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山口県を拠点に、日本庭園をルーツとする造園会社として間もなく創業90年を迎える周南造園株式会社。2004年からはエクステリア事業も展開し、九州・中国地域のエクステリア施工コンクール「エクシスランドデザインコンテスト」で10年連続の受賞を誇る確かな技術を強みにしながら、フリーマーケットの開催やカフェの運営など地域に開いた場づくりにも積極的に取り組んでいる。
そんな同社は、2021年にANDPADを導入し、情報のデジタル化・一元管理に向けた歩みを着々と進めている。そこで、今回は同社の代表取締役 河村 健司さん、ANDPAD推進者である形山 実穂さん、田畑 智章さんの3名にインタビューを実施。前編では、同社の特徴と強み、若い世代が活躍する組織風土について、地域の交流の場づくりの取り組みについて伺った。後編では、ANDPADで情報共有を図ったことによってどのように仕事の質が向上したのか、今後の課題と展望について紹介する。
形山 実穂氏
周南造園株式会社 3級造園技能士
高校で造園コースを専攻。卒業後、2020年同社に入社。現場作業を経験後、積算・見積もり業務に携わる。ANDPAD担当者としてDXを推進。
田畑 智章氏
周南造園株式会社
高校で造園コースを専攻。卒業後、2021年同社に入社。図面を描き上げるCAD担当として活躍。同社が毎月開催する「山の神フリーマーケット」の運営も担当。
工程管理の課題をクリアし、強みを活かすためにANDPADを導入
日本庭園をルーツに持つ同社は、エクステリアにおいても日本庭園を造る時と同じ心持ちでお客様との信頼関係を構築した上で提案ができるのが強みだ。地域の方々との交流の場であるフリーマーケットやカフェを運営し、そこからの引合いも含めて受注を伸ばしてきた。
しかし、繁忙期には受注をしても業務がこなせなくなり、着工日がずれ込むことでお客さまからのクレームに繋がることも。案件数が伸びてくることで、工程管理に関して課題感を持つようになったという。
河村さん: 以前Excelで工程表を作成したこともありましたがうまく運用できず、試行錯誤しているなかでANDPADを見つけました。営業の方から説明を聞き、SaaSなのでソフトを一括購入よりも導入費用が安く抑えられるのが魅力的で、導入しやすかったですね。今までのやり方から変わる部分も大きいので、その変化は怖くもありましたが、変えなければならないタイミングだと思い、ANDPAD導入を決心しました。
運用をスタートさせるにあたり、「現場でスムーズに仕事ができ、みんなが幸せになるためにANDPADの活用をお願いしたい」というメッセージを社内外へ発信して、理解を得られるようアプローチしていきました。
周南造園株式会社 代表取締役 河村 健司氏
ANDPAD活用によって電話や現場訪問回数を削減し、仕事の質が向上
では、ANDPADを導入後、どのように同社の情報共有の仕方が変わり、業務に変化をもたらしたのだろうか。
同社の施工前の業務フローとしては、社長である河村さんがお客様と打ち合わせをおこない、その内容をまとめた指示書を手書きで作成する。その指示書をもとに外注先のCAD担当者や田畑さんが図面を起こし、提出された図面を見ながら形山さんが見積もりを作成するという流れだ。従来は、現場の施工前の写真、現調の写真、図面データ、地図などのやり取りをクラウドストレージサービスで行い、社外のCAD担当者とのやり取りはメッセンジャーアプリを使用していた。
ANDPADによる運用では、ANDPADに資料を格納して外注先のCAD担当者を招待するだけで共有が可能に。成果品もANDPADにアップしてもらえれば受け取ることができ、やり取りの履歴も確認しやすくなったことで電話の回数も大幅に削減した。
河村さん: ANDPADを導入して実感したことの一つが、職人さんに渡す図面の精度が上がったということ。以前は口頭での補足説明をする前提で図面を作成していたので、全体的にラフな図面になっていました。しかしANDPAD上で図面を共有するようになってから、その内容をきちんとしたものにしておけば、電話や現場訪問の回数も減らせるということに気づいたんです。図面をより丁寧に描くようになり、精度が上がってきています。プラン変更の過程で図面と見積もりがずれたりもしますが、そのすり合わせもANDPAD上でおこなうことで正確にできるようになりました。図面の精度を高め、情報をきちんと揃えて伝えれば電話や口頭での伝達といった余計なコミュニケーションを省けるんだ、ということを、コミュニケーションをデジタル化していく過程で認識することができました。
また、以前は現調に行った時の現場状況を写真に撮ったあと、その写真を都度印刷して必要な人に共有していました。ANDPADで現調写真を共有するようになってから、受注前に現調写真をANDPADに格納しておけば、受注後に設計担当や社内外の職人さんなど全ての人がそこから現地の様子を確認することができるので便利ですね。1案件あたりの訪問回数は決めていませんが、以前は平均して6回ほど現場に出向いていました。現地での職人さんとの打ち合わせは、今でも必ずおこなっています。ANDPAD上で資料共有がしっかりできれば、現地でおこなう職人さんとの打ち合わせ時と工事完了時の合わせて2回の現地訪問で済むようになりました。
形山さん: 例えば、平面図だと2次元なのでそこに高低差があるかどうか分かりません。現調写真があると立体的な情報が加わるので、高低差があるから階段をつくる必要があるな、というようにより正確な見積作成ができます。今までは現調写真を持っている人にスマートフォンの画面上で見せてもらって記憶に焼き付けたりしていましたが、ANDPADに現調写真をアップしてもらえるようになってからはいつでも必要なときに気軽に確認ができるので、見積作成業務が効率的になりました。
周南造園株式会社 形山 実穂氏
社内コミュニケーションだけでなく、社外とのコミュニケーションもスムーズに。ANDPADチャット上でやり取りをすることで、職人からの細かい問い合わせにもすぐ対応できるようになった。協力会社同士で直接やり取りをすることもできるようになり、スムーズに業務が進められるようになったという。
河村さん: 当社がお取引をしている問屋さんは1社のみ。その問屋さんが材料を納品してくださるのですが、その納品場所によって職人さんの翌朝の動きが変わるので、材料がどこにあるかがとても重要な情報でした。問屋さんが材料を納品する先は事務所か現場のいずれか。事務所に納品されている場合は、職人さんが作業前に事務所に寄って、材料をピックアップし現場に向かいます。従来は、問屋さんと職人さんのやり取りは当社を介して間接的におこなっていたため、そのやり取りがとても煩雑でした。
今は、問屋さんがどちらに材料を納品したかをチャット上で知らせてくれるので、「どこに納品されているか」という職人さんからの問い合わせが半減しました。仮に確認が入っても、ANDPADを見ればすぐに確認し回答することができます。問屋さんがこのようにしっかりとANDPAD上で情報共有してくださっているのは、「会社として工程管理をスムーズにするためにANDPADを導入する」と目的をしっかりとお伝えし、賛同していただいたから。取引先ではありますが、タッグを組んでいる「仲間」という感覚ですね。
形山さん: 材料が現場にあるか事務所にあるかはケースバイケース。以前は、職人さんから「材料が現場にない」と問い合わせが入ると、事務所に戻り、材料の納品先が記載されているファイルを開いて確認していました。今は、問屋さんがどこに材料を納品したのかという情報がANDPAD上にアップされていて、そこを見ればいいので助かっています。
社員のスキルアップにもANDPADを活用
造園業は高い技術力を要するため、資格取得のハードルが高い。例えば、同社で計5名が取得している「造園施工管理技士1級」の資格を取得するためには、大卒(指定学科)で3年以上、高卒(指定学科)では10年以上かかるのが現状だ。造園業の幅が広がっている一方で、受験資格として求められる工事経験が限られることから、職人がスキルアップするための機会が少なくなっているという。
河村さん: 公共工事などを経験していることが受験資格として求められるのですが、当社がBtoBで請け負う仕事として多いメンテナンス業務は公共工事ではないため、「工事経験があること」に含まれません。最近は公共工事の案件が減っていることもあり、現場経験を積ませたくてもそのための現場もなく、工事経験のある人を資格者にするとなると条件的に厳しい。何をもって技術者とするかは難しくなっていますね。
同社は、国が定める資格だけが「技術者」としての証ではなく、CADなどを使えることも一つの技術であると捉えて、社内でのキャリアステップも加味したスキルアップのための環境づくりをしているという。田畑さんはANDPADを活用するようになってから、CADのスキルアップのための時間を確保できるようになった。
田畑さん: 自分自身のスキルアップのために自宅でCADの練習をしたくても、従来は自宅から会社の共有フォルダにアクセスできないため難しかった。今はANDPADに案件を作成して図面データを保存しておけば、自宅でも作業が可能に。CADの練習や社外のパースコンテストに向けた準備などにも活用しています。
周南造園株式会社 田畑 智章氏
さらなるデジタル活用を加速させ、時代に合わせて変化し続ける造園会社に
ツールを一元化することでスムーズな情報共有を図り、スキルアップにも活用している同社。今後さらなる業務効率化を図っていくための課題について伺った。
河村さん: ANDPADを導入して実現したかった状態を100点としたら、現状は80点。ANDPADを使うようになってから随分と業務改善ができていると実感しています。
形山さん: 今後は、ANDPADの工程表も活用していけたら。現状では、現場の職人さんはANDPADの工程表までなかなか活用しきれておらず、工程についてはホワイトボードとの二重管理をしています。ANDPADで工程表を作成するのと同時に案件情報のマグネットも作成するのですが、結局最新工程の管理はホワイトボードで進めてしまうことが多い。ANDPADの工程表は、後追いで入れているのが現状です。
田畑さん: 案件の情報についてはANDPADを見てくれている人もいますが、工程管理や報告機能については多種多様。職人さんからすると、スマートフォンだと小さな画面のため操作が大変で面倒に感じてしまうこともあるのかもしれません。職人さんからはANDPADの地図機能が便利だという声を頂くので、まずは使ってもらって慣れてもらうことが大切ですかね。
河村さん: 職人さんの稼働管理については、案件が決まったら入れそうな方に電話で依頼をして、なるべく仕事が途切れないように差配しています。職人さんの稼働管理をしっかり行い、着工ずれなども未然に防ぐべきとは思っていますが、現状なかなかできていません。職人さんを困らせるのが一番いけないことなので、後から図面の変更が起こらないようにしたり、常に工程を最新状態に保つなど、職人さんの手戻りが起こらないように配慮していきたいです。
私たち3名はANDPADの全案件に入っているため、案件が多くて通知が埋れてしまうことも。それに対して、職人さんはANDPAD上で案件に招待すると「次の現場はここですか?」と言ってくれたりするので、とても協力的なのも有難いですね。
来年創業90周年を迎える同社。最後に、100周年も見据えた事業の方向性など今後の展望について伺った。
河村さん: 今後も時代に合わせて変化していくことが重要だと考えています。現状、エクステリアの売上としては新築が大半を占めていますが、年々新築の着工棟数は減少しています。それに伴い業務効率化を図るなかでANDPADとの出会いがあり、デジタル化を受け入れる柔軟さが必要だと感じました。今後も最新の情報をキャッチしながら会社としてしなやかに変化していきたいですね。
その上で、今後の展望としては、事業領域と商圏の拡大にもチャレンジしていけたら。最近では、指定管理者制度の活用により公共施設の管理・運営が民間に委託されるところも増えてきています。当社にとっての発注者も行政から民間へと変わるわけですから、それにあわせて工事のあり方の変化にも対応していく必要があります。商圏としては、現状は車で片道1時間程度のエリアに対応していますが、ANDPADを活用することで現場訪問数が減り、職人さんや材料を現地調達できるようになれば、商圏を広げられる可能性もあります。支店を出すのも目標の一つなので、デジタルの可能性に期待を寄せています。
ANDPAD活用によってスムーズな情報共有を図ることで電話や現場訪問回数を削減しただけでなく、社員のスキルアップにも繋がるなど、仕事の質を向上させた同社。今後はエクステリアの工程管理の課題に取り組み、次なるフェーズとして事業領域と商圏の拡大にもチャレンジしようとしている。時代ごとに変化し続ける同社にこれからも注目していきたい。
(左から)株式会社アンドパッド 第二事業本部 第二部 佐土原 絃、田畑さん、河村さん、形山さん、株式会社アンドパッド SaaS戦略本部 カスタマーサクセス部 長田 一輝
初めてお打合せをさせていただいた際も、現状のやり方を変える恐怖がある中で「まずはやってみよう!」とANDPAD導入をご決断いただいたことを覚えております。
また、ANDPAD導入後から現在に至るまで皆様が積極的にご活用いただき、その結果、業務効率化に繋がっていると仰っていただきとても嬉しく存じます。
今後、貴社が導入して実現したかったことを100%実現できるように弊社一丸となって伴走いたします。
この度は、取材にご協力くださりありがとうございました。
導入当初は業界の知見が浅かった私に、現場を回りながら実際の実務をご教示くださり、大変貴重な経験をさせていただきありがとうございました。
周南造園様にとって今回が有意義な時間となればと思いながら取材に臨んでおりました。
エクステリア業界において、他社様からも【作業状況の見える化】【施工管理業務の工数削減】はご要望としても多く頂く内容ですが、見事に実装していただいていると感じております。
ご活用状況につきましても、河村社長の想いが関係様方に浸透しているからこそであり、また、それをしっかりと実行していただいている田畑様・形山様をはじめとした社員の皆様・業者様のおかげです。
今後とも、一つの現場に関わらせていただいてるという気持ちで伴走させていただきます。
改めて、この度は取材にご協力くださりありがとうございました。
URL | https://www.midorino-eki.net |
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代表者 | 代表取締役 河村 健司 |
創業 | 1933年 |
所在地 | 〒744-0042 山口県下松市大字切山字山の神306-4 |