利用してくださる方とそうでない方がいたことから、結局電話をして状況を確認する必要があったんです。
──分業化体制の構築とあわせてANDPADの運用浸透が進んだことで、業務にどのような変化がありましたか? 特に発注業務において変化を感じたことがあれば教えていただけますでしょうか。
永野さん: ANDPADの導入前後を比較すると雲泥の差です。まず、注文書を郵送したりFAXを送ったりする手間がなくなりました。これまでは協力会社さんへ注文書を送ったか送っていないかが課内で共有されておらず、メンバーに確認することもありました。確認する側にとっても、確認される側にとっても、気持ちのいいコミュニケーションではないですよね。それが、ANDPADを見れば書類を送ったかどうかが確認できるため、双方に負担のかかる確認をする必要もなくなりました。ANDPAD受発注上で [請負ボタン] が押されたかどうかで協力会社さんが注文書を確認していることが分かるため安心です。
──社内での打ち合わせや情報共有などについても、効率化されたと感じていらっしゃることがあれば教えていただけますでしょうか。
永野さん: 対面で会議を行う必要がなくなったことが大きな変化です。当社では物件ごとに各課の課長・次長と予算会議を実施しており、協力会社さんへの金額交渉が可能か、内容に間違いがないかなど、会議を経てから発注をしています。以前は対面で資料を見ながら会議を実施していたのですが、お客様対応の合間で会議の日時を調整する必要がある上、大きい物件になると会議に1時間以上かかることも……。そのため、会議のスケジュール調整に時間がかかっていました。
それが今では、オフィスにいなくてもANDPADを通じて図面や資料を確認することができるので、対面でなくても会議を行うことができるようになりました。会議の参加者が県外に出張していたとしてもオンラインで会議を行うことができて、とても助かっています。
──以前の取材で、工程コスト管理課はANDPAD受発注の導入後、より多くの業務も担当できるようになったと伺っています。
永野さん: そうですね。例えば検収作業は、以前までは経理の方が担当していた業務です。経理の方は現場に出ているわけではないのに、納品が完了しているかどうかを確認して検収されていたのかと思うと、大変だっただろうなと。今はANDPADを使うことで、経理を挟まずに、発注した自分たちで検収まで対応できるようになりました。
検収作業を自分たちで行うようになったことで、協力会社さんごとの対応状況が可視化されたことも変化の一つですね。請求へのご対応が早い会社さんや、事務作業を迅速に進めてくださる会社さんが分かり、その後の発注先を検討する際の参考にもなっています。
社員を大切にする社風とANDPADの導入が叶えた、プライベートと仕事を両立する柔軟な働き方
──永野さんが4年の休業を経て貴社への復職を決められたのには、どういった理由があったのでしょうか。
永野さん: コーディネーターとして働くなか、建築が好き、という思いがあったので復職を決めました。休業に入る前、社長や常務に「復帰する頃には、もう大変な思いをすることがないようにしとくけん」と言われていたのですが、戻ってきたら本当にその通りになっていて驚きましたね。
──上層部の方々の社員を思う気持ちが、貴社の働き方改革を推進しているのだと改めて感じました。こうした社風が根付いているからこそ、業務効率化と働きやすい環境の整備が進んだのかもしれませんね。
永野さん: 恵まれた環境だと感じています。「もっと良くしよう」「無駄があるなら改善しよう」という姿勢が社内に浸透しているため、経営層も社員の意見を大切にしてくれますし、若手社員の意見も積極的に取り入れてもらえます。そのため、復職に関しても不安を感じることはありませんでした。自分の意見を聞いてもらえるという安心感が大きかったです。
社長や常務は「家族を大事にしなさい」「家庭を優先しなさい」と言ってくださるため、会社に遠慮することなく、家族の都合で休みをいただいたり、リモートワークをしたりすることができています。嬉しいですし、ありがたいですね。
──リモートワークを取り入れたり、遠方からのフルリモート勤務が可能になったというのは、大きな変化のひとつですよね。
永野さん: 柔軟にリモートワークができているのは、 ANDPADがあるからだと思っています。オフィスにいなくても現場の状況や発注の状況が確認できるようになって、働き方が変わりました。
──分業化とANDPADの運用浸透によって働き方が変わったことで、休日の使い方や日々の生活にどのような変化がありましたか?
永野さん: 分業化前にコーディネーターとして働いていた頃は、夜遅くまで残業したり、顧客対応がない休日に事務作業を詰め込んだりしていました。今でも残業をすることはありますが、休日はしっかりと休むことができています。ANDPADを導入したことで休日に働いていた時間がまるっと削減されて、快適な生活が送れています。
──ご自身のために休日の時間を使えるようになったのですね。現在、永野さんはフルタイムで働かれているのでしょうか。
永野さん: 9時から16時30分までの時短勤務で働いています。工程コスト管理課には時短勤務の社員が数名おり、お子さんがいる方は遅くとも17時頃には帰っていますね。
──Lib Work Labにはキッズスペースや授乳室も確保されていると伺いました。お子さんを連れて出勤される方もいらっしゃいますか?
永野さん: はい、私も祝日の出勤日などには子どもをオフィスへ連れてきています。他のメンバーも子どもを連れてくるため、社員の子ども同士で遊んでいることも。社長や常務も、オフィスで子どもたちを見かけても「お、来たんだね」と慣れた反応をされていらっしゃいます(笑)。
前編では、同社が推進する分業体制の背景、そして永野さんのキャリアと働き方の変遷に焦点を当てた。かつての多忙な働き方からANDPADの導入によって業務効率化を実現し、働きやすさとやりがいを両立。そしてそれを可能にした背景には、改善を続ける同社の企業風土と、経営層の社員を大切にする考え方があった。
後編では、ANDPAD受発注のトップユーザーである永野さんがどのようにANDPADを活用し、日々の業務を最適化しているのか、その具体的な活用術と、同社の業務設計について詳しく迫る。
URL | https://www.libwork.co.jp/ |
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代表者 | 瀬口 力 |
創業 | 1997年8月 |
本社 | 熊本県山鹿市鍋田178-1 |