大規模施設の内装工事を責任施工で請け負う「コンストラクション事業」と住宅用建築資材を販売する「ハウジング事業」の2つの事業を展開し、北陸のまちづくり・家づくりを広く支えている株式会社タッセイ。福井県福井市の本社を拠点に、福井県・石川県で信頼と実績を積み重ね、現在は中京・関西エリアにも事業を拡大している。
Vol.1では、同社の事業内容と専門工事職人集団「タッセイ職友会」について、Vol.2では、同社の人材採用戦略と自社職人チーム「TAT(Tassay Artisan Team)」の結成について詳しく紹介した。Vol.3では、建設業の未来のために、同社が取り組んでいるM&Aによる事業承継や新たに始動した「BOOSTRUCTION事業」の詳細について深掘りしていく。
株式会社タッセイ 代表取締役社長
福井県福井市で生まれ育ち、青山学院大学に進学。在学中に演劇と出会い、役者の道へ。芸能プロダクションに所属し、テレビCM・ドラマなどに出演する。2007年、家業である同社を継ぐため福井に戻る。資材の販売営業、営業企画室室長を経て、2016年代表取締役副社長就任。2019年より代表取締役社長を務める。
M&Aによって、後継者不在に悩む専門工事会社を存続させる
人材採用におけるブランディングの強化や自社職人チーム「TAT」での若手職人育成によって、建設業界における担い手不足の解消を目指す同社。そんな同社が建設業の未来のために、もうひとつ注力しているのが専門工事会社とのM&Aだ。
田中さん: 昨今、後継者不在による中小企業の廃業が急増しています。特に建設業においては、後継者不在の企業が59.3%(※)となっており、6割に届く勢いです。技術力を持った工務店や専門工事会社が次々となくなっているのが現状です。
そこで当社では、後継者不在の課題を抱える専門工事会社とのM&Aを積極的に実施しています。父の代から、後継者のいない得意先の建材販売会社の合併に取り組んできましたが、その後もいろいろなお話をいただき、現在までに7社とM&Aを実施しています。当社が事業継続の受け皿となることで、新しいエリアへの進出やこれまでカバーできていなかった工種への対応ができるようになり、大きなシナジー効果が生まれています。
(※)出典:帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査 業種別 後継者不在率推移(2024年11月22日)(https://www.tdb.co.jp/report/economic/succession2024/)


株式会社タッセイ 代表取締役社長 田中 陽介さん
田中さんは、M&Aによってタッセイグループに加わった会社に対して、これまで同社が実践してきた人材採用戦略や教育プログラムを横展開している。その結果、「グループ会社も人材採用・定着に成功している」と話す。
田中さん: 当社は、2020年に株式会社福地(福井県福井市三尾野町)をグループ化しました。福地は、保育施設や介護施設などの木製家具製造・工事全般を手がけている老舗企業で、高品質な家具づくりに定評があり、大手幼児教具メーカーとも取引をしています。
こうした優良企業が廃業してしまうのは非常にもったいないですし、県外の企業に買収されれば、地元の職人たちが福井で働き続けられなくなる可能性があります。そこで、お声がかかったのが当社です。当社としても福地と一緒になることによって家具工事に付加価値を持たせることができますし、双方にメリットがあると判断してM&Aに至りました。

田中さん: 後継者不在の課題を解決するために、福地では外部から社長を起用しました。「タッセイのグループ会社」として人材紹介に募集をかけたところ、数多くの応募が集まり、そのなかから大手都市銀行出身の支社長経験者で、なおかつ中小企業診断士の資格を持つ方を採用し、専務として入社していただきました。福井県には縁もゆかりもなかった方ですが、ご夫婦で福井県に移住されて、現在は社長として活躍していただいています。
福地では、当社が実践してきた採用・人材育成プログラムを取り入れたことで、高卒・短大卒の新入社員を4年間で11人採用できています。また、当社のTATを参考に、福地では「FAT(Fukuchi Artisan Team)」として家具職人のチームを結成しています。FATでは、家具製作に関わる国家検定の取得や技能五輪への出場を促して、職人の成長をサポートしています。そのほかにも、社員の処遇改善に取り組んだり、「ふくい社員ファースト企業」宣言をしたり、現在の社長がご自身のカラーを活かしたアプローチを行うことで、当社との間に好循環を生んでくれています。

田中さん: もう1社は、2023年にグループ化した新明防水工業株式会社(福井県福井市羽水)です。新明防水工業は、福井県を中心に新築・改修の防水工事に総合的に対応している企業で経営基盤も安定しているのですが、福地と同様に後継者不在に悩んでいました。防水職人として働いている30代の親族はいるのですが、経営を任せるには時期尚早とのことで、まずタッセイホールディングスで資金計画や経理を請け負いつつ、経営をサポートしながら間をつなぐことになったのです。
新明防水工業においても、採用パンフレットやHPのリニューアルを実施し、人材採用に注力しました。結果として、中途採用1名、大卒新卒者1名の入社が決まっています。今後も若手人材を呼び込むために、新社屋への建て替えを決めたりと、未来への投資をはじめています。
自社で培った知見を全国へと広め、建設業の未来を切り拓いていきたい
M&Aによってグループ会社の事業承継を後押しするだけではなく、自社になかった家具製作・防水工事といった新しい工種を取り入れ、総合力を高めている同社。近畿地方への進出も、内装工事会社・インテリアクボタ株式会社(滋賀県高島市)のM&Aによるものだ。また、左官業を営む株式会社夏見(富山県高岡市)のグループ化によって、北陸の左官業とのつながりも生まれている。
そして今後、田中さんは事業承継や後継者育成に悩む建設業の企業のために、新たな事業をスタートする構想を描いている。それが「BOOSTRUCTION事業」だ。
田中さん: 北陸に限らず、建設業界には担い手不足や後継者不在の課題を抱える優良企業が多くあると思います。今後は、そういった企業に対して、当社が培ってきた「企業ブランディング・採用・教育・定着・次世代育成」のノウハウを提供するために、現在プログラムのパッケージ化を進めています。また、「技術に強みはあるが経営には明るくない」といった専門工事会社を支えられるようなプログラムも提供していきたいと考えています。

田中さんは、「BOOSTRUCTION事業」の名称に、「建設業(CONSTRUCTION)を盛り上げる(BOOST)」との想いを込めたという。
田中さん: 自社での若手職人育成、専門工事会社のM&Aも継続していきますが、今後はM&Aではない形でのサポートも視野に入れていきたいと考えています。例えば、当社が人材採用・育成のコンサルティングに入ったりと、私たちの知見をさまざまな形で全国の専門工事会社へ広げていきたいです。
現在グループ7社において91名の若手を採用し、育成しています。もしこの先の10年で100社とパートナーシップを組めれば、2,000名の若者を建設業界に送り出せる可能性があるということです。これが実現できたら、建設業界に大きなインパクトを与えられると思います。この「BOOSTRUCTION事業」を当社の第3の柱にすることが、今の私の目標です。

田中さん: 担い手不足は年々加速しており、私はここからの5年間が建設業の未来を左右する勝負の期間だと捉えています。私たちは「職人や技術を未来に残したい」と前向きに考えている企業にだけグループ入りをしてもらっています。今後も同じ想いを持つみなさんと一緒に、建設業界に変化の波を起こしていきたいです。
「当社の経営陣は、地域や建設業界にどれだけ貢献できるかを常に考え続けて事業に取り組んできました。そのDNAが現在の社長である田中にも引き継がれていると感じています」――そう語ってくださったのは、同社の営業企画室 室長 松山さんだ。
長年培ってきた信頼と実績、そして建設に対する熱い想いを礎に、同社は「『建てる』を応援する会社。」であるべく、ユニークな取り組みにチャレンジし続けている。建設業界の現状をまっすぐ見据え、豊かなアイデアと思い切った行動力で未来を切り拓いていく同社の活動に、引き続き注目していきたい。
| URL | https://www.tassay.co.jp/ | |
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| 代表者 | 代表取締役社長 田中 陽介 | |
| 創業 | 1949年 | |
| 本社 |
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