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日神工業|前年比で残業504時間削減。社員が主役のDX戦略〜前編〜

写真管理の標準化で「見えない残業」を解消。3Dスキャン導入による若手育成の可能性

目次

  1. 創業70年超の老舗。地域インフラを支える「総合力」
  2. 利益還元の文化と「アットホーム」な社風
  3. 「写真管理」の課題がANDPAD導入のきっかけ
  4. ANDPAD 3Dスキャンで拓く、人材育成

栃木県宇都宮市。ここに、創業から半世紀以上にわたり地域のインフラを支え続ける一企業の姿がある。日神工業株式会社だ。空調・衛生設備の設計・施工からメンテナンスまでを一貫して手掛ける同社は、県内でもトップクラスの「IT活用先進企業」として知られている。

しかし、同社が注目される理由は、単なるデジタル化の速さだけではない。「生み出した利益の多くを、社員に還元する仕組みを大切にしている」という驚くべき経営哲学と、ANDPADの導入により、エンジニアリング部32名で前年比「合計504時間」もの残業削減を達成した実績。そこには、テクノロジーと温かい人間関係がうまく融合した、建設DXの理想が垣間見えた。

今回は、DX推進のキーマンであるエンジニアリング部のB.ショーンさん、改革推進に携わる施設営業部の神宮悠輔さん、そして現場一筋24年以上のエンジニアリング部 担当次長の吉澤純一さんの3名に、その取り組みの裏側を聞いた。

神宮 悠輔 氏
日神工業株式会社 施設営業部
大学院修了後、2019年に入社。入社後は施設営業部・エンジニアリング部を経て、現在は社内ITインフラ整備やDX推進を牽引する。3Dスキャン導入など「まずやってみる」精神で、老舗企業の変革と、社員とその家族を大切にする環境づくりに尽力している。
吉澤 純一 氏
日神工業株式会社 エンジニアリング部 担当次長
地元の工業高校を卒業後、高校の先輩が多く在籍する安心感から同社へ。入社以来、エンジニアリング部一筋で24年以上従事。設備機器の点検・修理からキャリアをスタートし、現在は大規模改修工事のプロジェクトマネジメントも手掛けるベテラン。現場の最前線を知り尽くし、同社の技術力を支えている。
B.ショーン 氏
日神工業株式会社 エンジニアリング部 
内装業を経て、知人である神宮さんの紹介で入社。現在はエンジニアリング部で施工管理やメンテナンスを担当。ANDPAD導入時は推進役として社内の全問い合わせ窓口を担当し、丁寧な検証と親しみやすい「人柄」で現場への定着を成功させた。DXを通じ、若手が活躍できる環境づくりと業界のイメージ向上を目指している。

創業70年超の老舗。地域インフラを支える「総合力」

1948年に創業した日神工業は、まもなく80周年を迎える。同社は、日立製作所、日立グローバルライフソリューションズ、日立ビルシステムといった日立グループ各社の特約店として長年協業を続けているが、資本関係はなく、独立した企業として事業を展開。栃木県内の設備工事業界を牽引する存在だ。同社の最大の特徴は、その「総合力」にある。

左より、日神工業株式会社 エンジニアリング部 担当次長 吉澤 純一さん、施設営業部 神宮 悠輔さん、エンジニアリング部 B.ショーンさん


吉澤さん:
 私たちの強みは、営業、設計、施工、そして最後のアフターサービスまでを、すべて自社で完結できる体制にあります。お客様からすれば、窓口が一つで済むという安心感がありますし、万が一トラブルが起きても、社内の各部門が連携してスピーディーに解決できる。これが一番の強みですね。

こう語るのは、入社25年目を迎えるベテラン、エンジニアリング部担当次長の吉澤さんだ。彼が所属するエンジニアリング部には現在41名が所属しており、工事部が納めた現場のメンテナンスや修理、機器の入れ替えなどを担い、お客様と長く深い関係を築く役割を果たしている。

また同社は、宇都宮市をはじめとする複数自治体の指定給水装置工事事業者および排水設備指定工事店として登録されており、水源地管理など、水道インフラの維持・管理を担う事業者でもある。

神宮さん:  一般のご家庭の水漏れ対応を行っているわけではありませんが、市から指定を受け、水源地の管理や水道インフラの維持に関わる業務を担っています。普段は意識されることの少ない仕事ですが、市民の皆さんが蛇口をひねれば安心して水を使える環境を支える、非常に責任の重い役割だと考えています。地域の生活基盤を下支えする仕事として、誇りを持って取り組んでいます。

 

利益還元の文化と「アットホーム」な社風

DXの成果を語る前に欠かせないのが、日神工業のユニークな企業文化だ。取材を通じて見えてきたのは、徹底した「社員ファースト」の姿勢だった。

日神工業には、経営層が公言して憚らない方針がある。それは「社員は唯一無二の財産であり、会社の利益の半分は社員に還元する」というものだ。

神宮さん:  現社長は、常に社員のことを第一に考え、その想いを福利厚生や給与という形で具体的に示しています。社員の誕生日には社長からのメッセージ付きフラワーギフトが自宅に届き、クリスマスにはご家族向けにホールケーキが贈られます。数年に一度の社員旅行も豪華で、前回は北海道と博多から選べる形式でした。さらに、日々の頑張りは年2〜3回の賞与としてしっかり還元されており、栃木県内の同企業と比べても高い給与水準を誇ると自負しています。

福利厚生の一つとして導入された「社長のおごり自販機」。2人で同時に社員証をタッチすると飲み物が無料になる仕組みで、部署や世代を超えたコミュニケーションを生み出す仕掛けとなっている

この温かい社風は、中途入社の社員にとっても大きな魅力となっている。今回のDX推進役であるショーンさんも、その一人だ。

ショーンさん:  私は以前、別の建設関連企業に勤めていました。退職後、知人だった神宮さんに声をかけてもらったのがきっかけです。正直、最初は不安もありましたが、実際に会社の方々と話してみると、気さくな方ばかりで温かさを感じ、「ここで働いてみたい」と素直に思えたのが、入社の決め手でしたね。

吉澤さん:  私は地元の工業高校出身なんですが、高校の先輩方が多く在籍していて、ここなら安心して指導を仰げると思って入社しました。気づけばもう25年。居心地が良いんでしょうね。

神宮さん:  私は大学院で地方税の研究をしていて、建設業は未経験でした。いきなり「戻ってこい」と言われて入社したので、最初は右も左も分かりませんでしたが、周りの方々に支えられてここまで来られました。

三者三様の入社経緯だが、共通しているのは「人」への信頼だ。この強固な信頼関係こそが、後のDX推進における最大の武器となる。

 

「写真管理」の課題がANDPAD導入のきっかけ

日神工業では、2017年頃からITインフラの整備に着手していた。全社員へのスマートフォン配布やGoogle Workspaceの活用など、DXへの土台はすでに築かれていた。しかし、エンジニアリング部には依然として大きな課題が残されていた。それが「写真管理」だ。

ショーンさん:  以前は、現場でスマホやタブレットで大量の写真を撮った後、一度事務所に戻らなければなりませんでした。そこからデータをPCに移し、iPhone特有のHEIC形式からJPG形式へ変換し、Excelのマクロで作った台帳に一枚一枚貼り付けていく……。 この作業が本当に大変で。写真の順番を一つ間違えたら、マクロのエラーで最初からやり直しになることもありました。日中の現場作業で疲れた後、夜遅くまで事務所に残って写真整理をする。これが残業の温床になっていたんです。

この状況を打破するために導入されたのが、ANDPADだった。狙いは単なるツールの置き換えではない。「現場と事務所の分業」だ。

ショーンさん:   エンジニアリング部には3名の事務員さんがいて、バックアップ体制が整っています。ANDPADを使えば、現場で撮った写真がリアルタイムでクラウドに上がりますよね。つまり、我々が現場で作業している間に、事務所にいる事務員さんが写真整理や台帳作成を進められるようになる。この「連携」こそが、導入の最大の目的でした。

導入から、現場への定着期間を経て、その効果は、導入初期と翌年の同期間を比較した際、誰の目にも明らかな数字となって表れた。

ショーンさん:  導入後の習熟期間(2024年1月〜6月)と、活用が定着した翌年(2025年1月〜6月)の同時期を比較すると、エンジニアリング部32名の総残業時間は、前年比で合計504時間も削減されました。一人あたりに換算すると、毎月約2.6時間、半年で15時間以上です。 これは単なる数字以上の意味があります。会社が社員一人ひとりに「15時間分の家族との時間」や「休息の時間」を返還できたということですから。

効果は時間短縮だけではない。

吉澤さん:   現場担当者が事務所での事務作業から解放されたことで、気持ちに余裕が生まれました。その分、お客様への提案資料を丁寧に作ったり、後輩の指導に時間を割いたりと、本来やるべき「付加価値の高い業務」に集中できるようになりました。チーム内の助け合いも以前より活発になり、組織全体のパフォーマンスが上がっていると感じます。

 

ANDPAD 3Dスキャンで拓く、人材育成

写真管理での成功に続き、日神工業はさらなる挑戦に踏み出す。「ANDPAD 3Dスキャン」の導入だ。

ANDPAD ONE 編集部より

スマホひとつで現場を3D化。「ANDPAD 3Dスキャン」
「ANDPAD 3Dスキャン」は、iPhone Pro、iPad Proに付随するLiDAR(ライダー)機能を活用することで、専用の機材を使わずに現場を3Dデータ(点群)として記録できる機能です。 動画を撮影するように現場を歩くだけで、空間をまるごと3Dデータ化。取得した3DデータはANDPAD上で即座に共有され、いつでもどこからでも確認できます。

「ANDPAD 3Dスキャン」の詳細はこちら https://andpad.jp/products/3d_scan

神宮さん:   導入のきっかけは、 正直に言うと、最初は「なんだか使いやすそうだったから」です(笑)。でも、弊社には「まずやってみよう」という精神があります。実際に使ってみると、これが若手育成にものすごく使えることが分かったんです。

 

建設業界では、経験の浅い若手が一人で現場調査に行くと、必要な寸法を測り忘れたり、搬入経路の確認が漏れたりすることが多々ある。

ショーンさん:   そこで3Dスキャンの出番です。若手社員には、とりあえず現場全体を3Dスキャンで撮影してきてもらいます。事務所に戻れば、吉澤さんのようなベテランがその3Dデータを見て、『このドアの開口幅だと機材が入らないから、ここを測って』とか、『配管ルートはこっちだね』と具体的な指示が出せます。 これにより、若手は安心して現場に行けますし、再調査の手間もなくなります。ベテランの「経験」を、3Dデータを通じて若手に補ってあげるイメージですね。

ショーンさん:   現在、18件ほどの現場で活用していますが、お客様への提案時にも効果絶大です。iPadでぐるぐると回る3Dデータをお見せすると、『おっ、すごいね!』と驚かれますし、『この会社はしっかりしている』という信頼感にもつながっています。

日神工業の事例から見えてくるのは、DXの成功には2つの要素が不可欠だということだ。 一つは、社員を何よりも大切にし、その生活を豊かにしようとする「温かい企業文化」。 もう一つは、その想いを実現するために最新のツールを使いこなす「現場の柔軟性」だ。

写真管理の標準化で「504時間」という自由な時間を生み出し、3Dスキャンで「経験の差」を埋める。日神工業のDXは、まさに「人を幸せにするためのテクノロジー活用」を体現している。

しかし、新しいツールの導入には、必ずと言っていいほど現場の戸惑いや反発がつきものだ。 老舗企業である日神工業は、いかにしてその壁を乗り越え、推進体制を構築したのか?

後編では、推進役であるショーンさんの奮闘と、現場を巻き込むための具体的かつ泥臭い「実践ノウハウ」に迫る。

日神工業株式会社
URLhttps://nisshin-kogyo.co.jp/
代表者代表取締役 神宮 厚
創業1948年
本社栃木県宇都宮市東塙田二丁目8番41号
企画: 平賀豊麻
編集・執筆:田中萌菜
編集: 原澤香織、齋藤夏美
デザイン: 横井香南

 

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