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関東住宅サービス|年間2万件の工事を動かす 調整役が支える防蟻工事~前編~

緻密な情報管理で 工程遅延を防止

目次

  1. 木造住宅の維持に欠かせない防蟻工事
  2. 多様な顧客の点検・工事を手掛ける
  3. データ管理のプロが支える年間2万件の受注業務

ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーを称賛させていただくANDPAD AWARDのユーザー部門。これまで紙でのやり取りが主流だった受発注業務を電子化し、発注書の送付や請負のやり取り、工事完了後の請求書の受け渡しなどをシステム上で完結することができるのが「ANDPAD受発注」だ。

2024年の1年間、日々「ANDPAD受発注」を通じて請負側の立場で業務を行い、最もANDPAD受発注を活用したユーザーとして、ANDPAD AWARD 2025 ユーザー部門「ベスト受発注ユーザー賞 -請負-」3位を受賞した、関東住宅サービス株式会社 管理課 大河原侯夫さんにお話を伺った。

同社は、設立から58年目を迎える老舗企業として、関東一円でシロアリ防除工事をはじめとする住宅メンテナンスやリフォーム工事を手がけ、年間2万件を超える施工実績を誇る。点検で見つかった不具合も、そのままメンテナンスまで同社に依頼できるワンストップ体制が強みだ。

元プログラマーとして物流システムのデータ管理に携わっていた大河原さんは、未経験の建設業界に転職後、膨大な数の点検・工事情報を管理する管理課の「縁の下の力持ち」として、業務効率化に意欲的に取り組んでいる。

本記事では、煩雑だった情報管理をANDPADなどのデジタルツール活用により整理し、取引先との連携を強化した同社の取り組みをご紹介する。特に、差し迫った点検・工事の発注にも迅速に対応し、遅延を防ぐ大河原さんの奮闘は、受発注業務のデジタル化や取引先との連携を改善したいと考える方々の参考になるだろう。

木造住宅の維持に欠かせない防蟻工事

──この度はANDPAD AWARD 2025 ユーザー部門「ベスト受発注ユーザー賞 -請負-」3位の受賞、おめでとうございます! 今回の取材には、受賞された大河原さんと、社長の片野さんにもご同席いただいております。まずは貴社の事業内容について教えていただけますか?

同社代表取締役社長 片野伸之介さんに同席いただいた

片野さん: 当社は関東一円でシロアリ防除工事を行う会社です。シロアリ防除工事は当社の売上の8割強を占め、残りの1〜2割は防水や断熱、外壁・屋根塗装のリフォーム工事と、シロアリ以外の害虫・害獣防除です。従業員は社員とパートを合わせて現在85名おります。そのうち営業と施工がそれぞれ30名ほど、残りの従業員が事務部門を担当しています。関東の防蟻工事会社のなかでは大きな規模でして、おかげ様で設立から今年で58年目を迎えました。

新築住宅の年間着工数は減少傾向にありますが、既存住宅の長寿命化という観点から防蟻の重要性は増しています。私たちはこれまで、シロアリ防除を通じて住まいの健康を守ってきました。今後は、そこで培ったノウハウを活かし、高性能な吹付け断熱や外壁塗装の分野も伸ばしたいと考えています。

──片野さんが事業を継承された時期と社長に就任された経緯を教えていただけますか?

片野さん: 当社は私の父が創業し、父の弟、つまり私にとっての叔父と共に事業を営んでいました。埼玉県の本社のほかに群馬県の高崎市に大きな支社があり、叔父はその群馬支社を統括していました。関東圏で支店を少しずつ増やしていたところ、私が23歳のときに父が他界し、叔父が社長となりました。そして2022年に私が事業を継承しました。

──創業から58年、地域に根差した事業展開をされてきたのですね。事業の方向性も時代のニーズに合わせて変化させているところが素晴らしいと感じました。

多様な顧客の点検・工事を手掛ける

──次に大河原さんにお仕事の内容を詳しく教えていただきたいと思います。防蟻工事はハウスメーカーや工務店からのご依頼が多いのでしょうか?

大河原さん: はい。その他、ハウスメーカー様や工務店さんから構造材の注文を受けた木材会社さんからの発注もあります。メンテナンスでは、ハウスメーカー様からの発注が多く、一般のお客様からのご依頼もあります。

一般のお客様からは、実際にシロアリが発生したときや、新築時に行った防蟻工事の5年保証が切れたタイミングで、ご連絡をいただきます。しろあり対策協会という、木造建築物のシロアリ被害と腐朽を防止するために薬剤や工法の登録などを進める法人があるのですが、しろあり対策協会のホームページに掲載されている防蟻工事会社の中から近場の会社を選んで当社に連絡してくださるケースもあります。

片野さん: 現在、お取引している企業は500社、個人住宅は年間2,000棟ほどで、工事件数にすると年間2万件にのぼります。

──企業様と一般のお客様両方から多くの工事の依頼を受けているのですね。防蟻工事は具体的にどのように行われるのでしょうか?

大河原さん: ハネアリは4月から6月にかけて発生するので、その時期は点検・防蟻工事の依頼や事務処理が大幅に増えますね。新築の場合、木造住宅の長寿命を重視する住宅会社さんでは、3回工程のシロアリ防除が実施されます。1回目は基礎を打つ前の土壌処理、2回目は土台の処理、3回目は1階柱の処理です。作業時間は1回あたり30分程度です。既存住宅の場合の作業時間は、被害状況や建物の広さ、工法によって異なります。

データ管理のプロが支える年間2万件の受注業務

──大河原さんが貴社に入社されたきっかけと、現在の業務について教えてください。

大河原さん: 以前は物流システムのデータ管理の仕事に就いていたのですが、その経験をもっと生かしたいと思い、10年前に転職してきました。現在は管理課に所属し、本社・支社・支店に来るすべてのお問い合わせを集約し、予定管理を行っています。ハウスメーカー様、工務店さん、木材会社さん、一般のお客様など、多方面からお問い合わせが来ますので、それぞれの工事・点検のご要望を聞き取り、営業担当に引き継ぎます。それが年間2万件になりますから、工程をずらさないように調整することが業務の肝です。膨大な情報をいかに効率的に整理するかが大事ですね。

特に朝と夕方は電話での問い合わせが集中し、同時に、インターネットからの問い合わせにも対応するという。

──これだけの件数をこなすのは相当な労力だと思います。日々の管理業務において工夫されていることはありますか?

大河原さん: 膨大な点検・工事の予定を管理しなければならないので、Googleスプレッドシートで営業予定表と施工予定表を作成し、営業担当と施工担当がリアルタイムで情報共有できるようにしています。営業中に受注できそうになったときなど、施工予定表を見て、いつ工事可能かその場ですぐに確認できます。

これまでも、工事完了報告書に日付を入力すると点検日などが自動入力されるようにするなど、お取引先様の支店別営業ご担当者様ごとの契約実績を集計・可視化したりするようなフォーマットをつくってきました。業務改善プロジェクトと言えるほどではない、ちょっとした業務改善ですが、でもそういうことをやる人が建設業界には少ないので、やる意義があるのではないかと思います。

──大河原さんの業務改善について、片野さんはどのように感じられていますか?

片野さん: 支店別営業ご担当者様ごとの契約実績データは会社としてすごく有益なものでした。あるお取引先様は、東京だけでも複数の支店があり、それぞれに営業ご担当者様も複数います。いろいろな営業ご担当者様から点検依頼が来て、そこから工事成約につながるかどうかが重要になりますが、以前はこの支店がこのくらいの成約率ということしか把握できていませんでした。それが、この営業ご担当者様は何月に何件成約した、同じ支店内でもあの営業ご担当者様は受注率高いけど、この営業ご担当者様は低い、などと現状が具体的な数値で把握できるようになり、お取引先様と共有して改善を図れるようになりました。

──大河原さんが建設業界は初めてだったにもかかわらず、前職でのご経験を活かしてこれだけの改善を進めていらっしゃるのは本当に素晴らしいですね!

関東住宅サービス株式会社本社

関東トップシェアを誇る防蟻工事会社の膨大な予定管理は、非常に複雑なものだったが、管理課では大河原さんが作成した情報共有ツールやANDPADを活用してきめ細やかに対応しており、現場を支えるまさに縁の下の力持ちだ。後編では、ANDPAD受発注を活用した受注業務の具体的な流れと、お取引先様との連携改善を深掘りする。さらに、現場における防蟻工事会社の立ち位置についてもリアルなお話を伺った。

関東住宅サービス株式会社
URLhttps://www.kanto-jyuutakuservice.com/
代表者代表取締役 片野 伸之介
設立1967年
本社埼玉県比企郡川島町長楽613
企画・取材: 平賀豊麻
取材・編集: 齋藤夏美
編集: 原澤香織
執筆: 後藤利英子
デザイン: 森山人美、岩佐謙太朗
お客様担当:水町のぞみ
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