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宮城県仙台市にある「クラシタス株式会社」は、戸建住宅やマンションのリフォーム・リノベーションを事業の主軸とし、社寺の新築や改修工事、さらには不動産事業もカバーする建設会社です。以前より業務効率化を意識した経営を行い、その一連の流れから現場管理の非効率さと属人化を解消しようと施工管理アプリ「ANDPAD」の導入を決定。社内スタッフだけでなく外部の協力業者にもANDPADを導入した結果、以前は電話やFAXを用いた伝達が主だった同社は情報の一元管理を実現。紙の削減だけでなくコミュニケーションミスが減少し、さらには協力業者へのオンライン受発注を実現しました。その導入に至る経緯だけでなく、導入後の課題に至るまで、ANDPADの採用を決定した庄子氏と現場を担当する佐藤氏にお話をうかがいました。
給与ではなく“感謝料” お客様への感謝こそクラシタスが最も大切と考えること
当社の前身は1990年1月、宮城県仙台市に設立された「株式会社東北カナメ」です。当初は屋根工事を主に行っていましたが、社寺の建築や改修を請け負う高度な技術力、地域に密着して施工業務を行ってきた信頼度の高さなどが相まって総合リフォーム工事へと事業領域を拡大する事が出来ました。2009年12月には宮城県におけるリフォーム実績No.1の会社に成長する事ができ、その後、2015年 8月に「クラシタス株式会社」へと社名を変更して現在に至ります。
クラシタス という社名には、「お客様の快適で幸せな暮らし(クラシ)にお応えできる(タス+)企業であり続ける」という意味が込められています。 お客様にそのような価値が提供できるよう、当社は4つの企業理念を掲げています。
・クラシタスはお客様の都合で働きます。
・クラシタスは私たち一人一人が経営者です。
・クラシタスは私たち全員の成長と繁栄の為にあります。
・クラシタスは社業を通し社会に貢献します。
顧客第一を理念に掲げる企業は多いと思いますが、当社はその理念を徹底していると考えています。まず「給与」という言葉は使いません。「お客様からの感謝料である」という事で、給与でも賞与でもなく「感謝料」としています。今は防犯上の面からも振込む形に変わってはいますが、以前はその感謝料(給与)は銀行振込みではなく、「お客様からの感謝料」と印刷された封筒に入れられ、スタッフに現金で支給されていました。 お客様からの感謝の重みと、お客様から感謝される仕事を行えているかということを実感してほしいという先代の社長の考えからです。
「給料は誰から貰っている?」と聞くと、「会社から貰っている」あるいは「社長から貰っている」といった返答をする社員がいる会社も少なくないのではないでしょうか。当社の社員に同じ質問をすると、間違いなく全員が「お客様から頂戴している」と答えます。お客様からいただいたお金で自分たちの事業、ひいては各社員の生活が成り立っているという意識は新人が入社する段階から徹底しており、こうした価値観が当社の社風になっています。
執行役員 経営企画室 室長 庄子 和裕 氏
実際に使う社員や社外のパートナーのことを考え 導入時のサポート体制を最優先に考慮
2018年から施工管理アプリの「ANDPAD」を導入しています。導入以前の現場や工程の管理は、電話やFAXを使ったやり取りが中心で、一部でメールを使っていた程度でした。
当時、2つの大きな課題がありました。ひとつはお客様からのお困り事など、問題が発生した時の対応です。今どんな問題が起きているのか?という情報が現場から社内の関係者に伝わらずに会社としての対応が遅れるといったケースがあり、クレームも含めた「業務の属人化解決」が求められていました。
もうひとつは、職人不足をどうやって解消するかということです。近年は職人の数が足りず、各現場で取り合いのようになっているほどです。そんな状況下でありながら、どの現場で何人の職人が働いているのか?といった情報はそれぞれの現場レベルでしか把握できていませんでした。職人に効率よく動いてもらい生産性を上げるためには、会社全体の施工状況を一元で管理する必要がありました。
こうした状況に限らず、以前より経営全般の効率化に対して強い問題意識をもっていたのが弊社代表取締役社長の廣中です。廣中からITの活用で現場の進行管理を一元化できないか?といった話もあり、私の方で複数のシステムを検討しました。当初、ANDPADではなく他社のシステムを導入しようと決め、そのシステムの担当からプレゼンを受けたのですが、正直、操作方法が複雑で覚えるには相当、時間を要すると感じた点や、導入後、職人からの問い合わせ窓口は全て当社だという点もあり、これでは社内外にスムーズに普及・浸透する事ができるか不安になりました。
さらには、よくよく営業担当に話を聞いてみると、導入時のサポートは1回で終了とのこと。いっそう不安が大きくなったため、ほぼ決定していたシステム導入を再検討する事とし、以前、建築系の新聞で目にしていたANDPADを運営する株式会社オクトにコンタクトをとりました。
2つのシステムの操作を比較してみると、ANDPADはマニュアル等なくとも直感的に操作でき、断然使いやすい。又、導入後も非常に安心できる継続フォローの体制も確認出来、「導入ではなく浸透するまで任せて下さい」と担当の方からお話があったことが大きな決め手となり、これであれば導入の目的である効率化と全員が「便利だ!」と思って貰えると確信し、ANDPAD導入を決断しました。
何か新しい事をはじめるとき、全員が両手をあげて賛成するという事はなく、反対や反論は必ずあります。そのような反対・反論を賛成に転換させるには、既存のやり方をなぜ変えるのかという根本を理解してもらうことが重要だと考えています。そういった想いから、新たなシステムを導入することで関係者にはどのようなメリットがあるのかを丁寧に説明しようと考えていました。
社外の協力を集めてANDPADの説明会を開催した際は、たくさんの反論が出され、多少は混乱するものと覚悟していましたが、予想に反して「絶対反対」といった意見は出ず、「まず、スマホを買わなくちゃいけない」といった声があがる程度でした。
当然ながら既にスマホを使っていた職人さんもいて「昔はスマホを使えなかったけど、今はLINEで孫とやり取りできるようになった」といった具体的な話をしてくれた事もあり、スマホは仕事だけでなくプライベートでも役に立つ機器であるという認識が一気に広がった事も助けになったと思います。その流れから、ANDPADのメリットは何か?という話を説明することができたため、導入は思った以上にスムーズに進んだ気がします。
施工品質管理担当 佐藤 誠 氏
チャットとオンライン受発注機能が軸となり 業務効率化と経費の削減を実現
ANDPADには多くの便利な機能がありますが、何より有効なのはチャット機能です。大きな施工現場では職人を含めて多くの人が仕事に携わっていますが、チャットに1回情報を載せるだけで全てのメンバーと情報を共有できます。
大事な要件は電話で伝える事もありますが、FAXはもうほとんど使っていません。そのため、メンバーにはデータ変更などがあった場合は忘れずにチャットに載せてくださいと指導しています。チャットを徹底的に活用することで、生産性をさらに向上できると期待しています。
もうひとつの重要な機能はオンライン受発注機能です。FAXで仕事の受発注はできないので、協力会社とは「注文書・請書」という形で封書によりやり取りをしていました。しかし、取扱う物件の数が増えれば増えるほど使用する印紙や切手等の費用だけではなく双方の事務作業も増えてしまいます。また、中にはわざわざ請書を持参される協力会社もいました。
ANDPADのオンライン受発注機能を使えば、発注・請書・納品・請求という一連のやり取りをオンラインで実現できます。これにより事務作業の負担も大幅に軽減でき、費用の削減にもつながります。当社にも協力会社にも大きなメリットがあるため、この機能は導入当初から活用しています。
マンパワーに頼りきりにならずに実績を挙げられる会社へ
ANDPADを導入して漸く1年となります。あえて、というところもありますが、まだまだ多くの機能を使いこなせてはいないと思います。建設業界で働く職人は年配の方も多いため、撮影した画像をインタネット上にアップロードして掲載することは可能ですが、それ以上のルーティーンをお願いすると、抵抗感も増し、作業が止まってしまう可能性もあります。そのため、一度に多くの事を求めず、優先順位の高いものから確実に使っていくようにしています。
また、ANDPAD導入を契機としてITを進化させると、人と人とのつながりが希薄になり、チャット上のやり取りでは真意が伝わらないことも想定されます。例えば、チャットに「何やってる?」と書いた場合、単純に今の状況を尋ねられたようにも読めるし、あるいは叱責されているように受け取ることもできます。こうしたわずかな行き違いが大きな問題に発展する可能性も否定できません。
こういった課題を解消するひとつの方法として、LINEで使われているようなイラストのスタンプがANDPADに導入されると面白いかもしれませんね。職人の中には文章を作るのが苦手な人もいるので、「その件、了解しました!」という言葉の意味をひと目で説明できるスタンプ機能を付けてもらえると、作業がよりはかどると思います。
IT化の時代だからこそ、コミュニケーションを大切にする気運を育てていきたい。当社は社員同士の懇親する場を推奨しているため、マラソン大会への参加やスノーボード合宿等といったことを有志で行なうこともありますし、全社スポーツ大会や食事会なども活発に行われています。こうした場で相互理解を深めておけば、チャットの文言の意味合いを取り違えることもなくなり、業務効率化をいっそう推進できるのではないでしょうか。
その観点でいうと、ANDPADのカスタマーサポートの対応力の高さにはいつも感心しています。点数をつけるのであれば120点。他のサービスの場合、カスタマーセンターというと電話がつながらなくて当然といった感覚ですが、ANDPADの場合はすぐに電話がつながるので、何か困ったことが起こったら電話やメールで連絡すればいいという安心感につながっています。
また、カスタマーサポートとメールでやり取りするケースもあるのですが、文章だけでの説明は不十分とサポートのスタッフが判断した場合、こちらから連絡する前にフォローの電話をかけてきてくれます。こういったきめ細やかな対応は、当社もぜひ見習いたいところです。導入当時、職人に対するANDPAD説明会に来て頂いた若いサポートスタッフの方も、分かり易く丁寧に説明され、あの笑顔と雰囲気では職人からも不満の声など上がりませんね。
当社は、現在115名の社員がいますが、全ての社員をあらゆる事態にきめ細かく対応できる人財へと育成するのは時間も手間もかかります。また、働くスタッフのスキルもそれぞれで、現場管理が得意な人もいれば、コミュニケーションが得意な人、IT機器の扱いに長けている人がいます。こうした対応力の差を埋めるのが今回導入したANDPADのようなシステムだと考えています。
面と向かって話すのが得意ではなかったとしても、必要な機能を使えば一連の作業を滞りなく進めることができます。 ANDPADを活用すればマンパワーに依存しなくても結果を残すことができ、会社の評判も高まります。こうした実績を積み上げ、お客様の満足や感動を創り出す会社であり続けることが目標です。