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タッセイ|高い定着率を実現! 旧態依然の教え方から脱却した育成の仕組み〜Vol.2〜

建設業界のイメージを刷新する「かっこいい」自社職人チームを結成

目次

  1. 建設業のイメージを変えるために、ブランディングを強化
  2. 自社職人集団「TAT」を結成、部活のようなチームビルディングで定着率を向上
  3. 職人育成のための教育施設「TATトレーニングセンター」を開校

大規模施設の内装工事を責任施工で請け負う「コンストラクション事業」と住宅用建築資材を販売する「ハウジング事業」の2つの事業を展開し、北陸のまちづくり・家づくりを広く支えている株式会社タッセイ。福井県福井市の本社を拠点に、福井県・石川県で信頼と実績を積み重ね、現在は富山や京滋エリアにも事業を拡大している。

Vol.1では、同社の事業内容と60年以上続く専門工事職人集団「タッセイ職友会」について紹介した。Vol.2では、深刻な担い手不足が続く建設業界において、同社が新たに取り組んだ人材採用戦略と自社職人チーム「TAT(Tassay Artisan Team)」の結成について詳しく紹介していく。

田中 陽介氏
株式会社タッセイ 代表取締役社長
福井県福井市で生まれ育ち、青山学院大学に進学。在学中に演劇と出会い、役者の道へ。芸能プロダクションに所属し、テレビCM・ドラマなどに出演する。2007年、家業である同社を継ぐため福井に戻る。資材の販売営業、営業企画室室長を経て、2016年代表取締役副社長就任。2019年より代表取締役社長を務める。
 

建設業のイメージを変えるために、ブランディングを強化

「『建てる』を応援する会社。」をスローガンに掲げる同社。このスローガンには、建築資材の流通を担う商社として、また、内装・外装工事を手がける工事会社として、「建設に関わる人材と企業を支えていかなければならない」という強い想いが込められている。

田中さん: 建設業界の就業者は年々減り続けており、担い手不足は深刻化しています。また、現在の就業者の60%以上が50代と高齢化も進んでおり、ベテラン層が抜けた後にはさらに人手が不足することが予想されています。この現状を何とか変えていかなければならないと考え、当社では若手人材の採用・育成・定着に向けた取り組みを進めています。

株式会社タッセイ 代表取締役社長 田中 陽介さん

では、田中さんは建設業における職人の減少・若者離れに対して、具体的にどのような取り組みを進めているのだろうか。

田中さん: まずは、学生さんやその保護者、学校の先生が抱いている建設業界のイメージを変えるために、「いかにわかりやすく建設業の魅力を伝えるか」に注力しました。私は学生時代から俳優業をしていて、当社に入社した時点では建築の知識はゼロでした。専門用語が一切わからなかった私が建設業の仕事内容を噛み砕いてプレゼンをすれば、多くの人に魅力が伝えられるのではないかと考えたのです。同時に、地元のデザイン事務所や広告代理店とタッグを組んで、若者の目に留まるようなパンフレットやポスター、HPなど、ツールもたくさん作成していきました。

同社の会社紹介パンフレットの一部。イラストを用いて親しみやすく、わかりやすい内容で制作されている。

田中さん: また、当社の取り組みを広く知ってもらえるように、地域のテレビ局や新聞社への働きかけにも力を入れました。徐々にニュースや紙面で取り上げていただけるようになり、認知度や信頼度が一層向上したと感じています。


2021年には、
建設業で働く若手職人をモチーフにした映画「くもりのち晴れ」を製作し、福井市と金沢市の映画館で劇場公開しました。今は、各種映像配信サービスで配信をしています。60分ほどの映画なので、会社見学にお越しいただいた学生さんや保護者の方にご覧いただいて、建設業で働く大変さ・おもしろさ、未来への希望を感じ取っていただいています。

映画『くもりのち晴れ』の予告編のワンシーン(https://kumohare.wixsite.com/index/watch-now

 

自社職人集団「TAT」を結成、部活のようなチームビルディングで定着率を向上

元・俳優のキャリアを存分に活かした表現力・プレゼン力で、学生や保護者、学校関係者、メディア関係者に建設業の魅力を届けている田中さん。この地道な採用広報活動が実を結び、同社は毎年コンスタントに新卒社員の採用ができているという。

その一方で、田中さんは専門工事の職人集団「タッセイ職友会」の人員減少に危機感を抱き、自社での職人育成もスタートしている。

田中さん: タッセイ職友会にはピーク時には250人ほど在籍していましたが、今は約150人ほどに減少しています。また、職人の高齢化も進んでおり、10年後には現在のメンバーが半減してしまう可能性があります。そこで、若手職人の確保に向け、当社が正社員として職人を雇用し、育てていく取り組みをはじめました。それが自社職人チーム「TAT(Tassay Artisan Team)」です。TATは、タッセイ職友会と連携して、建築物の内装・外装工事を手がけます。TATの職人がカバーする範囲は、タッセイ職友会と同様に専門工事ごとに細かく分かれています。

田中さん: 若い人に「職人」という仕事に興味を持ってもらうため、名称にはこだわりました。名前から「かっこいい」と思ってもらえるように、警察の特殊部隊「SAT」をヒントにして、チーム名を「TAT」と名付けました。ヘルメットやユニフォームにもこだわっています。

現在は、当社のグループ会社である株式会社福地でも、社員職人のチーム「FAT(Fukuchi Artisan Team)」を結成しているのですが、FATでは資格を取得した人だけがユニフォームにつけられる特別なワッペンを用意しています。「ワッペンのついたユニフォームを早く着たい」と社員が憧れるようになり、意欲的に資格試験に挑戦してくれるようになっています。

同社の自社職人チームTATでは、若手職人の人材育成においても業界の慣習を変える取り組みを実践。「見て覚えろ」といった旧態依然の教え方から脱却し、若手の成長を促している

田中さん: TATでは、タッセイ職友会のメンバーとして活躍してきた一人親方を正社員として採用し、教育担当を任せています。現場の第一線で経験を積んできた親方から熟練の技術を継承し、建設業で働くやりがいを直接伝えてもらうことを目的とした取り組みです。

ただ、祖父ほど年の離れた親方に弟子入りするようなやり方では若手は定着しません。ですから当社では、同じ工種に同期2人以上を必ずペアにして配属しています。また、2年目、3年目の先輩たちも必ずいるようにチームを組み、高校の部活動のような雰囲気をつくり出しています。同期や先輩と悩みや喜びを共有する。ときには「あいつには負けたくない」とライバル心を燃やす。そんなお互いに切磋琢磨できるチームビルディングが若手の成長や定着に効果を発揮していると思います。

さらに、同社はTATに興味を持った学生に向けて、入社前からキャリアプランを提示している。修業期間の先にある将来像を見せることが若手のモチベーションアップにつながり、成長を促しているという。

田中さん: 教育担当について現場で経験を積みながら、5〜10年かけて「1・2級内装仕上施工技能士」「登録内装仕上工事基幹技能者」といった資格を取得していくのが第一段階の目標です。

一人前になってからは、内装職人として技能を究める道、職人をまとめる職長への道、他の工種も対応できる多能工を目指す道、タッセイの営業職として現場経験を活かすジョブチェンジの道、独立して一国一城の主になる道……と、自分に合ったキャリアを選べるようにしています。半年に一度のペースで、社員一人ひとりと1on1ミーティングを実施し、将来どんな職人になりたいかを聞いて、バックアップしています。

では、実際にTATの一員となった若手職人の定着率はどうなのだろうか。田中さんは、「入社3年以内の社員の離職率は11.8%。約9割の社員が定着してくれています」と誇らしげに話す。建設業全体で、新規高卒就職者の3年以内離職率が43.2%(※)であることからも、同社の定着率の高さが伺える。

(※)令和3年3月新規高卒就職者の就職後3年以内離職率の場合
参考:厚生労働省「建設労働をめぐる情勢について 新規学卒就職者の学歴別・産業別3年目離職状況」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001592320.pdf

では、これほどの高い定着率のなか退職を決断するメンバーは、どういった理由を抱えているのだろうか。同社の取締役 コンストラクション営業部 統括であり、TATの初代隊長を務めた渡邉 紀彦さんは、次のように話す。

渡邉さん: TATのメンバーの退職理由としては、「技能検定に合格できず後輩に追い抜かれ、自信が持てなくなった」「建築業ではない他の業種も見てみたくなった」という人もいれば、家庭の事情で退職せざるを得なかった人もいます。ただ、「仕事が好きになれない」「体力的にきつい」「人間関係が悪い」といった理由で辞める人はほぼいません。

株式会社タッセイ 取締役 コンストラクション営業部 統括 渡邉紀彦さん(写真左)。渡邉さんはTATの初代隊長を務め、若手人材の採用も担当してきた。

 

職人育成のための教育施設「TATトレーニングセンター」を開校

建設業で活躍する若手職人を育成するために、さまざまな取り組みを続ける同社。その一環として、同社は福井県永平寺町に教育施設「TATトレーニングセンター」を開校した。トレーニングセンターを開設した背景には、「TATの若手人材が増え、教育担当の手が回らなくなっていたから」というのも理由の一つだと田中さんは明かす。

田中さん: 2025年4月、福井県永平寺町の元繊維工場を改装してTATトレーニングセンターを開校しました。TATに所属する新入社員は、トレーニングセンターで入社後の約4カ月間、内装工事や外装工事などの基礎を学んでから現場に出ることになります。

TATの社員が増え、教育担当である親方の手が回らなくなったのは事実ですが、研修で基礎を一通り学んでから現場に出たほうが若手の成長スピードが速まると判断したことも開校理由のひとつです。現場でのOJTと違って、失敗を気にせずくり返し反復しながら施工技術が学べますし、現場では任せづらい複雑な作業にも挑戦できるのはメリットです。

入社前の会社見学でトレーニングセンターを見てもらえれば、「環境が整った研修施設で学べる」「同世代の若手が楽しそうに技術を学んでいる」といった様子が伝わります。入社前にキャリアプランや教育環境を知っていただくことは、学生や親御さんの安心材料になると考えています。

福井県永平寺町に誕生したTATトレーニングセンター。鋼製下地の組み立てや床の仕上げなど、さまざまな内装工事の作業を実践できるスペースを設置している。

では、実際にTATトレーニングセンターでは、どのように研修を実施しているのだろうか。
TATトレーニングセンター校長を務める牧野さんにお話を伺った。

牧野さん: 新入社員研修は4カ月間でスケジュールを組み、事前に提示しています。学校の1時間目〜5時間目のように時間割表も作成しています。カリキュラムの内容は渡邉さんと相談しながら随時見直しをしています。また、定期的に社内検定を行い、個々の習熟度も確認しています。

株式会社タッセイ コンストラクション営業部 課長 牧野 広明さん。現在は、TATトレーニングセンター校長を兼務する。

渡邉さん: 研修用の資材は、練習用に購入する場合もありますが、各現場で余った資材も活用しています。特にLGS(軽量鉄骨)は高価なので、一度組み立て作業をしたあとにバラして再利用しています。

 

開校1年目となる2025年、TATトレーニングセンターでは、春に高卒で入社した14名と、2年前に入社した社員1名、合計15名が研修を受けたという。

渡邉さん: 2年前に入社した社員が、内装工事から外装工事へジョブチェンジしたいとのことで、新入社員と同時期に研修を受けてもらっています。ジョブチェンジの理由は、「仲の良い先輩が外装工事担当で一緒に働きたいから」というもので正直悩みましたが、せっかく育ってきた人材ですし、モチベーションを落とさずに仕事をしてもらいたいので、希望を受け入れて学び直しをしてもらいました。

同社は、トレーニングセンターでの研修期間中にも賞与を支給したり、借上げ社宅を用意したりと、安心して働ける体制をしっかりと整えている。

牧野さん: 県外の支店から来た社員は、会社が借り上げた近隣のアパートからトレーニングセンターに通います。同じ境遇の社員が集まっているので、自然と「一緒に頑張ろう」といった雰囲気が生まれ、まるで部活の合宿所のようになっています。

若手職人にアドバイスをする牧野さん。研修を行わない9月以降の期間は、トレーニングセンターを技能試験の会場として使用したり、複数の工事技術を身につける多能工トレーニングの場として活用したりしている。

また、「女性の職人が増えはじめているのも、大きな変化のひとつ」と田中さんは話す。

田中さん: 2023年にクロス職人として女性が1名入社し、2024年には2名の女性が入社しました。60名中女性は3名とまだ少人数ではありますが、先日開催した会社説明会にも女性が数名参加されていました。女性の先輩たちがトレーニングセンターでいきいきと学ぶ様子を見てもらえたら、女性職人もさらに増えていくのではないかと期待しています。

 

建設業に未経験から飛び込んだ経験と元・俳優としての表現力を活かし、建設業の魅力をわかりやすく発信する活動を続けている田中さん。採用ツールの改善・地域メディアへの露出など、ブランディングの観点から担い手不足の課題解決を目指しながらも、「人」を育てていく仕組みづくりにも積極的に取り組んでいる。特に、TATトレーニングセンターの開校は、同社の人材育成にかける本気度が伝わってくる取り組みと言えるだろう。

Vol.3では、田中さんがもうひとつの課題と考えている建設業、特に技能者を抱える専門工事事業者の「後継者不在」についてどのようなアプローチをしているのかを伺っていく。また、同社の取り組みを建設業全体へと拡大していく新規事業についても深掘りする。

株式会社タッセイ
URLhttps://www.tassay.co.jp/
代表者代表取締役社長 田中 陽介
創業1949年
本社
〒918-8218 福井県福井市河増町30-20
企画・編集:平賀豊麻
執筆・編集:原澤香織、金子結乃
執筆:保科美里
デザイン:森山人美、岩佐謙太朗
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